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2010年央中期予測/市場実態PickUp/グローバル雑学王−101

前回の月次販売高に続いて、米SIAから世界半導体市場のmid-year予測(年央中期予測)が発表されている。調査会社からもいくつか来年以降にかけた予測データが同時に示されているが、新興市場が牽引する2010年の販売高は約30%戻して$300 Billionの大台に迫る史上最高を見込んでいる。今年の伸びを大幅に上方修正する一方で、来年、2011年については需給、価格動向などの懸念からぐっと抑えた見方となっている。

≪2010年央中期予測≫

米SIAからの発表は、次の通りである。

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○SIAが、2010年の半導体業界が$290.5 Billionに伸びると予測…6月10日付けSIAプレスリリース

Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2010年の世界半導体販売高が28.4%増の$290.5 billionになるとする更新業界予測をリリースした。この予測では、2011年は6.3%増の$308.7 billion、2012年は2.9%増の$317.8 billionと見ている。

「すべての主要製品分野およびすべての市場地域で需要が健全であり、半導体販売高は2010年の始めの4ヶ月で記録的な水準に引っ張られている。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「今年の残りを通しては前年比の伸び率は穏やかになろうが、前月・前四半期比の販売高の伸びは歴史的な季節パターンに沿う控え目なものになると見る。半導体業界は、バランスした在庫で本年をスタートし、今時点過剰在庫が蓄積するという兆候は見えていない。」

「経済予測では、2010年は4.6%、2011年は4.4%というグローバル経済成長率が見通され、最も急速な伸びは新興途上経済圏で見込まれている。これら新興市場、特に中国とインドで、Information Technology製品需要が生み出されており、半導体需要を次々と焚きつけている。」とScalise氏は締め括った。
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先立って発表されている世界半導体市場統計(WSTS)からの発表は、上記とほぼ対応する内容であるが、半年前の前回に比べて今回の本年、2010年の伸びが大きく高まっており、新興市場の予想以上の拡大ぶりを反映する形になっていると思う。関連する記事、データ、以下の通り。
  
◇WSTS predicts chip market will grow 28% in 2010(6月9日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)が、半導体市場の年間伸長予測を上方修正、次の内容の旨。
      2009年(実績)  2010年    2011年    2012年
 今回   $226.3B     $291B            $320.2B
       9.0%減    28.6%増    5.6%増   4.2%増
 前回           12.2%増    9.3%増

◇世界半導体出荷、今年過去最大に、28%増、WSTS予測。(6月9日付け 日経)
→世界半導体市場統計(WSTS、米カリフォルニア州)が8日、2010年の半導体出荷(金額ベース)が前年比28.6%増の2910億ドル(約26兆3900億円)となるとの予測を発表、中国など新興国を中心に、自動車やパソコン、携帯電話などの需要が大幅に回復したことが要因、出荷額は3年ぶりに増加に転じ、過去最大だった2007年を上回る見通しの旨。

◇Semi industry is on the up and up (6月10日付け Tech Eye)
→今週始めにリリースされたWSTSによる半導体市場春季予測、データ内容下記参照。
http://www.techeye.net/assets/upload/chips/wstsmay10.gif

VLSI Research社からも大体符合する本年、来年の見方である。

◇VLSI: ICs hot in '10, but mild in '11 (6月9日付け EE Times)
→VLSI Research社(Santa Clara, Calif.)が、次の通り2010年の半導体予測を高める一方、2011年については下げる旨。
             2010年     2011年
 IC販売高 今回    28%増    4%増
        前回    25%増    8%増
 IC数量  今回    31%増
        前回    24%増
 fab-tool        82.6%増

Gartner社からの半導体設備投資関係の予測も、非常に落ち込んだ昨年のからの急激な戻しと、来年、2011年の鈍い伸びを見込んでおり、先行きへの慎重さが伺える内容と受け止めている。

◇Gartner raises IC capex forecast (6月10日付け EE Times)
→Gartner社が、市場需要活況の渦中、IC capital spending予測を上方修正、2010年の世界半導体capital equipment spendingは113.2%増の$35.4B、2011年は6.6%増と鈍い伸びになると見る旨。2009-2014年推移&予測データ、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/seminews/2010/table1_061010.gif

◇Gartner: Semi industry's strong 2010 growth mitigated by modest correction-Set against the backdrop of strong recovery for the semiconductor industry, Gartner believes the semiconductor industry is back on its cyclical track.(6月11日付け Electronics Design, Strategy, News)
→以下の論点項目。
・ASPs strong ... for now
・2014年:市場を引っ張るのは、smart phonesからsolid-state drives(SSDs)および青色レーザDVDsに及ぶ
・capital equipment spendingは力強いが、2007年に達した高水準には及ばない
・半導体大手とstart-upsのR&D協働

なかなか手放しでの楽観とはいかないということで、足元の本年についても強気になる要素が多いものの、不安も入り交じる下記の指折り項目ではある。

◇10 reasons to be bullish and worried (6月7日付け EE Times)
→2010年を強気に、そして心配して見る10項目:
 1. ICs hot. Then cold?
 2. DRAMs hot. NAND warm.
 3. Capex up. Capacity woes
 4. Wafer madness. ASPs up
 5. Wireless hot. ASPs fall
 6. Take a pill
 7. PCs rock. Supply chain slows
 8. Solar upturn. Slowdown seen
 9. TVs up. LEDs shortages seen
 10. IPhone rocks. Clones roll


≪市場実態PickUp≫

中国に驚くほどの人員規模の工場展開を行っている台湾のEMS、Foxconnの今回の苦境を乗り切る対策が続いている。

【「世界の工場」中国の苦境】

◇Analysis: The bottom line on Foxconn flap-China outsourcing costs are rising already (6月7日付け EE Times)
→従業員の自殺に関して人権問題に報道陣の焦点が最近当てられるFoxconnおよびAppleについて。

◇Analysis: Foxconn salary hike will stress OEM supply chain-EMS provider to double salaries in Shenzhen (6月7日付け EE Times)
→Foxconn International Holdings Ltd.が日曜6日、中国の同社工場での最近の作業者自殺に対するグローバルな激しい抗議に対応、同工場での従業員給与を倍以上にする($130→$293)旨。該地域について政府が定める最低賃金の倍以上となる旨。

◇Foxconn to pay housing fund in east China (6月7日付け EE Times)
→China Daily発。中国での圧力が高まる渦中、台湾のFoxconn Technology Groupが、中国・山東省煙台(Yantai, Shandong province)の8万人の作業者に対し住宅資金を支払う計画の旨。Foxconnは、深セン(Shenzhen)の43万人など中国に80万人の従業員を抱える旨。

パソコン出荷台数の急伸、とりわけアジア・ベンダーの躍進ぶりに注目である。

【第一四半期グローバルPC出荷】

◇Q1 PC rankings: Acer closing gap with HP (6月4日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)、金曜4日発。第一四半期のグローバルPC出荷は、2009年第一四半期から22.7%増、同社が2003年に市場トレースを始めてから最高の前年比の伸びとなる旨。第一四半期に81.5M台に達したアジアのOEMsによる販売の伸びが効いている旨。ランキングデータ、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100604_isuppli_pc_rankings.jpg

大規模な投資で注目のファウンドリー業界に、今度はSamsungが加わって最先端ロジック製造ライン構築の先陣争いの様相が見えてきている。

【ファウンドリー業界】

◇Samsung qualifies 32-nm high-k foundry process(6月10日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.(ソウル)が、high-k metal gate(HKMG)技術での32-nm low-powerプロセスの信頼性テストを完了、32-nmでhigh-kによるlow-powerプロセスをqualifyする初のファウンドリーになる旨。
Samsung Foundryの300-mmロジック製造ライン(Giheung[器興])にて、顧客設計の生産対応可の旨。

◇Samsung leads the pack with 32nm HKMG announcement(6月11日付け Electronics Design, Strategy, News)
→TSMCは依然、28HPプロセス(同社初のHKMG、28-nmとしては2つ目)で6月末にリスク生産に入る予定。Common Platformチーム仲間のGlobalfoundriesは、同社の28-nm HKMGラインで2010年後半のいつかにリスク生産を始める計画、UMCもまた2010年末までにリスク生産に入る意向の旨。

欧州の研究機関、IMECの年次イベントで、それこそ最先端プロセスを具現化するEUVリソ・システムが話題になっており、ここでもという感がある。

【IMEC annual conference(LEUVEN, Belgium)】

◇Video: IMEC expands fab, strikes lab deal with Intel(6月8日付け EE Times)
→IMECが、300-mmウェーハクリーンルームを拡張、22-nm以降の設計pitchesでの半導体製造の鍵と思われるASML NXE 3100 EUVリソ・システムを今年後半に据え付け、またここでは450-mmウェーハの研究も行なう旨。
IMECが担う新しいsupercomputer lab設立に、Intel社がベルギーの約two dozenの研究者を入れて参画する旨。

◇Slideshow: IMEC flexes its R&D muscles (6月10日付け EE Times)
→約30,000人のこの地味な都市(LEUVEN, Belgium)が、半導体プロセス技術の次の大きな飛躍、そしてさらに先に向けた中心になりつつある旨。今回のハイライト写真のSlideShow、下記参照。
http://www.eetimes.com/galleries/slideShow.jhtml?galleryID=80

米アップルから今度は、「iPhone」の新版、「iPhone4」の近日発売発表であるが、付いていくのにますますの距離感を抑えられないところ、機能ラインアップの実感である。

【「iPhone4」】

◇First MEMS gyro packed into smarter iPhone 4 (6月7日付け EE Times)
→Apple社が月曜7日披露のiPhone 4は、世界初、MEMS gyroscopeを搭載、任天堂のWiiと同様に細かい身振りを認識するのにiPhoneを使うことができる旨。

◇新型iPhone、24日に発売、テレビ電話機能、3ミリ薄く。(6月8日付け 日経 電子版、読売)
→米アップルが7日、高機能携帯電話「iPhone」の新型機、「iPhone4」を今月24日に日本、米、英、仏、独の5カ国で発売すると発表、フラッシュ撮影やハイビジョン動画撮影が可能なカメラを本体の前後両面に装備、無線LAN経由の無料ビデオ通話「フェースタイム」も導入の旨。


≪グローバル雑学王−101≫

ものづくりとサービスとなると、我が国では今まで前者に重点が置かれてきて、他の国々の追随を許さないような素材、要素技術を擁する一方で、凝り過ぎた機能満載の弊害の声が最近富に聞こえてくる。

『変わる世界、立ち遅れる日本』
 (Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655) …2010年3月4日 第1版第1刷

より、サービス分野の遅れや規制緩和の必要性を説く以下の内容に目を向けることとする。最先端の技術革新はサービス業、製品の生産量ではなく価値に焦点を、・・・、など考えさせられるフレーズ多々である。  


[第2章 知識サービス産業で成長する日本
 −−−通信、電力、空港などの規制緩和で高利潤へ]

*生産性を高める活動に「サービス業」と「製造業」の区別はない
・「製造業」と「サービス業」 
 →この2つはお互いに深く関連
  …製造業にとって不可欠なデザインや最先端の技術革新は、どちらもサービス業
  →数多くの工業製品(コンピュータなど)を利用することが、サービス業においても必要不可欠
・日本がどれだけ製品を生産するかに焦点を当てるのは間違っている。その価値に焦点を当てるべき。
 →経済活動の生産性が高いか、また高付加価値を生んでいるかどうか
・日本経済にとって深刻な問題は、生産性が高く、高付加価値な知識集約型活動が十分に行われていないこと。
・サービス業はGDPの約70%、製造業は約20%
 →低コスト製造国は、日本を見習って、自国のテクノロジーを向上させる
・日本が急ぐべきこと
 →サービス業分野での生産性の問題を解決すること
  ⇒製造業をも助けることに

*輸出は日本のGDPに多くの貢献はしない
・日本の基本的に生産性の低さから生じている問題
 …経済成長が弱く、税収が少ない
・1990年代初期にバブルが崩壊
 →生産性向上への投資意欲は減退: 中国や発展途上国との競争が激化
・2002〜2007年の労働生産性の年間成長率は7%に
 …その効果も労働法の改正によって相殺
  →企業は利潤を確保の一方、世帯収入の減少と消費支出の減退、さらに脆弱な内需に
・日本の商品とサービスの輸出は、GDP全体の17.6%
 →ドイツでは47%

*通信、電力などのサービス業分野の競争が足りない
・過去5年間、輸出に依存した日本の成長は、経済生産高の1/5にも満たない産業に依存
 …残り4/5の大半がサービス業
・サービス業分野は、国際競争にさらされていない、さらに国内企業間の競争も決して激しくない
・例えば、日本の電気料金は、他のOECD加盟国と比べて割高

*ドラッカーが唱えた知識経済社会
・Peter Ferdinand Druckerが誰よりも先に喝破していた知識経済社会
・1980年代後期…バブル経済が頂点
 →日本はハイテクを駆使、よく訓練され教育を受けた労働者、卓越した社会組織
 →競争力の高い製品
 ⇒究極の近代的な知識経済国へ、と思われた
・知識経済は、生産性と新テクノロジーを適用してコスト削減、新しい商品とサービスを創出することで成り立つ
 →全国あらゆるところで知識と知的方法による労働が広がってこそ、初めて効果発揮
 ⇒日本が失敗、知識国家になれなかった原因

*鳩山首相が述べた国内政治の最優先事項とは
・政権が交代 
 →官僚よりも政治家が強い影響力をもつシステムへの変化
 →日本をより知的にし、生産性を一層高め、より裕福な国家にできるかどうか
 ⇒多くのエコノミストは疑念 …鳩山氏の「市場原理主義」への批判
・私(著者)の考え …次の政策を的確に組み合わせること
 →極端な所得格差を解消し、社会福祉制度を再構築、サービス業分野において規制緩和と構造改革を推し進めること
 ⇒消費を直ちに増大する助けに

*サービス業の規制緩和こそが、日本が生き残れる唯一の道
・日本の課税額はGDPの約35%
 →日本の公共支出はGDPのほぼ45%にまで達しているが、その数字と税収の差が財政赤字に
・西欧諸国は、公共支出をGDPの45〜55%の水準にするため、税金を引き上げ
 →日本は、国家機能と財政面で、ヨーロッパにより近い方策をとらなければならない
・民主党の公約実現のためには、十分な税収を確保する一方で、財政赤字の削減を図らなければならない
 →日本のサービス業を知識集約型活動に基づいて、急速に発展させる必要
 ⇒規制緩和と、競争促進の法規を厳格に実施すること
・サービス業には、小売、卸売、通信事業、流通、法務、メディア、娯楽、宣伝、電力、港湾、空港、その他多くの業種が含まれる
・自民党や旧来の官僚に主導された政権は、製造業分野(GDPのわずか20%)を贔屓に
・製造業と並んで、サービス業の規制緩和と成長にも重点を置くこと
 ⇒国全体の繁栄を本当に支える

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