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世界方々見据える目/市場実態PickUp/グローバル雑学王−102

米SIAの2010年中期予測が発表されたばかりであるが、引き続いて2014年までに米国からの半導体輸出を倍増するという、元気のよい意欲的なSIAから米国商務省宛てのレポートが公表されている。中国では、非常に活況の貿易輸出に対し今後に向けて内容の質の向上を図らなければ長続きしない、という問題提起がなされている。世界の動きを見つめて、半導体はじめ我が国の見遣る方如何を改めて確認する必要があると思う。

≪世界方々見据える目≫

米SIAからのレポートは、以下のように説明されている。

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○SIAが、2014年までに半導体輸出を倍増する計画を披露…6月17日付けSIAプレスリリース
  
Semiconductor Industry Association(SIA)が、2014年までに半導体輸出を倍増するという目標に適合するのに必要なアクションの大要を述べるレポートを米国商務省に提出した。

「半導体業界は、Obama大統領が一般教書演説で述べた向こう5年で米国の輸出を倍増するという目標を強く支持している。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「過去5年にわたり、半導体は米国のNo.1輸出品であり、年平均の国際販売高が$48 billionである。」

SIAのレポートは、本社が米国にある会社による海外市場シェア増および米国での販売活動増が合わさって市場が伸びて、2014年に半導体輸出が$76 billionに倍増するとモデル化している。

「単に我々の現在の市場シェアを維持するだけでも、2014年には米国半導体輸出が$56 billionに牽引されるグローバル半導体市場の伸びの見通しである。」とScalise氏は言う。「輸出総計を倍増するという目標を達成するためには、我々の市場シェアを伸ばし、米国における活動を高めなければならない。輸出倍増には、米国に拠点を置く会社の競争力を高めること、そしてアメリカにおける研究および製造への投資を奨励する政策を採ることが必要である。商務省に提出したドキュメントは、このような目標に適合する推奨政策提言を述べている。」とScalise氏は締め括った。

SIAの推奨政策提言は以下の通り:

−2016年までに倍になる道筋で、国立研究所および米国の大学での基礎研究に出資していく

−米国でのR&Dおよび製造拠点への投資を維持し、引きつける税制を制定する

−米国輸出管理を改革し、licensingプロセスを合理化する

−エネルギー効率および再生エネルギー源の開発を助長する奨励策を施す

−コストを増し、柔軟性を抑え、米国の会社の競争力を減じるような気候変動政策は避ける

−米国の大学での研究プログラムを拡大する教育改革および海外の学生が米国の大学の修士やPhD課程を卒業してグリーンカードを獲得し易くする移民改革により、米国の労働力を高める
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この上記6項目の提言に対して、それよりもっと優先すべきものがあるという意見が、業界アナリストで知られるMalcolm Penn氏(Chairman & CEO、Future Horizons[英国])から次の要旨で寄せられている(6月18日付けEE Times)。

Point 0: 顧客が支払ってもよいとする価格で市場が買いたい製品を作る

Point 7: ウェーハfab再開;米国メーカーが輸出を倍増すれば、輸入も倍になり、業界に対するTSMCの束縛と言えるものがさらに強まる

Point 8 ... points 2-6は心配せずpoints 0 および 7に注力する

足元のもっと現実的に輸出販売高を増やす策でなければ、実効、実行が伴わない、という見方かと思う。

一方、新興経済圏の代表、中国では、この5月の貿易輸出統計の発表とともに、産官学の関係識者の今後に対しての問題提起が次のように投げかけられている。

◇中国の対外貿易(6月18日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])   
→中国政府が発表した統計によると、5月の中国の輸出は5割近く大幅に増加し、予想をはるかに上回った。だが経済アナリストは、これは昨年同期の基数が比較的低かったためで、中国の対外貿易は依然として根深い問題を抱えており、今後の見通しを楽観視し過ぎないほうがいいと注意する。
中国外貨投資研究院の譚雅玲院長は、原材料や労働コストの上昇、国際市場の競争激化など新たな背景のもと、伝統的な労働集約型製品は薄利多売で満足するのではなく、輸出効果の問題を重視せざるを得なくなっているという。
中国人民大学中国経済改革発展研究院の張傑教授もまた、輸出の多くを占める機械・電気設備を例にとると、大部分の中国企業はグローバル企業に核心技術、世界的な卸売業者に販路を握られ、持続的に利益を上げるのが難しい情況だと指摘する。
商務部の鐘山副部長は今年4月、長年、中国の対外貿易は数を増やすことばかり考え、規模拡大や品質向上が十分になされなかった。企業の加工・製造能力は高いが、自主革新や市場マーケティング能力は低く、輸出製品の品質や等級、付加価値に関して、国際ルールの制定に参加した際の発言権や重要製品貿易の価格交渉権が貿易強国ほどない。
「中国オリジナルの輸出製品の国際競争力を今後強めていくことが期待される。本当の意味で国際競争力のある国内企業がまだ少ない」とアナリストは指摘する。

新興圏のもう一つ、インドでは、同国内半導体市場データが発表されており、グローバル経済危機に見舞われた昨年も15%以上伸びているとのこと。
2011年に向けて十分深い二桁の伸びを見込んでいるが、この勢いがなければ上記のSIAレポートの内容も付いてこないという感じ方がある。

◇Indian semi market grew 15% in 2009, says study(6月18日付け EE Times)
→India Semiconductor Association(ISA)発。インド国内エレクトロニクス市場は2009年$5.4B相当、22%のcompounded annual growth rate(CAGR)で2011年には$8B以上に伸びる見込みの旨。
2009年のインド半導体市場は、グローバル市場が11%減少したのに対し、15%以上伸びている旨。

上記のMalcolm Penn氏コメントに挙げられたTSMCからは、本年の市場予測について3度目の上方修正がMorris Chang氏から出されている。

◇TSMC`s Chang Again Raises Forecast of Semiconductor Market Growth for 2010 (6月18日付け Taiwan Economic News)
→TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏が、2010年グローバル半導体市場予測について最近3度目の上方修正、以前の9%および22%から今回は30%の伸びの旨。


≪市場実態PickUp≫

中国で人気の低コスト模造開発製品、そしてFoxconn中国生産の北部、西部にシフトする動きである。

【中国市場から】

◇Inside a Shan Zhai GPS unit and the back door to market leadership(6月14日付け EE Times)
→MediaTek製品を用いて、Shan Zhai OEMsが、低コストで革新的な製品を顧客に提供、中国デバイス市場を獲得している旨。
(注)Shan Zhai Ji[山寨機]:・・・中国の中小規模事業者が設計・開発した,人気ブランドの最新商品を模した外観・機能を持つ製品。携帯電話機,ノート・パソコンなどさまざまな領域で製品が市場に出回っており,そのコスト・パフォーマンスの高さから人気化。部品需要に影響を及ぼすほどの市場規模に成長している。(日経Tech-onより)

◇Foxconn moving from southern China to northern and western regions, says report (6月14日付け DIGITIMES)
→中国語China Times発。Foxconn Groupが、6月始めに中国南部、深セン(Shenzhen)の2つの生産拠点での従業員賃上げを発表してから、生産ラインの大きな部分を深センから北部の天津(Tianjin)および西部の武漢(Wuhan)および重慶(Chongqing)の生産拠点に移している旨。

米SIAのpresident、George Scalise氏の後任の指名が行われている。Brian Toohey氏(42才)で、米国商務省の国際通商諮問委員会のメンバーを歴任している点が特に注目される。

【SIAのpresident指名】

◇Brian Toohey Named President of the Semiconductor Industry Association(6月15日付け SIA Press Release)
→SIAが本日、昨年に2010年での退任を発表しているpresident、George Scalise氏の後任に、Brian Toohey氏(42才)の指名を発表の旨。同氏は、最近ではPharmaceutical Research and Manufacturers of America(PhRMA)のsenior vice presidentを務め、SIAには7月19日に正式に参画する旨。

◇SIA names FIRST advisor as incoming president-Brian Toohey, an advisor to the FIRST organization and a member of the US Department of Commerce's International Trade Advisory Committee, will take over in July for George Scalise, who announced his plans last year to retire.(6月16日付け Electronics Design, Strategy, News)
→FIRST=For Inspiration and Recognition of Science and Technology:米国の学校における科学技術教育を奨励するよう動くnot-for-profit団体。

熱戦の続くサッカーのW杯南アフリカ大会で、テレビ観戦を楽しみながら気になるのはブブゼラの音である。ここはグローバルに通じる人情ということか、放送での対策例がいくつか見られる。

【vuvuzela対策】

◇Vuvuzela: the noisiest World Cup prompts DSP response(6月16日付け EE Times)
→南アフリカでのサッカー2010 FIFA World Cup、断続的にvuvuzelaを吹き鳴らしてテレビやラジオの解説が困難に直面する事態、ソフトウェア・ベースのオーディオ処理ツール・プロバイダー、Waves Audio Ltd.(Tel Aviv, Israel)が、放送オーディオchain用にnoise-suppression plug-insを売り込み、2つのplug-inソフトウェア、WNS Waves Noise SuppressorおよびQ10 Paragraphic Equalizerから成るソリューションの旨。

◇ブブゼラの音だけカット、フランスのTV局が成功。(6月18日付け asahi.com)
→AP通信発。サッカーのW杯南アフリカ大会で、観客が吹き鳴らしている民族楽器「ブブゼラ」の音だけを除去して試合を放映することにフランスのケーブルテレビ局が成功した旨。ブブゼラの音は虫の大群の羽音のような低音。試合を盛り上げる一方で、世界中のテレビ視聴者などから耳障りだとの苦情も出ている旨。

◇ブブゼラの音、抑えて放映? 英BBC、苦情受け検討。(6月18日付け asahi.com)
→サッカーW杯のテレビ中継を通じて広く世界中に知られた、ラッパ型のチアホーン・ブブゼラの音。英BBCは多くの視聴者から苦情を受け、ブブゼラの音を抑えて放映することを検討し始めた旨。だがブブゼラの周波数は人の声と近く、完全にカットすることは難しい旨。

第一四半期、1-3月のノートPC世界出荷金額、そして話題の派生製品がひしめく中の内訳に注目している。

【ノートPC世界出荷額】

◇ノートPC世界出荷額、1-3月は31%増。(6月16日付け 日経 電子版)
→米DisplaySearch発。1-3月期のノートPC世界出荷額が前年同期比31%増の$31.3B(約2兆9000億円)、中南米やアジアで小型ノートPCの販売が伸び、景気減速直前の2008年7-9月期にほぼ並ぶ水準まで回復の旨。
 内訳:「ポータブル型」                31%増の$23.0B
      「小型ノートPC」(netbookやiPadなどslate型) 56%増の$3.5B


≪グローバル雑学王−102≫

回復基調が続く世界経済と言われるが、いつまでも本当にそうか?

『変わる世界、立ち遅れる日本』
 (Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655) …2010年3月4日 第1版第1刷

では、意外にもイラク侵攻を行ったブッシュ政権の国防長官、Rumsfeld氏の分析手法を採っている。同氏は優れた分析家であり、「確実に分かっていること、より不透明で分からないことを峻別すべき」としているとのことである。現下の世界の動きの推移に照らし合わせて読み進めている。    


[第3章 世界経済は回復に向かうのか
 −−−安易な予測より明白な現状を認識せよ]

*リーマンショックが残した傷跡
・2007〜2009年の景気後退 
 →世界の至るところで、また経済形態の違いにより、様々な特徴
  ⇒2009年後半の景気回復も世界中で大きな差異
・「陰の銀行システム」が保有する負債と債券が崩壊、突然の大打撃
 →その規模や性質、それに世界的影響は、規制当局や市場参加者ですらまったく分からず
  ・明確性と透明性を欠く一部金融界では、今後も意外な出来事が起こらない
   とも限らない

*世界経済における七つの現状分析
・米国ブッシュ政権の国防長官を務めたDonald Henry Rumsfeld氏の分析
 →「既知の既知」(自分が知っている周知の事柄)
  「既知の未知」(予想可能な未知の事柄)
  「未知の未知」(思いもよらぬような、驚くほど無限の力をもった事柄)
・世界経済で明白な事実、「既知の既知」:
1)特に欧米と日本において、激減する民間需要が、増大する公的需要に代替、少なくとも補償され、民間負債が公的負債に置き換えられた
2)2011年から2015年までの中期的な観点、財政赤字を漸次削減するために、多くの国では税金が引き上げられ、公共投資が削減されよう
3)世界の三大経済国(日本・米国・中国)の2008〜2009年における景気拡大策、長期にわたって政府機能を構造的に拡大、特に社会保障政策が強化、財政削減とは逆の方向に向かう
4)貸し手や投資家は、景気回復の間もリスクをとることを避け、用心深くなる
5)経済回復が始まると、インフレよりもデフレ、すなわち価格や賃金の下落が、急速にしかも広く起こりやすい
 …デフレとインフレで世界の景気回復は二極化
  欧米と日本            →デフレ
  中国やインド、その他の途上国経済 →インフレ
6)過剰設備がとりわけ製造業の特徴、製造業とその輸出が大きな役割を果たす経済大国、今回の地球規模の景気後退で、最初の6ヶ月間に最も大きな打撃を受けていた
7)貧しい国、あるいは発展途上国のなかで、国内需要を増大、安定した国内金融が調達できるところは、世界的な景気後退に耐え、より早く力強い回復の期待、中国やインドが、来る数年間に、富める国よりも好結果を生み出せる
・今後数年間、高率の税負担と財政赤字、上昇する長期金利、富める国の経済活動に重くにしかかる
・中国とインド →インフレのリスクを抱える

*悲劇につながる五つのリスクと不確定要素
・「既知の未知」 …リスクと不確定要素
1)すべての富める国において、世帯や企業で、デレバレッジ(Deleverage
 :お金を借りて自己資本の何倍もの投資を行なうレバレッジ投資が逆回転する現象)がどんな強さで、どれほど続くか
 …心理状態が世帯や企業の負債に対する考え方を決定する
2)経済学者は、先の心理状態を決定する要素として、金融が安定しているかどうかを伝えることはできるだろう。
3)原油や他の商品価格 →2008年7月から2009年4月まで、これらの価格は下落:150ドル/1バレル⇒35ドル/1バレル
 高い原油価格 →低炭素経済への転換を加速
          ⇒コストがかかり、来る5年あるいはそれ以上、経済成長が緩慢に
4)政治  …国内政治は景気後退や失業者の増加に伴い、えてして保護主義や貿易制限に走りやすい
5)政治上のリスク →アメリカ本土、あるいは、どこかの世界的な指導国本土で起こるテロ行為

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