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新分野開拓への動き/市場実態PickUp/グローバル雑学王−98

自動車、電機大手各社の成長が見込める「新興国」と「環境」に重点投資する方針が伝えられている(5月22日付け 日経 電子版)。また、テレビとパソコンが融合する進化、新しいコンセプトのパソコン、小型端末と、新分野開拓に向けて、各社あるいは連携して取り組む動きが世界方々で見られる。それぞれの飽くなき挑戦に注目である。

≪新分野開拓への動き≫

「環境」といえば電気自動車が思い浮かび、本欄で前回も取り上げている。
その開発での連携、中国での改善の動きとして、以下が見られる。

◇Toyota invests in Tesla in electric car deal(5月21日付け EE Times)
→電気自動車のstartup、Tesla Motorsとトヨタ自動車が、電気自動車の開発で協力する計画の旨。

◇Bosch jumps on e-bike bandwagon (5月21日付け EE Times)
→自動車のRobert Bosch GmbHが、電気バイクの分野でCannondaleとコラボ、新しい事業部門、Powertrain Systems eBikeを打ち上げの旨。

◇Significant powertrain improvements seen in China(5月21日付け EE Times)
→Strategy Analytics発。最近のAuto China show in Beijingにて、中国現地の自動車業界が、エネルギー効率の良いpowertrains(伝導機構)に非常に大きな努力をしていることが分かる旨。

マイクロソフトのsmartphone、インテルのnetbookに対抗するAMDの新コンセプトなど、世界のBig Playersの間の凌ぎ合いの様相である。

◇Inside Microsoft's Kin reveals surprise (5月19日付け EE Times)
→Microsoftが最近、長らく噂されたsmartphone、Kinを展開、MicrosoftのZune media playerインタフェースおよびcloud computingサービスを用いるsocial networkingに重点化の旨。

◇インテル、タブレット端末への参入を本格検討。(5月20日付け 日経 電子版)
→英Financial Times発。「アトム」搭載のネットブックで優位を占めているインテルに対し、2つの新しいコンセプトのパソコンが挑戦状突きつけの旨。
 −超薄型ノートパソコン …AMDのCPU「CULV」(消費者向け超低電圧)
 −タブレット型端末   …ARM設計のCPU搭載

中国では次のsmartphoneでの動きである。

◇中国移動、Oフォンの販売を強化(5月17日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→中国移動(チャイナモバイル)の王建宙総裁がこのほど、今後の端末機の開発方向について、1000元程度の低価格スマートフォン「Oフォン」(オーフォン)を強力に発売していく計画を明らかにした。同社の運営する3G通信方式TD─SCDMA(TD)について、携帯端末が不足していることが最大のネックだと指摘し、端末機の充実を図ることでアップル社のアイフォンにも対抗していく狙いだ。

グーグル、インテルそしてソニーという名前が並んでテレビとパソコンの融合に映る「インターネットテレビ」という新分野開拓の発表が行われている。ここでも壮絶な凌ぎ合いの様相である。

◇Coming this fall: GoogleTV on Intel-powered Sony TVs-Search giant gives first demo of merged Web, TV system(5月20日付け EE Times)
→Googleが、同社annual Google I/O conference(San Francisco)にて、GoogleTV initiativeを正式に展開の旨。

◇ソニーとグーグルが提携、ネットTV・携帯端末など開発-今秋、米国で発売(5月21日付け 日経 電子版)
→ソニーは米グーグルと新しい映像・情報端末の開発・サービスで提携、第一弾としてインターネットを快適に楽しめるパソコン並みの機能を内蔵した新型テレビを2010年秋に米国で発売する旨。ネット事業で世界をリードするグーグルと組んでネットと家電の新分野を開拓、新型情報端末「iPad」などで急成長する米アップルに対抗する旨。

◇テレビがパソコンへ「進化」? グーグル・ソニー提携(5月22日付け asahi.com)
→ソニーと米グーグルが提携して今秋、「インターネットテレビ」を米国で発売する。グーグルの基本ソフトを土台に、ネット検索や動画視聴などのパソコン機能をテレビに取り込む。お茶の間の主役の進化で、暮らしは変わるのだろうか。

このような新分野開拓でグローバル市場を如何に制覇できるか、我が国のプレゼンスの高め方がいつも問題意識として上がってくる。これに関連する受け止めがあって、以下の記事に注目している。  

○『知財版「必敗の本質」』(5月17日付け 朝日・夕刊 論説委員室から)

・日本が生んだ戦略商品、液晶パネル、DVD、カーナビ、太陽光発電パネルなどが、世界的な普及期に入ると判で押したように日本製品のシェアが急落する「法則性」が浮かび上がってくる。
・日本のエレクトロニクス産業の「必敗の本質」に切り込んだ東京大学特任教授、小川紘一氏の近著「国際標準化と事業戦略」(白桃書房)から。
・日本はアナログ時代から「特許を増やし、国際標準を握れば儲かる」と信じて莫大な研究開発投資を続けた。ところが、ディジタル時代にきれが通用しなくなったことが必敗の原因。
・学ぶべきはインテルなど米国のIT企業の知財戦略。日本の産業界は彼らの華々しい技術革新やM&Aの成功話に幻惑され、事の本質が分かっていない。
・彼らは、契約や特許で秘中の秘とする技術的独占分野を作り、外側の応用
・付属品の分野は徹底して開放する。その境界に国際標準を使う。結果、瞬く間に国際分業が起こり、安価な製品が世界的に溢れる一方、独占技術に巨額利益が転がり込む。これを再投資に回して技術的優位を続ける限り、優位は変わらない。
・日本は技術で勝てば儲かると信じてきた。しかし、知財で勝つには開と閉の両面の戦略こそ必要だ。

グローバルビジネスでの戦略上の考え方の必要性という受け止めである。


≪市場実態PickUp≫

前回も取り上げたが、三星電子の積極的な投資の動きである。

【三星の積極投資】

◇Update: Samsung doubles chip, LCD capex(5月17日付け EE Times)
→予想通り、Samsung Electronics Co. Ltd.が月曜17日、半導体およびFPD製造のcapacityを増やすためにcapital spendingを倍増、2010年に約15.7Bを充てるとともに、さらに$7BをR&Dに振り向ける旨。

◇Samsung invests $22.6B in R&D, capex, adds 10,000 jobs(5月17日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Samsung Electronics Co Ltdが本日、2010年のcapexおよびR&D投資全体を約$22.6Bに増やして、10,000人の新規雇用を発表、同社にとって最大の年間投資出費となる旨。

【メモリメーカーに対する罰金】

ずいぶん遡る話であるが、European Union(EU)からの裁定である。

◇Europe set to fine memory chip makers, say reports(5月17日付け EE Times)
→Samsung, Hynixおよび子会社、Qimondaは今では存在しないInfineonなどメモリ半導体メーカーに対し、European Union(EU)が水曜19日、メモリ半導体価格について不法に談合したとして罰金を科す見込みの旨。

◇Europe fines nine DRAM makers $400 million (5月19日付け EE Times)
→予想通りEuropean Commission(EC)が、2000年代に入って始めの何年か、price-fixingに加わったDRAMメーカー10社に対する罰金、計約$410Mを発表、次の内訳の旨。
 Samsung   約$180M
 Infineon    約 $70M
 Hynix     約 $64M
 日立      約 $25.2M
 東芝      約 $21.8M
 三菱電     約 $20.5M
 NEC      約 $12.7M
 Elpida     約 $10.5M
 Nanya     約 $2.2M

【市場の供給難】

不況の後の回復を図る足並みの難しさということか、ある製品、部品、材料の不足、納入リードタイムの延伸の事態が見られている。

◇Update: LEDs in short supply as market booms(5月17日付け EE Times)
→今年始めはアナログ、メモリ、ロジックなどICベンダーに大きな需要が見え始めて、ある製品が不足したり、リードタイムが延びることに。今やLEDsが供給不足になっており、LED装置および材料が不足しているという見方も。

◇Analyst: Xilinx at risk of double ordering (5月18日付け EE Times)
→Wall Street、J.P. Morganのアナリスト、Christopher Danely氏の火曜18日配布レポート。Xilinx社(San Jose, Calif.)が、顧客によるdouble orderingのリスクに引き続き直面、あるVirtex-5 FPGAsについてのリードタイムが、前四半期の4-6 weeksから10 weeks以上に延びてきている旨。

【ランキングデータ】

様々なベンダー・ランキングのデータが相次いでいるということで、一挙まとめて以下の通りである。

◇Winners, losers in DRAM rankings (5月17日付け EE Times)
→Gartner社がまとめた第一四半期DRAM市場シェア速報。
winners(シェアup): Samsung, Micron, Powerchip, ProMOS losers(シェアdown): Hynix, Elpida, Nanya, Winbondデータ内容、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100517_top_dram_makers_gartner.jpg

◇ST dominates MEMS foundry rankings (5月17日付け EE Times)
→Yole Developpementによる2009年MEMSファウンドリー事業・トップ20ランキング、下記参照。STMicroelectronics社が約40%のシェアで引き続きリードしている旨。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100517_top_mems_foundries_yole.jpg

◇Apple, RIM jump in cell rankings (5月18日付け EE Times)
→iSuppli社発。第一四半期のグローバルcell-phone市場、smartphoneのお蔭で、Research In Motion Ltd.(RIM)およびApple社がランキング第5位および第6位に上昇、同時にMotorola社は第8位に下降の旨。データ内容、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/seminews/2010/chart1_051810.gif

◇Applied tops solar equipment rankings (5月19日付け EE Times)
→VLSI Research社が、2009年solar製造装置サプライヤ・年間ランキングをリリース、不況に見舞われた渦中、たくさんの変化がある旨。データ内容、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/seminews/2010/chart1_051910.gif

◇Samsung loses ground in NAND rankings (5月19日付け EE Times)
→iSuppli社からの第一四半期NANDフラッシュメモリサプライヤ・ランキング、東芝が業界トップ、Samsung Electronics Co. Ltd.との差を詰めた旨。データ内容、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/seminews/2010/chart3_051910.gif


≪グローバル雑学王−98≫

日々のテレビでよく目にする北朝鮮のテレビ放送、独特の言い回しトーンであるが、マスメディアと交通事情の実態に、

『北朝鮮を見る、聞く、歩く』(吉田 康彦 著:平凡社新書 500)…2009年12月15日 初版第1刷

より、実際に足を踏み入れてつぶさに体感している著者を通して近づいてみることにする。
現時点の北朝鮮と韓国については、哨戒艦沈没事件を巡って平行線のやりとりが続いている。

※北朝鮮の最新動向ニュース:
北朝鮮、調査団受け入れを再要求、哨戒艦沈没で(5月22日付け 日経 電子版)
…北朝鮮の金永春人民武力相が22日、哨戒艦沈没事件に関し、先に派遣を表明し、韓国が受け入れを拒否した調査団を無条件、即時に受け入れるよう改めて求める通知分を韓国側に送付した旨。


[第8章 マスメディアと交通事情
 −−−論文指導とテレビCM/増える自転車/「統一列車」が走る日]

*金日成の「論文指導」
・北朝鮮当局が最重要視 →労働党機関紙『労働新聞』(発行部数公称100万)
・4大新聞 …『労働新聞』『朝鮮人民軍』『青年前衛』『民主朝鮮』
 →全人民必読のメディア
・平壌市民が愛読する『平壌新聞』…ラジオ・テレビ、娯楽・スポーツ
 週刊英字紙 "The Pyongyang Times"
・演説嫌いで記者会見などというものも一切しない金正日総書記
 ⇒「論文指導」「現地指導」
□金正日の私生活
 …秘密主義を貫いている
・現体制下の北朝鮮は、2400万人民が一大家族を形成
 →内部的には強力なカリスマ指導者、外部的には脅威と緊張の存在が不可欠
□金曜労働と土曜学習
 …この2つが公民としての最低限の義務
 …機械化の遅れている北朝鮮では、すべて人海戦術による総動員体制での作業

*国営放送にテレビコマーシャル登場
・2009年7月、テレビに国産の大同江ビールのコマーシャルが登場 
 →画期的なこと
・テレビは「朝鮮中央テレビ」
     「朝鮮文化教育テレビ」(教育番組専門)
     「万寿台テレビ」(映画・ドラマ・スポーツ) の3局(3チャネル)
・テレビは平壌でも普及率はまだ50%程度、平日の放送5時間

*大物女性アナウンサー・李春姫さん
・北朝鮮の重大発表 →チマチョゴリ姿で「朝鮮中央テレビ」の画面に登場
             →40年以上ニュースを担当する李春姫(リチュンヒ)さん
             ⇒内外で「北朝鮮の顔」

*地方・農村ではラジオが主流 急速に普及する携帯電話
・携帯電話は、2004年、一部の外国人を除いて禁止、2008年以来再許可、エジプト資本「オラスコム」の技術協力で平壌中心に急速に普及へ。
・庶民には手が届かず、厳重な登録制。

*実現遠いクルマ社会
・著者は、過去15年間の訪朝でほぼ全土を踏破
・平壌市内は完全舗装され、道路は広い。いつもガラガラ、交通信号はない。
・北朝鮮全土でクルマは3万台しかないという。自家用車はまだ普及していない。一般庶民には"高嶺の花"。

*平壌自慢の地下鉄とトロリーバス
・平壌自慢の地下鉄は、営業開始が1973年。
 →3路線: 「革新線」 …東西
        「千里馬線」…南北
        「万景台線」
 →17駅、総延長34km
・駅は緊急避難用のシェルターとしても設計 …豪華だが薄暗い
・歴史的に古いのはトロリーバス。輸送手段として最も普及。
・地下鉄、トロリーバス、路面電車は、一日推定50万人の平壌市民の足
・地方都市で目につくのは自転車の増加

*電化だけは進んでいるが、ノロノロ運転の単線列車
・列車は総延長5235km(鉄道省発表)、大半が標準軌道(幅1435mm)、日本統治時代の狭軌(幅762mm)、シベリア鉄道と連結するための広軌(1520mm)も。
・全線が単線運転。
 →平壌から中国国境の新義州まで:   時速40kmペースの時間
  平壌から中朝国境の満浦(マンポ)まで: 時速30kmペースの時間
・全路線の80%以上が電化、これだけは韓国よりもはるかに高い。

*列車旅行好き、飛行機嫌いの金日成・金正日父子
・金日成出席は、20回、列車でソ連・中国・東欧諸国を訪問。
・金日成・金正日父子2人とも飛行機嫌い、列車好き。
・2人のための豪華な専用車両 …「走る応接室」「走る執務室」

*順安(平壌国際)空港と平壌中央駅
・北朝鮮唯一の国際空港、平壌国際空港、別名「順安空港」
 …平壌の北24kmの順安(スナン)
 →日本の地方の小都市の空港並み
・厳しい入国審査と税関検査
 …精密機器の持ち込みにうるさい
 …ポルノ雑誌、反体制・体制批判の刊行物持ち込みは厳禁
・立派な鉄道の駅
 →石造り、1957年完成の平壌中央駅
  …平壌・北京間の国際列車は週4便発着
  …モスクワとの往復は週1便ずつ
 →近年は中国人ビジネスマンと観光客が激増、しかし中国語の表示はない。

*南北「統一列車」は試運転で挫折
・李明博政権が登場、南北関係が悪化、北が一方的に乗り入れを拒否
・2007年5月17日、1日限りの試運転。歴史的な汽笛、半世紀ぶり2つの連結。
 →「京義線」(ソウル[旧名「京城」]−新義州)
  「東海線」(日本海の朝鮮・韓国名)
・著者が日朝国交正常化の必要を説くのは、北東アジア全域の平和と繁栄のため

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