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4月の世界半導体販売高/市場実態PickUp/グローバル雑学王−100

新興市場の伸びが引っ張って、世界半導体市場の急激な戻し基調が続いている。米SIAから発表された4月の世界半導体販売高は、前月比2.2%増、前年同月比50.4%増となっており、前月、3月のそれぞれ4.6%増、58.3%増と比べると増加率は鈍化している。昨年の第一四半期が販売高の底であったということと、高い水準の回復基調が続いていることを物語っている。近々リリース予定の米SIAからのmid-year予測にも注目ということと思う。

≪4月の世界半導体販売高≫

米SIAより次の通り発表されている。

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○SIA発表:4月の半導体販売高は前月比2.2%増…6月1日付けSIAプレスリリース

4月の世界半導体販売高が$23.6 billionで、3月の$23.1 billionから2.2%増加した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。
2009年4月の$15.7 billionからは50.4%の増加である。2010年の1月-4月の販売高は$92.6 billionとなり、前年同期比54.2%の増加である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「4月のグローバル半導体販売高は健全な伸びの速さであり、従来の2007年11月の月次記録水準を上回っている。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「予想通り、前年比および前月比ともに伸び率は僅かに穏やかになっている。前年比率が異常に高いのは、今日の力強い需要に比べて2009年始めの不況の谷を反映している。」

「現在の半導体販売高の伸びに大きく寄与しているのは、世界的な3Gワイヤレス通信の採用およびその結果としてのインフラ投資、そして企業向け、車載および産業用向け分野からの需要回復が入る。」

「これからに向けて、半導体販売高は歴史的な季節パターンに戻っていくと見る。この業界の今後の伸びは、グローバル経済回復の継続、そして特に、我々の製品需要を最も引っ張っている新興市場の伸びが続くことに依然と大きくかかっている。」とScalise氏は締め括った。

SIAは、6月10日にmid-year予測をリリースする予定である。

※4月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_1004.pdf
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今年に入ってからの販売高の累積を市場地域別に見てみると、次のように表されている。新興市場のAsia Pacific、とりわけ中国が牽引する姿が鮮明になっている(4月販売高で中国はAsia Pacificの38.4%)。

               【3ヶ月移動平均ベース】
 市場地域     Year To Date前年同期比伸長率
          2010年3月  2010年4月
 Americas     48.4     47.4
 Europe      42.0     42.5
 Japan       42.9     39.8
 Asia Pacific   72.0     64.5
  (うち中国    74.3    69.3)
 計         58.4 %   54.2 %

この世界的には活況を呈する半導体市場について、本年の結果を占う予測の方も勢いづいているが、慎重な見方も伴ないながらの現在進行形ではある。

【活況の市場予測データ】

◇SEMI ups fab spending forecast (6月3日付け EE Times)
→IC需要活況の渦中、SEMIが、2010年fab spending予測を上方修正、117.4%増の$35.514Bと見る旨。

◇Gartner ups IC forecast but sees slowdown (6月3日付け EE Times)
→Gartner社発。2010年の世界半導体売上げは、2009年($228B)比27.1%増の$290Bに達すると見る旨。IC市場は活況であるが、後半の鈍化そして"調整"を警告の旨。

中国、インドをはじめとする新興市場の伸びの実態について、最新データから抜き出すと次の通りである。この推移を軸に今後を見ていく展開の現時点ということと思う。   

【新興市場の急伸ぶり】

◇中国の経済成長率は9.2%、国連予測。(6月4日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→国連はこのほど発表した報告の中で、今年の中国の経済成長率は9.2%に達し、2011年は8.8%になるとの予測を示した。
国連経済社会局(UNDESA)は26日、半年前に発表した報告書「2010年世界経済の現状と展望」を修正した。同報告書は今年の世界経済の成長率を3%と予測しつつ、成長ペースが鈍っていることや各国の復興状況がアンバランスであることなどから、この成長ペースは雇用の伸びを促進する上でそれほど大きな効果を上げないと指摘する。
同報告の予測によると、今年は先進国全体の経済成長率は1.9%にとどまり、うち米国は2.9%、欧州連合(EU)はわずか1.0%と予測される。一方、アジア地域の経済成長ペースは急速に伸びており、特に中国、インドの両国が突出している。インドの今年の経済成長率は7.9%、来年は8.1%に達することが予想される。

◇インドの携帯電話、5ヶ月で加入1億件増、6億件突破。(6月1日付け 日経Web刊)
→インドの携帯電話加入件数が6億件を突破、インド電気通信規制庁(TRAI)によると、加入件数は4月末時点で6億122万件となり、2009年11月末に5億件を超えてから5ヶ月で1億件を上乗せした旨。拡大する個人消費や通信会社の値下げ競争が、農村部を中心に新たな加入を促している旨。
中国の加入件数は4月末で7億8650万件、昨年12月末比の純増件数は3911万件、インドの同期間の純増件数は7607万件で、中国の1.9倍のペースで加入者を増やしている旨。  


≪市場実態PickUp≫

欧州半導体市場を引っ張るSTマイクロが、アナリスト向け説明会をLONDONで開催、以下の内容が見られる。米TI社に続いて、300-mmウェーハによるアナログ半導体生産の可能性が示されている。

【STマイクロのannualアナリストday】

◇ST sees strong demand, no inventory build up (6月4日付け EE Times)
→STMicrolectronics NVがLONDONにてアナリスト連に対し、需要は力強く在庫入りの兆候はなく、フルcapacity稼働率での生産が続いていて、2010年はSTにとって活況の年になると強調の旨。

◇ST mulls 300-mm wafer option for analog (6月4日付け EE Times)
→STMicroelectronicsのCEO、Carlo Bozotti氏。同社が、Grenoble, France近くのCrolles-2ウェーハfabにて300-mmウェーハでのアナログICsをいくつか作る可能性の旨。

台湾でのComputexも30回を迎えるとのこと。改めて知る時間軸の早さである。インドからの見学派遣団という話題が今回見られる。

【Computex Taipeiから】

◇Trip Report: Searching for tablet-like devices at Computex(6月2日付け EE Times)
→第30回を迎える台北国際コンピュータ見本市(Computex show in Taipei City)について。Nangang Exhibit Hallのほとんどどのsectionでも、full screen, tablet-like機器が目に入るが、多くはガラスケースに入っていて手近にできない旨。

◇Indian trade delegation visits Taiwan (6月4日付け EE Times India)
→インドのMinistry of Information Technology(IT)が率いる派遣団が、Computex trade showの間に台湾を訪問、インドの台湾のIT業界の間の一層の協力を模索、インドにおけるITハードウェア製造投資を推進する狙いの旨。

Bigプレーヤーによる大型設備投資の流れが続いている。需給関係を睨みながら、大胆、かつ慎重なスタンスが求められる展開である。

【相次ぐ大規模設備投資】

◇Analysis: Big spenders reinforce boom-bust cycle(6月1日付け EE Times)
→今や早いスピードで相次ぐ大規模設備投資のニュース。最先端、high volumeの半導体製造に本気のIntel, Samsung, TSMC, GlobalFoundriesそして東芝という顔ぶれ。capacityを追加する現在の競争は、半導体業界伝統のboom-bustサイクルを増強している旨。

◇GlobalFoundries to spend $3 billion on expansion(5月31日付け EE Times)
→ファウンドリー半導体メーカー、GlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)が、向こう2-3年にわたり$3Bの追加投資、グローバル半導体製造operationsを拡大する計画の旨。

◇Hynix raises capex, breaks with Numonyx (5月31日付け EE Times)
→Hynix Semiconductor社が、2010年設備投資を以前の約$1.9Bから約$2.5Bに引き上げる計画、また中国における合弁ウェーハfabからのNumonyx NV分買収に約$425Mを充てる計画の旨。

これも注目、Abu Dhabi政府の半導体に取り組む動きである。

【Abu Dhabiの動き】

◇ATIC preps Abu Dhabi for chip manufacturing (5月31日付け EE Times)
→ファウンドリー半導体メーカー、GlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)を支えるAbu Dhabi政府がもつ投資vehicle、Advanced Technology Investment Co.(ATIC)が、Abu Dhabiに"先端技術クラスター"を作る計画を発表の旨。

◇Saxony agrees to aid Abu Dhabi with technology(5月31日付け EE Times)
→ドイツSaxony州が、Abu DhabiのExecutive Affairs Authorityと、特にmicroelectronicsにおける先端技術R&Dの知識&ノウハウを共有、交換するopportunities設定に合意、Memorandum of Understanding(MoU)に入った旨。


≪グローバル雑学王−100≫

我が国の閉塞感が漂う現状をなんとかという問題意識のなか、タイトルに惹かれて今後読み進めるのが次の書である。

『変わる世界、立ち遅れる日本』
(Bill Emmott 著 烏賀陽 正弘 訳:PHP新書 655)…2010年3月4日 第1版第1刷

著者のBill Emmott氏は、英『エコノミスト』の元編集長(1993〜2006年)、1983〜1986年日本滞在、『日はまた沈む』(1990年)、『日はまた昇る』(2006年)はじめ話題の著書、という方である。難解な個所が多々あって、後で振り返って真意を理解する場面があると思うが、構わずの抜き書きで進めたく思う。

鳩山総理の考え方を取り上げている部分が出てくるが、読み進める最中のこと、志半ばの辞職という事態に立ち至っている。日本をなんとかしなければ、という思いが一層痛切になってきているまさに現時点である。


≪はじめに≫
・2007〜2009年の深刻な世界的景気後退 →衝撃的で憂慮すべき出来事
・経済危機の原因が周知の長期的傾向にどのような影響を与えるかの考察
 〔長期的傾向〕 中国とインドの台頭
           アメリカの国力衰退
           環境問題

[第1章 経済危機から脱出する日本の戦略−−−製造依存の転換をめざす]

*地球規模の経済危機は終わりに近づく
・2007〜2009年の地球規模の経済危機によって、世界は多くの面で変容
 …多くの尺度から見て、1945年来の他のどんな景気後退よりも最悪のもの
・今回の世界的経済危機とその回復は、1970〜1990年代の景気後退と決定的に違う
 →富める工業国が、インフレによる危機でなく、デフレと債務超過の危機に直面
 ⇒日本は、1990年半ば以降に経験したデフレの影響から、債務超過を削減させる方策を熟知
 ⇒一方、欧米ではこれがまったくの新事態

*消費者や企業の心理は予測できない
・1990年代後期の日本 …労働法を改正、パートタイマーや非正規労働者を広く雇用することを許容
・経済危機の深刻さの程度と範囲を予測すること
 →現在の景気回復の力強さと本質を予測しにくいのと同様に、困難
  ⇒根底は人間行動の考察にある
・アメリカの世帯 …2007年まで、家計貯蓄率はマイナス
         →2009年9月には、平均貯蓄率が可処分所得のほぼ5%に
・1990年代の日本の幸運
 →不況と世界全体の強力な成長期が重なっていて、国内の危機がいくらか緩和

*グローバリゼーションが景気回復を助ける
・今回の危機は、各国が貿易や国際資本移動で結ばれて、戦後のいかなる景気後退よりも一層広範に波及
・グローバリゼーション →資本が国境を越えて移動し、さらに貿易拡大によって需要が増大
・保護主義への防壁 →G20サミット(20ヶ国・地域首脳会合)の設立
・今後、世界は経常収支赤字国と黒字国間の経済上のバランスを是正しなければならない。
・需給関係のバランスを再調整しなければ、保護主義の新たな時期を迎え、グローバリゼーションが後退することに。

*鳩山氏の「市場原理主義」批判は間違い
・1990年代およびこの10年間
 …回復と改革のプロセスによって、多くの事象が変化したものの、労働市場を除けば、日本経済の基本的構造は何一つ変わらなかった。
・2001〜2006年の小泉政権 …市場力や自由化について、目ぼしい拡大を何ら行っていない。
 →労働市場の二極化: パートタイマーや非正規雇用者が34%に
               フルタイムや正規雇用者の保護
  ⇒貧困層の増大と大きな所得格差
  …「アメリカ型の市場原理主義」ではなく、欧州でより一般的
・2002〜2007年の間、日本の経済成長の2/3は完全に輸出による
 →一番の供給先は中国、その次がアメリカ
・世界的経済危機が製造業の需要を直撃
 →日本という航空機は急激に下降し始めた

*製造業主体の国家は不安定が露呈した
・日本社会では、医療や年金の負担は増える一方、必要な税金を納税する労働者は減少
・この実情 →モノづくり立国が日本にとって最善であるとの既成概念は捨て、忘れなければならない
・GDPが最大に落ち込んだのは、製造業に大きく依存していたドイツや日本、それに東アジアの発展途上国
 →旧来の考え方は、見事に打ち砕かれた
・GDPに占める製造業の割合が大きい国ほど、サービス業主体の経済国より激しく落ち込んだが、回復も早かった
・日本を「モノづくり立国」とするのは古い考え
 →製造業とサービス業を区分するのはもはや無意味

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