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それぞれの4月のスタート/市場実態PickUp/グローバル雑学王−91

ちょうど桜満開とタイミングが重なった今年の東京地方の4月のスタートである。半導体・デバイス、エレクトロニクス業界関係も、会社統合、新分野の新製品発売など、新しい挑戦、開拓の始まりの空気に満ちている。昨年後半からの予想以上の市場の盛り返しぶりが各地、各所から引き続き伝えられてきており、それぞれの実効的な満開にぜひともつながるよう祈る思いである。

≪それぞれの4月のスタート≫

Renesas Electronics社のいよいよスタート、出発である。小生の出身会社もこの一つにまとまったということで、昔仲間、昔馴染みの方々から様々な思い、感慨が伝わってくる。総合電機、エレクトロニクスメーカーの中の半導体部門ということでは、国内各社みんなもともと軌を一つにしており、グローバルな協調と競争の渦中にはまってしまっては、それぞれに専業化の道を辿る宿命ということかもしれないが、各世代の方々から寄せられる様々なコメントの思いを共有させていただいているところである。

◇Enlarged Renesas climbs the chip vendor ranks(4月1日付け EE Times)
→NEC Electronics社とRenesas Technology社が合併、本日発足の世界第3位乃至第4位の半導体メーカー、Renesas Electronics社について。

◇Renesas Electronics America begins operations-The wholly owned subsidiary of Renesas Electronics Corp. is taking the system solutions approach.(4月1日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Renesas Electronics America社(Santa Clara, CA)が、本日付けで新たに発足したRenesas Electronics社の完全子会社として、本日営業開始の旨。

ほかにも新たな区切り、スタートを見出している。当初の"Rambusメモリ"仕様開拓の頃に小生もコンタクトしたことがあるRambus社が早くも発足20年とのこと。同じ10年区切りでも、"dog decade"と表したくなるくらいのこの20年の過ぎ方の早さを感じている。

◇Still Rambus, but less rambunctious (3月29日付け EE Times)
→先週(3月22日)20周年を迎えたRambusのアナリストmeeting(NEW YORK)にて。

会社更生法(Chapter 11)を申請して再建を図っているSpansion社が、関門クリアに大きく踏み出したとのこと。改めて咲く花に期待である。

◇Spansion claims progress in emergence from Chapter 11(4月2日付け EE Times)
→Spansion社(Sunnyvale, Calif.)の再建計画について、米Bankruptcy Courtがその確認に向けて大きく前進する決定を出した旨。

前回から再出引用の次の内容であるが、高価になり過ぎていく従来の延長線上で最も面白い最先端半導体技術の実状である。問題は投資にペイする市場が伴なうかどうか、電子機器設計者、そして末端の個人消費者までよくその心をつかんで製品企画に盛り込めるか如何にかかることと思う。我が国内には世界に名だたるそのようなユーザに数多く恵まれており、もっと連携を組んで世界に打って出る商品づくりをというますます強くなる思いである。

◇Chip Companies Must Dig Deep for 450 mm(3月24日付け Semiconductor International)
→今週行われている2010 SPCC(Austin)にて、Sematech(Austin, Texas and Albany, N.Y.)の新しいCEO、Dan Armbrust氏の講演。450-mm装置開発コストには半導体最大手の助けが必要、"そのロードマップはますます高価になっている"旨。

そういった商品ということでは、この4月に大きな世界の注目を集めているのがアップル社の「iPad」である。以下の現下の記事の流れから、期待とともに我が日本勢の課題が浮き彫りになってくる。

◇Will iPad be a success or failure? (4月2日付け EE Times)
→iSuppli社が上手くいくと見るiPad販売予測:
 2010年    2011年    2012年
 7.1M台    14.4M台    20.1M台

◇iPad sales to triple by 2012, conservatively, iSuppli says-Sales this year are likely to be driven by early adopters and others attracted to the iPad's unique touch-screen-based user interface.(4月2日付け Electronics Design, Strategy, News)

◇iPadがやってくる、日の丸部品、蚊帳の外。(4月3日付け 日経Web)
→米アップルが3日、新型の多機能携帯端末「iPad」を米国で販売する旨。
「携帯とパソコンの間」に生まれる新市場、このiPadに採用された電子部品を分析すると、日本製の影があまりにも薄い旨。供給力と価格の両方で高い次元の競争力が求められる年間$1.2Bの商談、日本の電子部品産業は蚊帳の外に置かれた格好の旨。

◇米アップル「iPad」全米で発売へ、販売控え徹夜組も。(4月3日付け 日経Web)
→米東部時間3日午前9時(日本時間午後10時)発売、ニューヨークなどの一部の販売店では前夜からの徹夜組を含め多くのアップルファンが詰めかけている旨。16Gバイト機種で499ドルと「ネットブック」並みの価格、月末には第3世代携帯通信網に対応した上位機種が登場するほか、日本や英国など9ヶ国でも発売する旨。

◇iPad、米でまもなく発売、書籍にも「革命」起こすか。(4月3日付け asahi.com)
→米アップルは3日午前(日本時間同日夜)、米国で携帯端末「iPad」を発売、インターネットで購入した書籍、新聞、動画などを手軽に楽しめる旨。音楽の売り方で「革命」を起こしたアップルだけに、書籍販売にも大きな影響を与えるとみられる旨。日本発売は4月後半の予定。

それぞれのスタート、そして今後に注目である。


≪市場実態PickUp≫

昨年の半導体トップ10が、老舗のDataquest、現在はGartner社から、次の通り発表されている。すでに速報や他社からもいくつかあって、改めて確認ということになるが、業界各社の分離、統合がどのように全体模様を変えていくか、目が離せないところである。

【2009年半導体売上げトップ10】

◇Global semi revenue falls for two consecutive years, Gartner reports-Total semiconductor revenue on a worldwide basis reached $228.4 billion in 2009, down $26.8 billion, or 10.5%, from 2008, Gartner said.(3月29日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gartner社(Stamford, Conn.)、本日発。初めてのこと、グローバル半導体業界が2008年、2009年と2年連続で売上げ減少、しかし、2009年後半は予想以上の結果、力強い2010年のお膳立てとなっている旨。
2009年半導体売上げトップ10ベンダー、次の通り(単位:USM$)。


2009 2008 ベンダー 2008年売上げ 2009年売上げ 2008-2009伸び率(%) 2009年シェア(%)
 ランク 
11 Intel 34,814 33,253 -4.5 14.6
22 Samsung Electronics 17,391 17,686 1.7 7.7
33 Toshiba 10,601 9,604 -9.4 4.2
44 Texas Instruments 10,593 9,142 -13.7 4.0
55 STMicroelectronics 10,270 8,510 -17.1  3.7
68 Qualcomm 6,477 6,409 -1.0 2.8
79 Hynix Semiconductor 6,010 6,035 0.4 2.6
87 Renesas Technology 7,081 5,670 -19.9 2.5
911 Advanced Micro Devices 5,298 5,157 -2.7 2.3
106 Infineon Technologies (incl. Qimonda) 8,224 4,682 -43.1 2.1
Others 138,375 122,223 -11.7 53.5
Total Market 255,134 228,371 -10.5  100.0
[Source: Gartner (March 2010)]

早速ながら、NANDフラッシュメモリの昨年ランキングについては新しい見方が出てきている。

◇Surprise vendor lands on NAND rankings (4月1日付け EE Times)
→Web-Feet Research発。2009年のNANDフラッシュベンダーランキング、下記参照。2009年フラッシュメモリ市場全体は$20.8B、2008年比2%増。他の調査会社データと違って、SanDiskが第3位に登場、東芝と分けて計算している旨。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100331_webfeet_nand_rev_2009.jpg

昨年非常に大きな落ち込みの打撃を受けた製造装置業界であるが、その分今年については非常に大きな期待表明となっている。

【大きな期待】

◇Novellus CEO: New (and old) IC growth drivers(3月30日付け EE Times)
→Novellus Systems社のchairman, president and chief executive、Rick Hill氏、同社headquarters(SAN JOSE, Calif.)でのプレゼン。1990年代からの同じdynamicsの多くが引っ張って、半導体業界は3-4年の新しい健全な成長サイクルに向かう旨。2009年のおぞましい不況を経て、2010年のIC業界は13-15%伸びる見込みの一方、半導体装置市場は非常に大きく80%増大すると見る旨。

◇Applied raises forecast, sees upturn (3月30日付け EE Times)
→現在のIC盛り返しを受けて、Applied Materials社が2010年度net販売高見込みを、前回の50%以上増から、今回60%以上増に上方修正の旨。

米国の競争力停滞の問題が米SIAで取り上げられて久しいが、米国の産業界全体の問題として拡大している空気を感じている。我が国とて他人事ではなし、新たな魅力ある商品を生み出す土壌の育成にもっと大きなモチベーションがかからなければ、ということと思う。

【米国からのR&Dシフト】

◇R&D is heading to China(3月30日付け Electronics Design, Strategy, News:ブログ記事)
→New York Timesに"米国のR&Dが如何に中国に動いているか"という記事。
ある半導体メーカーのRFアプリ・エンジニアからは、セルラ基地局会社の大半は中国にあると聞いたばかり、米国ですべて設計されていると思っていたから驚きの旨。

◇Join the Conversation: Is Silicon Valley losing its mojo?-Is this center of great jobs on the decline as an employer?(3月31日付け EE Times:意見募集)
→Silicon Valley job marketの状況をどう見ているか?

◇Is the US becoming a third-world country of innovation?(3月31日付け TMWorld.com)
→The Economist主催のconferenceでのパネル討議にて。「イノベーションとなると、アメリカは第三世界の国になりつつある?」という問いかけが話し合われた旨。

iPad、smartphone、・・・、何がどう違うのか、Digital Divideをますます痛感してくる我が身ではあるが、DRAMへの期待の方は堅調さが伺えている。

【smartphonesでのDRAMs】

◇Smartphones: A new calling for DRAMs? (4月1日付け EE Times)
→iSuppli社発。DRAMの新市場として頭角を現しているsmartphones、その平均使用容量は次の見方:
 2009年   2010年   2011年   2012年   2013年   2014年
 123-MB   212-MB   353-MB   562-MB   862-MB   1.3-GB


≪グローバル雑学王−91≫

8回にわたってアメリカの最新状況に触れた後は、距離的には近くて、それでいて非常に遠い国、北朝鮮について、次の本を通して近づいてみることにする。欧米での駐在経験をもち、北朝鮮にも何度も足を運んでいるという著者の経歴である。

『北朝鮮を見る、聞く、歩く』(吉田 康彦 著:平凡社新書 500)…2009年12月15日 初版第1刷

国際的、政治的な大問題については日夜ニュースで絶え間なく扱われているが、ここではそのような色合いの内容には距離を置いて、純然とその文化、芸術、衣食住に注目してみるスタンスである。
以下、□印以降には客観的な事実、情勢が示してある。


[まえがき]
・本書の狙い: 日本ではほとんど知られていない北朝鮮の文化・芸術・市民生活を紹介
          北朝鮮という国の過去と現在
          日朝関係の未来を考えよう
・本書を読みながら一緒に"訪問"してみようでは
・北朝鮮の文化の諸相を包括的に紹介した日本語の文献が皆無
・韓国との共通性は多いが、それでも南北には大差 …キムチの味も大違い
・2012年は東アジアの大転換期に
 −「強盛大国の大門が開く年」(北朝鮮)
 −2012年11月の再選を目指すオバマ米国大統領
 −2012年12月に韓国の次期大統領を選ぶ選挙
 −中国の胡錦濤主席が2012年に引退
・本書では、拉致・核・ミサイル問題は最小限の情報と事実関係の記述にとどめる。
□北朝鮮では1949年以来漢字を全面廃止
□北朝鮮では、外貨は米ドル、日本円、中国「元」も通用、外国人のホテル代・商品価格などはすべて「ユーロ」表示

[第1章 北朝鮮の食文化−−−犬肉料理と薄味キムチと冷麺と]

*冷麺以外は南北共通
・朝鮮半島の住民は本来、単一民族
 10世紀初頭(918年) 最初の統一国家、高麗王朝が出現
 14世紀(1392年)   李成桂が朝鮮王朝(李朝)を興す
 1948年       南北に分断、相対立する政権が成立
           →その後3年間の朝鮮戦争を経て、分断が固定化
・朝鮮半島分断の経緯
 −ソ連→ハバロフスクに駐留していた朝鮮人部隊の大隊長、金日成(キムイルソン)をかついで平壌に凱旋
 −米国→ハワイに亡命していた反共政治家・李承晩(イスンマン)を帰国させて南半分だけで大統領選挙を実施
・冷麺だけは北朝鮮が本場
・犬肉料理 …北朝鮮ではどこででも、おおっぴらに食べられる

*肉食はチンギス・ハーン以来 焼肉は日本からの逆輸入
・モンゴル勢が退却したあと朝鮮半島に残したものが焼肉、いわゆるバーベキューの習慣
・朝鮮半島には「食は開城(ケソン)にあり」という諺 …開城こそがグルメの中心
・今日のような形での焼肉文化
→「在日」コリアンが日本で広め、祖国に逆輸出、これが普及した

*北ではアヒルとガチョウの焼肉が主役
・庶民に人気、安価で栄養価の高いアヒルとガチョウの肉
・平壌には100種類以上の多彩なアヒル料理を供する専門のレストラン「オリコギ食堂」

*日本では味わえぬ犬肉料理
・ソウルの街を一歩奥に入ると、路地裏に犬肉料理を食べさせる店
・北朝鮮で「甘肉(タンコギ)食堂」は犬肉料理の店
・万病に効き、健康を増進し精がつく
・犬肉料理の典型は「犬鍋」、北では栗ご飯と一緒に食べるのが慣わし

*南北で作り方と味に違いのあるキムチ
・キムチ →南北共通の国民食
・「南のキムチは塩辛く、北のキムチは水気が多い。日本のはその中間」
→金正日総書記のキムチ談義から
・進むキムチの国際化 →世界の35ヶ国以上で賞味

*冷麺こそ北朝鮮の誇り
・2種類: 蕎麦粉主体の黒ずんだ「平壌冷麺」
      →水冷麺(ムルレンミョン)とも
      澱粉が主成分で白っぽい「咸興(ハムフン)冷麺」
      →別名 混ぜ冷麺(ピビムネンミョン)
・日本は「箸の文化」に対し、朝鮮半島は「匙の文化」
…冷麺だけは直接口をどんぶりにつけて汁をすすってもよいとされる

*「平壌冷麺」から「盛岡冷麺」誕生へ
・日本での冷麺普及 
→咸興出身の青木 輝人(朝鮮名 楊龍哲[ヤンリョンチョル])氏
 …盛岡で「食堂園」を開業 →現在も営業
→日本風の「平壌冷麺」を工夫 …全国の冷麺ファンの人気
・現在、人口30万の盛岡市内に冷麺を供する店が30軒近くも
□外国人旅行者の立入禁止地域
 …北朝鮮では住民に移動の自由はなく、外国人が訪問できるのも以下など観光地と主要都市に限られる。
→首都 平壌、開城、元山(ウオンサン)、沙里院(サリオン)、妙香山(ミャンヒャンサン)、南浦(ナンポ)、新義州(シンウィジュ)、羅先(ラソン) 

*故金大中大統領が絶賛した「平壌温飯」と「ボラのスープ」
・「平壌温飯(オンパン)」…中華どんぶりのようなもの
・大同江(テドンガン)で獲れるボラのスープも平壌の名物料理

*マツタケをめぐる秘話
・朝鮮半島でもキノコの王様はマツタケ
・北朝鮮産のマツタケは割安 →2006年以来の輸入全面禁止で姿を消す

*イタリア料理、ファーストフード店、インスタントラーメン店の登場
・平壌の都心部にイタリア料理レストランが、2005年にオープン
・ハンバーガーが2009年6月、ついに平壌にも上陸…「三台星(サムデソン)清涼飲料店」
・平壌で2年前から、韓国資本、ケンタッキーフライドチキン風の鶏肉料理出前店「楽園鶏肉専門食堂」がオープン
→北朝鮮では初めての「宅配」が特に好評とのこと
・相前後して、インスタント(カップ)ラーメン店がオープン
・改革開放はまず食文化から

*「お茶」を飲まない朝鮮民族
・朝鮮民族は、緑茶もウーロン茶も飲まない。北朝鮮ではコーヒーはぜいたく品。
・お茶の代わり →白湯、ニンジン茶、ユズ茶、シソ茶、生姜茶、はちみつ茶
 …「飲み物」(ソフトドリンク)という意
・「お茶」の樹 →朝鮮半島でも栽培は韓国南部に限られる

*種類豊富な北朝鮮の酒
・一般市民は国産のビールか焼酎が普通の飲み物 
 …最も人気→「大同江ビール」:「平壌焼酎」
・2009年5月の第二回核実験以降、日朝貿易は全面禁止
→実際は、日本製品は何でも中国経由で輸入
・国産ワイン「トルチュッスル」→外国の賓客が賞賛

*北朝鮮の食糧事情
・北朝鮮の食糧危機は深刻 …穀物生産量が需要に追いつかない
→中国はじめ外国の援助頼り
・国際社会の支援の反応は急速に低下 →地方の住民にしわ寄せがいく状況が続く
□金日成神格化と無謬性(絶対に誤りはないという大前提)
 …北朝鮮の食糧危機は慢性的、構造的
 …根本原因は南北分断、同一民族が分断、ライバル国家が並立・対峙していることの不自然さ

※朝鮮半島の歴史、そして今に至る推移というものが端的に分かるとともに、食べ物の由来、我が国との縁など興味深いそれぞれの下りと思う。読み進める興味が先にいってコメントがたまらない風情があるが、韓国の文化、芸術などいろいろな切り口のつながりの経緯、実態が一層鮮明になってくるところがある。

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