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振幅を増すグローバル波及/市場実態PickUp/グローバル雑学王−96

中国経済関係の大きなプラスの伸びの数値に見飽きる感じがしていたら、春の連休明けに時を合わせるかのようにギリシャの騒動、株価乱高下、はたまた金融危機再燃の危険性が取り沙汰されている。世界の動静が即刻グローバルに伝わる今、波の早さとその振幅の一層の拡大を感じている。半導体、デバイスの世界は予想以上の需要の高まりが見えてきている現時点であるが、先行きへの慎重な見方が増していくものと思う。

≪振幅を増すグローバル波及≫

我慢の度を越えて噴出した感のある世界経済情勢であるが、最新の状況として次の通り。

◇収まらない世界同時株安、金融危機再燃の懸念も。(5月8日付け asahi.com)
→ギリシャの財政危機をきっかけにした欧州発の信用不安が、世界の金融市場を大きく揺さぶっている旨。7日の東京株式市場は、2日連続で大幅に値下がり、欧米、アジア市場でも株価の値下がりがとまらず、「世界同時株安」が収まらない旨。
前日、誤発注が原因ともみられる急落があったニューヨーク株式市場は、7日続落、米労働省が同日発表した4月の失業率は前月比0.2ポイント悪化の9.9%、金融市場の混乱が米国の景気回復に水をさす懸念も出ている旨。

半導体の世界にこれからどう影響してくるかはあるが、今時点は予想を上回った1-3月、第一四半期のグローバル販売高を受けて、今年は昨年に対して30%以上伸びるという見方が以下のように相次いで見られている。

◇Analysis: 'Blowout' Q1 has chip analysts thinking bigger(5月6日付け EE Times)
→第一四半期のbetter-than-expected数値を受けて、3人の市場調査アナリストが木曜6日、2010年半導体市場予測を上方修正の旨。

この3者の見方:

◇More than 30% industry revenue growth expected in 2010, iSuppli reports-This year is expected to mark an all-time annual high for global semiconductor revenue, with 2010 forecast to surpass the previous record of $274 billion set in 2007 by about 9%, according to the market research company.(5月6日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社、本日発。2010年半導体販売高予測に楽観論が復活、2009年の$229.9Bに対し30.6%増、$300.3Bと史上最高の売上げになると見る旨。そうであれば、2000年の36.7%増以来の30%超の伸びとなる旨。

◇Penn raises chip market growth forecast to 31%(5月6日付け EE Times)
→Future Horizons Ltd.(Sevenoaks, England)のfounder and principal analyst、Malcolm Penn氏、同社のInternational Electronics Forum(DRESDEN, Germany)での講演。2010年のグローバル半導体業界伸長予測を、この1月時点の22%増から、今回31%増に上方修正の旨。

◇Chip market headed for 30% growth year, says Cowan(5月6日付け EE Times)
→業界アナリスト、Mike Cowan氏が、米SIA発表の力強い2010年第一四半期グローバル販売高から、2010年の半導体市場伸長を30.3%増と予測、同氏はlinear regression analysis(LRA)モデルを使用の旨。

この旺盛な需要の基調が、ファウンドリー業界の設備投資にも波及して、TSMCに続きGlobalFoundriesも米国、ドイツを踏まえたcapacity拡張計画に意欲満々のようである。

◇GlobalFoundries hints at further expansion plans(5月7日付け EE Times)
→New York州にすでに$5Bウェーハfab建設を始めているGlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)が、ファウンドリー製造サービスへの力強い需要から利益が得られるようさらに拡張計画を発表する用意になっている様相の旨。

本当にこのままいってほしいというのが本音ではあるが、このプラス振幅が保てるかどうかはグローバル経済の先行き如何に間違いなくかかってくる。


≪市場実態PickUp≫

アップルの「iPad」の国内発売日が5月28日に決まった、と5月7日付けで発表されている。日本のほか、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイス、英国で同時発売とのことである。

【アップルiPad】

A4プロセッサなど詳細な中身の解析が以下で表されている。

◇Analysis gives first look inside Apple's A4 processor-Apple's iPad chip is a single-core ARM A8 made by Samsung(5月7日付け EE Times)
→UBM TechInsightsによるiPadおよびA4の解析結果。興味深い下記のデータ内容。
・Appleのアプリ・プロセッサの推移(2007年→2010年)
 ⇒http://i.cmpnet.com/eetimes/news/online/2010/05/chart1_050710.gif
・アプリ・プロセッサの比較一覧
 ⇒http://i.cmpnet.com/eetimes/news/online/2010/05/chart2_050710.gif
・A4プロセッサの詳細
 ⇒http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/Apple_A4_chart2.jpg

一方では、開発ソフトを巡って次の動きが見られる。

◇iPad開発めぐり米アップルに調査検討、米司法省など。(5月4日付け asahi.com)
→米アップルの携帯電話「iPhone」や新型端末「iPad」のアプリケーション(ソフト)をめぐり、米連邦取引委員会(FTC)と米司法省が同社を調査する検討に入った、と複数の米メディアが報じた旨。
米紙ウォールストリート・ジャーナルなどによると、アップルは最近、ソフト開発者に対し、アップルの開発ソフト以外を使うことや、iPhoneの技術データを第三者に提供することを禁止、当局はこうした行為が競争阻害に当たるかどうか調査する方針の旨。ただ、調査はまだ予備段階で、法的措置につながるかどうかは不明の旨。

インテルがスマートフォンで起死回生を図る動きと映るが、低電力設計の粋を凝らした新型MPUの登場である。

【インテルのスマートフォン対応】

◇米インテル、超小型MPUに新型投入。(5月6日付け 日経Web)
→米インテルが4日、小型で低消費電力のMPU、「アトム」の新型を発売、同社はパソコン用MPUでは圧倒的なシェアをもつものの、スマートフォンなど競合が激しい他の機器向けでは苦戦気味、新型MPUの投入で成長が続くスマートフォン市場などを攻略する旨。
新型アトムは待機時の消費電力を従来品の50分の1に削減するなど、省電力の回路設計を徹底している旨。

◇Intel shifts Atom focus from netbooks to smartphones, tablets with Moorestown(5月5日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intel社が火曜4日、最新のAtomチップセットを正式発表、"Moorestown"で知られる45-nmプラットフォーム、携帯機器で次のような大きな電力節減が得られる旨。
 スタンドバイ        10日
 audio playback        2日
 browsing & video電池寿命   4-5時間

旺盛な需要に押されたモノ不足の記事が、このところ続いている。

【モノ不足】

◇Shortages hit LCD driver IC market (5月5日付け EE Times)
→今年始め、アナログ、メモリ、ロジックなどICベンダーには非常に大きな需要が見え始めており、あるものの不足およびリードタイム延伸が煽られている旨。

特許改革を巡る米国での攻防の動き、以下の通り。新たな市場、ビジネスを生み出す種として勿論不可欠の一方で、扱い方の加減の難しさを感じている。

【特許改革】

◇Startups petition Congress on patent reform-Group rallies for one year grace period on applications(5月3日付け EE Times)
→100社のstartupグループが、特許申請について現在の1年の猶予期間を支持するよう、米国議会に請願書を送付、猶予期間を取り除くという特許改革に向かう動きが脅威となる旨。

◇Groups attack House version of patent reform (5月5日付け EE Times)
→2つの業界団体が、米国下院で上程されている特許改革法制案を非難攻撃の旨。

◇Patent office: Fees must go up to tackle backlogRecession forced budget, hiring cuts at beleaguered office(5月5日付け EE Times)
→米国Patent and Trademark Officeが、不況で強いられた予算削減からゆっくりと必死の手探り状態の旨。


≪グローバル雑学王−96≫

国家体制の根幹を成す教育とスポーツの制度、システムというものについて、

『北朝鮮を見る、聞く、歩く』(吉田 康彦 著:平凡社新書 500)…2009年12月15日 初版第1刷

より、以下の通り詳細&きめ細かい理解が得られる。体制堅持、国威発揚に向けたエリート育成の実態ということと思う。筆者が実際に足を踏み入れた体験、経験に基づいて書かれる部分がますます増えていくところがある。

※北朝鮮の最新動向ニュース:
北朝鮮メディア、金総書記の訪中を公式発表 (5月7日付け 日経Web)
…北朝鮮の朝鮮中央通信と朝鮮中央放送、平壌放送は7日午前、金正日総書記が3〜7日の日程で中国を非公式に訪問したと報じた。遼寧省大連と天津の訪問結果を伝えたが、北京訪問や5日に開いたとみられる中国との首脳会談には触れていない。総書記は7日午前11時現在、北朝鮮には戻っていない模様。


[第6章 教育とスポーツ
 −−−思想教育で体制堅持/エリート教育で国威発揚]

*思想・科学技術・体育が三本柱
・儒教の影響
 ⇒朝鮮半島は、日本以上に学歴・肩書・社会的地位で人間を判断する権威主義的人間観
・北朝鮮は、本人の実力以上に党の意向が優先
・義務教育「11年制」 → 就学前(幼稚園)    1年
                小学校        4年
                中学校(中高一貫教育) 6年 
・義務教育後 → 「高等専門学校」 2-3年制
            「単科大学」   3-4年制
            「総合大学」   4-6年制
・大学は全土に200校(平壌だけで50校)
・「研究院」(修士課程と博士課程)。「博士院」ということも。
・学費はすべて無料
・大学進学率は10%、大卒はまさにエリート。

*北朝鮮が崩壊しない最大の理由は「教育」
・著者が、過去10年唱えている北朝鮮が崩壊しない理由、7項目:
 (一) 唯一指導体制の徹底(思想教育)
 (二) 外敵(日帝・米帝)の存在(思想教育)
 (三) 儒教倫理の温存(個人崇拝の正当化)
 (四) 全土に張り巡らされた監視・密告システム
 (五) 外部情報の遮断と統制
 (六) 朝鮮半島周辺における適度の緊張状態(米朝・南北関係)
 (七) 崩壊させない思惑を持つ国の存在(中国・韓国)
・上記(一)、(二)、(三) →金日成神格化を理論化・正当化した思想教育こそ体制存続のための最重要項目
・科学技術と体育の重要性 →国威発揚につながるレベルの向上

*徹底した英才教育とエリート養成
・小学校を終えたら、飛び級で音楽大学進学の例 
 →そんな少年少女が平壌にゴロゴロ
・市郊外の「万景台(マンギョンデ)学生少年宮殿」 
 →小中学校で教師の推薦を得て派遣されてくる生徒たち
・大学以前のエリート養成のための専門教育機関も
 …「第一中学校」、「万景台革命学院」、「平壌外国語学院」、「金正日芸術学院」

*国を挙げて力を入れている英語とコンピュータ教育
・金日成の抗日闘争賛美、反日・反米思想の徹底 
 →建国以来、義務教育の柱
・1990年代から英語とコンピュータ教育を強化、両方とも小学校3年(8才)から必修
・「英語は世界語」という認識
・コンピュータ教育 
 →技術を全人民が習得、研究・開発の促進、双方の意味
・北朝鮮では、ごく限られたエリートを除いてインターネットにも外国の放送にもアクセス禁止。
・携帯電話は、2002年に一度導入後一旦禁止、2009年からエジプト資本「オラスコム」の協力で平壌市内で業務再開、急速に普及。
 →事前登録して許可を得た外交官、国際機関職員、外国人観光客以外は国際通話はできない。

*建国以前に創設された金日成総合大学
・金日成総合大学の創設 →建国2年前の1946年10月
・現在、3つの単科大学 →文学大学、法学大学、コンピュータ科学大学
     12学部→50学科  ⇒自然科学系 7学部
                社会科学系 5学部
・教官3000人、学生1万2000人が登録
・鎖国ゆえ外国人留学生は少ないが、それでも60人。中国からが半分。
・テレビでよく見る顔ぶれの出身校:
 金正日総書記: 金日成総合大学
 姜錫柱(カンソクジュ)第一外務次官: 国際関係大学フランス語科
 金桂官(キムゲガン)外務次官(六者協議首席代表): 国際関係大学フランス語科
 宋日昊(ソンイルホ)日朝国交正常化担当大使: 平壌師範大学日本語科  

*平壌外国語大学日本語学科訪問
・著者は、2007年に平壌外国語大学を二度目の訪問
 →日本語教材・図書160冊を携え、大学生3人を含む8人の訪朝団
・平壌外国語大学は1949年、ロシア語専修学校としてスタート。現在、22ヶ国語体制が確立。
・全体で4学部 …英語、中国語、ロシア語、民族語(その他言語)
・日本語学科、政治に翻弄された7年間
 →1999年、四番目の「学部」に昇格、その後7年で再び「学科」に格下げ

*2010年サッカー・ワールドカップに南北両チーム出場
・北朝鮮の人気スポーツ →サッカー、卓球、テコンドー、柔道
・2010年サッカー・ワールドカップ、南北同時出場は史上初の快挙

*水準高い女子柔道と女子マラソン
・朝鮮戦争直後から金日成主席がスポーツ振興を強化
・「共和国英雄」の二人 →桂順姫(ケースンヒ):アトランタ五輪で田村(現 谷)亮子に勝利
                鄭成玉(チョンソンオク):1999年マラソン世界選手権優勝
 →平壌の高級アパート、メルセデス・ベンツのご褒美

*国際政治に翻弄されるスポーツ
・1984年のロサンゼルス、1988年のソウル、それぞれ五輪ボイコット
・冷戦終結後はスポーツの南北交流も盛んに
・2008年の李明博政権発足、南北関係が悪化、「まずスポーツから統一を」のムードは後退。

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