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2月の世界半導体販売高/市場実態PickUp/グローバル雑学王−92

今回の経済不況による半導体販売高でみた底は昨年2月と見られ、1年後のこの2月の世界半導体販売高が米SIAより発表されている。前月、1月からは1.3%の僅かながら減少、一方前年同月比では56.2%増と、昨年時点の底の深さを改めて実感である。この2月は旧正月によるアジア市場の一服感があると思われ、引き続く緩やかながら堅調な回復基調および世界各国・地域での新技術、新製品の展開に注目である。

≪2月の世界半導体販売高≫

米SIAからの発表内容は、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○SIAが2月半導体販売高を発表…4月5日付けSIAプレスリリース

2月の世界半導体販売高が$22.0 billionで、1月の$22.3 billionから1.3%減少した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。
2009年2月の$14.1 billionからは56.2%の増加である。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「2月の販売高の数字は、新興経済圏でのelectronic製品の売上げの伸びが主に需要を牽引して、半導体販売高が引き続き回復していることを表わしている。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「半導体需要を主に引っ張る2つ、パソコンおよび携帯電話の販売数量は、2010年は10%台半ばまでの伸び率が今のところ見込まれている。2月の販売高の数字で前年同期比56%増には元気づくところがあるが、2009年の1月および2月は世界経済不況にあって半導体業界の最も底にあったことに気づくことが重要である。」

「グローバル経済回復が続くという勇気づけられる兆候があり、我々の去る11月時点の2010年予測を上回って伸びる可能性があることには依然控え目ながら楽観的に見ている。」とScalise氏は締め括った。

※2月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_1002.pdf
★★★↑↑↑↑↑

このSIA発表時点の数値でここ1年余りの世界半導体販売高を振り返ってみると、次のようになる。

 2008年12月  $17.4B
 2009年 1月  $15.3B
 2009年 2月  $14.2B
 2009年 3月  $14.7B
 2009年 4月  $15.6B
 2009年 5月  $16.5B
 2009年 6月  $17.2B
 2009年 7月  $18.2B
 2009年 8月  $19.1B
 2009年 9月  $20.1B
 2009年10月  $21.7B
 2009年11月  $22.6B
 2009年12月  $22.4B
 2010年 1月  $22.5B
 2010年 2月  $22.0B 

楽観派、慎重派、入り混じる市場分析筋の現状という所以であるが、これを反映してさらに以下の両方向の見方である。

◇February's poor chip sales: a blip or a sign?(4月7日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)によると、2月の実際のグローバル半導体販売高は$20.79Bで1月($21.85B)から4.9%減、ここ10年の平均で見ると、2月は1月から3.1%増であり、今年は非常に低調に見える旨。 

◇Chip market recovery still has legs, says analyst(4月5日付け EE Times)
→Benchmark Equity Research発。2009年後半から2010年に入っての急激な回復に続いて、半導体業界は現在から年末の間にさらに15-20%の数量増となる旨。2009年1月にサイクルの谷に達して以降、半導体数量は75%以上戻してきている旨。

実際の需要を如何につかむかは絶え間のない課題であるが、現時点は逼迫基調のメモリ価格の高水準の動きが目立って入ってくる。これも繰り返す動きではあるが、メモリメーカー間の駆け引きに否応なく注目せざるを得ない。

このような半導体業界の世界を見続けて、毎月販売高および市場の推移&コメントを発表している米SIAが、この年末には今までの長きにわたる西海岸からWashington D.C.に拠点を移すとのこと。同時にpresidentを務めるGeorge Scalise氏が退任するということで、以下のインタビュー記事が見られる。小生も就任当初に来日の同氏にお会いしており、この14年に及ぶ流れ、推移、そして思いを共有、考えさせられるところ多々である。

◇SIA president talks about transition, 14-year tenure-Valley's lack of wafer fabs makes move to Washington easier(4月6日付け EE Times)
→今年末にSilicon Valleyから事務所をWashington D.C.に移すSemiconductor Industry Association(SIA)、同時にここ14年務めるそのpresidentを辞める予定のGeorge Scalise氏へのインタビュー。
⇒この記事は下記参照:
/semi/showArticle.jhtml;jsessionid=AZ2K5WCDOAVYTQE1GHPCKHWATMY32JVN?articleID=224201582


≪市場実態PickUp≫

前回は半導体メーカーの2009年トップ10を示したが、同じGartner社から半導体装置メーカーの同トップ10である。今回の不況による落ち込みの大きさを物語っており、本年のそれを埋める以上の大きな戻しが各社から期待されるのは前回も述べた通りである。

【2009年半導体装置トップ10】

◇Final tally of ww semi manufacturing equipment spending: 46% drop in 2009, Gartner says-Major semiconductor manufacturing equipment segments were hit hard by capital spending cuts.(4月8日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社(Stamford, Conn.)発。2009年の世界半導体capital equipment投資は総計$16.6B、2008年比45.8%減、ウェーハfab装置は同47%減、back-end equipment(BEE)は同40%減少の旨。
世界半導体製造装置ベンダー売上げトップ10データ、次の通り
(単位:USM$):


2009
Rank
2008
Rank
ベンダー 2009
 売上げ
 2009
 シェア(%)
 2008
 売上げ
 2008-2009
 伸び率(%)
11Applied Materials2,535.215.14,088.1-38.0
23Tokyo Electron1,652.89.93,452.8-52.1
32ASML1,616.69.63,525.3-54.1
44KLA-Tencor939.55.61,770.9-46.9
55Lam Research863.15.11,502.0-42.5
66Nikon786.64.71,332.6-41.0
77Dainippon Screen635.23.8832.0-23.7
810ASM International547.83.3787.2-30.4
912Novellus Systems440.32.6703.2-37.4
108Teradyne396.52.4825.0-51.9
Others6,363.737.912,261.3-48.1
All Companies16,777.4100.031,080.5-46.0
OEM Elimination171.3422.2-59.4
Net Market Total16,606.130,658.3-45.8

(注)2009年には買収による売上げを含む。2008年データは買収前のベース。
[Source: Gartner (April 2010)]

発表されたばかりのApple iPad、ほぼ時を同じくするかのような分解分析の結果が次のように発表されている。前回触れたように、部品に台湾や韓国が出てきても、日本製という声が届かない状況がある。また、Wi-Ficonnectionに絡む問題、特許侵害提訴の対象にiPad追加、といった早速の取り沙汰を呼んでいる。

【iPad分解分析】

◇Chipworks Inside Angle: iPad Day Arrives!(4月3日付け Semiconductor International)
→ChipworksによるApple iPadの分解分析、次の注目部品:
 A4 CPU
 Samsung 64GビットNANDフラッシュ
 Broadcom duo parts (BCM 5973 and 5974)
 TI CD3240A
 NXP L0614 →A4に隣接、注目の役割

◇Inside the iPad: Samsung, Broadcom snag multiple wins-Report shows 64-bit memory path, three touch-screen chips(4月4日付け EE Times)
→米UBM TechInsights社の分解解析レポート。64ビット幅のメモリ・バスを採用したプロセッサ「Apple A4」。韓国Samsung Electronics社、米Broadcom社などからの半導体。

Mooreの法則の有効性がさらに延長されるとともに、いつかCPUが要らなくなるかも、という革命的な“memristor”について、HP Labsからの発表である。

【CPU不要?】

◇H.P. Sees a Revolution in Memory Chip(4月7日付け The New York Times)

◇HP Labs: "memristor" could allow computation on memory chips-HP says the memristor has more capabilities than previously thought.(4月9日付け Electronics Design, Strategy, News)
→HPの中研部門、HP Labsが、“memristor”、即ちresistor with memoryの進展詳細をプレゼン、コンピュータシステムを設計する方法を変え、データの爆発的増大処理を改善する可能性の旨。

◇End of the CPU? HP demos configurable memristor-'Stateful logic' paradigm could extend Moore's Law, HP says(4月9日付け EE Times)
→ロジック動作とメモリストレージの間をダイナミックに変えられるアーキテクチャー、"stateful logic"により、memristorsが、Moore則をInternational Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)での終わり、2020年ごろより先延ばしする候補になる旨。

米国そして日本が、今後取り組むべき新分野の一つ、smart gridについて、それぞれ具体的な始動である。

【smart grid取り組み】

◇Industry asks Obama to plug consumers into smart grid-Letter calls for regulations, incentives to drive demand-response apps(4月7日付け EE Times)
→約50の会社および機関から米国大統領に宛てた書簡。オバマ政権が、smart grid技術の消費者利用を掻き立てるよう、新しい法制化、インセンティブおよび教育プログラムを作り出す必要の旨。

◇次世代送電網(スマートグリッド)、全国5000世帯で実証実験
トヨタ、新日鉄など参加、5年で1000億円(4月7日付け 日経Web)
→次世代送電網(スマートグリッド)の大規模な実証実験が、全国4ヶ所(横浜市、愛知県豊田市、京都府、北九州市)で今年度から始まる旨。合計約5000世帯の一般家庭を送電網で結び、留守中や深夜帯の節電、太陽光を含む再生可能エネルギーの活用などを推進する旨。

◇U.S. awards $100M in smart grid training grants(4月8日付け EE Times)
→米国エネルギー省が、smart grid技術における30,000 workers規模の教育訓練に、計約$100Mの補助金を出す旨。

Applied Materials社のSunFab solar部門など厳しい逆風に曝されているsolar業界であるが、来年にもsolarパワーで飛行機世界一周という夢実現に向けた試験飛行の話題である。

【Solar世界旅行】

◇Solar-powered aircraft completes maiden voyage(4月8日付け EE Times)
→solar-powered試作飛行機が水曜7日、スイス上空を1時間半舞う処女飛行を行い、fuel-less, carbon-neutral飛行時代の到来を告げている旨。
Solar Impulse SA(Lausanne, Switzerland)が、2011年あるいは2012年にphotonsのみによる世界一周旅行を計画している旨。両翼に計1万2000枚の太陽電池パネルが組み込まれている旨。写真、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/news/online/2010/04/solar.jpg


≪グローバル雑学王−92≫

キムチはじめ韓国を通してしっかり馴染んで日々の食卓に定着したのはここ10年の小生の食文化であるが、北朝鮮の方はどうかということで冷麺はじめ認識を新たにした後、話題は一変、今回は映画について。

『北朝鮮を見る、聞く、歩く』(吉田 康彦 著:平凡社新書 500)…2009年12月15日 初版第1刷

より、国を引っ張るツールとしてのここまでかと感じるほどのその大きなプレゼンス、取り組む力の入れ具合が以下伝わってくる。

※北朝鮮に関係するニュースは日々事欠かない。現下では、金正日総書記の家庭教師を務め、金日成総合大学総長、最高人民会議(国会)議長、朝鮮労働党中央委員会書記などを歴任した総書記側近の一人、黄長ヨプ[火へんに華](ファン・ジャンヨプ)氏が、13年ぶりに来日している。同氏は、1997年1月に来日した直後、北京の韓国大使館に亡命を申請、金正日政権打倒を訴え、多くの脱北者と交流があるとのこと。


[第2章 映画は最大・最強の大衆芸術
−−−プロパガンダと芸術性を両立させた金正日]

*歴史と伝統を誇る映画王国
・2009年4月の最高人民会議(国会)にて、「映画委員会」の設立が決定
・北朝鮮は本来、映画王国 
 …一時は年間100本以上の作品を制作
 …現在はテレビの普及にともない年間40本前後
・建国の父・金日成が人民教化のためにまず取りかかったのが映画づくり
・従来は政治性の強い啓蒙作品、最近は恋愛劇やホームドラマも、国外でも上映

*時代区分でわかる映画の歴史
・北朝鮮の芸術 →歴史的に次のように分類
 1)建国の時期   …祖国解放(1945年8月)〜朝鮮戦争開戦(1950年6月)
 2)祖国解放戦争の時期      …朝鮮戦争開戦から終結(1953年7月)
 3)戦後復興から社会主義基礎建設の時期     …1953年8月〜1960年
 4)社会主義の勝利謳歌の時期          …1961年から1966年
 5)第一次文芸革命(主体思想確立)の時期     …1967年から1974年
 6)主体思想全盛期          …1975年から冷戦終結(1992年)
 7)第二次文芸革命(苦難の行軍)の時期      …1993年から1997年
 8)先軍芸術の時期  …「先軍政治」がスローガンとなった1998年以降
・「写実本位の素朴なリアリズム」 →1)、2)
 「社会主義リアリズム」     →3)、4)
 「主体思想リアリズム」     →5)、6)、7)
 「先軍思想リアリズム」     →8)
□世にも稀な社会主義"世襲"国家
 …「主体思想」と称する独自のイデオロギー、個人崇拝色
 …核・ミサイルを抑止力とする軍事優先の「先軍政治」
 …芸術家肌の金正日指導の下、映画は体制固めと個人崇拝浸透のための強力な武器に

*映画史を一変させた金正日
・金正日は、1980年の党大会で正式に指名以来、北朝鮮映画は黄金時代へ
・直接指導して制作、初期の革命映画の傑作の1つが『花を売る乙女』(1972年)
 …主演女優・洪英姫(ホンヨンヒ)は一躍国民的アイドル、旧1ウオン札の裏面に登場

*ジェンキンスさんも出演した朝鮮戦争の一大叙事詩
・1970年後半から1980年代→大河ドラマ風の大作
    傑作の1つ:『名もなき英雄たち』(全20作:1978-1981年)
         …抗米救国闘争に献身する人民の一大叙事詩
         →ジェンキンス氏が米軍将校の脇役で出演
・この時期の作品で最も評価が高い長編映画→『朝鮮の星』
 …金日成の抗日闘争の歩みをドラマ化。空前絶後の上映記録。

*話題の怪獣映画『プルガサリ』
・"プルガサリ" …朝鮮の伝説上の存在。「鉄を食い、邪気を払う奇怪な形相の怪物」
・特撮で制作。北朝鮮初の怪獣映画。
・1985年、金正日は韓国人の監督・申相玉(シンサンオク)に制作を依頼。日本からも東宝特撮チームのメンバーが協力。

*日朝合作映画『高麗女人剣士』も好評
・映画制作における日朝協力の実績は他にも
→1995年、合作映画『高麗女人剣士』
→2008年の平壌国際映画祭 …山田洋次監督も訪朝
□北朝鮮の外交関係
 …世界の162カ国と外交関係
 …主要国で国交がないのは、米国、日本、フランスくらい
 …EUと北朝鮮は外交関係、平壌とブリュッセルにはそれぞれの代表部

*安上がりで水準の高いアニメ映画も花盛り
・アニメ映画づくりも盛んで、輸出産業の花形
・1980年末から1990年代にかけては、比較的イデオロギー色のないアニメ・シリーズが東南アジア諸国に輸出、外貨獲得に一役
・2005年には初の南北共同制作のアニメ映画『王妃沈清』が韓国で公開、好評を博す
 …原画制作は100%北朝鮮
・労賃が安く、手先が器用な北朝鮮のアニメ業界

*ハリウッド顔負けの映画村オープンセットと豪華な映画館
・最大規模を誇る「朝鮮芸術映画撮影所」、俗に「映画村」
 …正面には『花を売る乙女』の像
 …オープンセットが仮設でなく、本物の建物が並んでいるのが特徴
・平壌市内には大小取り混ぜて映画館が100軒以上(北朝鮮全土では4500軒)
 …最古で最大、最も豪華→「大同門映画館」

*カンヌ映画祭で人気を集めた『ある女学生の日記』
・ホームドラマあるいはファミリー映画ともいうべき『ある女学生の日記』(2006年)が欧米で静かなブーム
 …19才の可憐な女優・朴美香(パクミヒャン)の初々しさ
 →在日コリアンの若者たちのアイドル
・2009年7月、「北朝鮮映画週間」(横浜で開催)で本邦初公開

*痛快なアクション映画『平壌ナルパラム』
・「ナルパラム」とは風のようにすばやく動くさま:疾風怒濤の意
 …テコンドーも、韓国ではなく北朝鮮の平壌がルーツであることを強調した映画でも

*脚本家・監督・俳優はすべて文化省所属の公務員
・国家(党)主導の若手養成機関が機能
・平壌演劇映画大学…映画・演劇・俳優・テレビ・技術の5学部
・市内のチャンジョン中学校は、未来の俳優のタマゴ養成のエリート校

*最新作は日本人女性学者が登場する国際政治ドラマ
・2009年秋現在の最新作『わたしの見た国』第二・三部
 …国際政治専攻の東大教授のヒロインが第三者の立場で解説する設定
  −同時進行のドキュメント
   第二部:ブッシュ政権登場後の米朝関係
   第三部:2009年の「人工衛星」打ち上げ成功で「強盛大国」への道

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