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市場の報いあれこれ/市場実態PickUp/グローバル雑学王−89

電子機器市場、あるいはエレクトロニクス市場は、最先端とvolumeというゾーン分け、そして企業向けと個人消費者という仕向け先で、大きく4つの象限でとらえることが多いこの頃という感じ方である。さらには先進国と新興国という分け方が浮かんでくるが、グローバル経済危機を経て回復基調の途上と言われる現時点であれこれ考えさせられる市場の反応である。

≪市場の報いあれこれ≫

最先端技術を開拓して市場化するには、様々なテスト、試練をクリアする必要があり、企業で賄える範囲はよいが、政府はじめ公的支援が多々求められる現時点と思う。このような最新技術が広範囲に及ぶ電子機器に入っていって、特に末端消費者の財布のひもを緩められるようになると、それこそ爆発的な市場規模になっていく。このサイクルが、サプライチェーンを伴なって健全に機能していけば、次の世代へと引き継ぐ努力を呼びこんで、市場拡大に弾みがかかっていく。以上、現在の市場発展シナリオの1つと考えている。

前半に経済危機による最大の落ち込みを経験し、後半に少しずつ盛り返していった昨年、2009年の半導体の地域別売上げはどうであったか?次の通り表わされている。

◇Asia-Pacific chip revenues growth defies downturn in 2009, says iSuppli(3月18日付け DIGITIMES)
 iSuppli: 2009年 半導体地域別売上げ (US$M)

 2008  2009  地域  2008  2009  %変化  全体比率 
11 Asia / Pacific 126,200 119,511-5.3% 52.0%
22 Japan 55,426 43,957 -20.7% 19.1%
33 Americas 39,283 35,167 -10.5% 15.3%
44 Europe / EMEA 39,328 31,282 -20.5% 13.6%
 総計 260,237 229,917 -11.7% 100.0%

[Source: iSuppli, compiled by Digitimes, March 2010]

不況をものともしないAsia-Pacific、結構善戦しているAmericas、大きい落ち込みの日本、欧州という結果の構図が浮かび上がってくる。Asia-Pacific地域に本社を構える半導体メーカーの売上げは、むしろプラスになっているという以下の見方がある。

◇Asia-based semi vendors repel 2009 downturn-While the rest of the global semiconductor industry suffered a sharp downturn in 2009, Asia-Pacific-based chipmakers actually grew, albeit modestly, by 2.3%, according to market researchers at iSuppli Corp.(3月17日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社による半導体売上げの見方:
                              2008年   2009年
Asia-Pacific地域に本社のある半導体メーカー   $43.5B   $44.5B
の売上げ合計                       2.3%増
グローバル半導体売上げ               $260.2B   $229.9B
                              11.7%減

中国はじめアジア市場の活況、回復ぶりが色濃く反映されていると思うが、市場はどんなものを選択するかということで注目するのが以下の内容である。

◇Even with income decline, consumers boost electronics spending in 2009-Global sales of hot electronic products increased last year, even though consumers experienced declines in income.(3月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→iSuppli社発。2009年のsmart phonesのグローバル出荷売上げは9.6%増、LCD-TVsは14%増、netbook PCsとなると90%増、米国政府データによると、第二次世界大戦後初めてのこと、2009年の世界capita incomeは2%減の$10,500に落ち込んでいるにも拘らずの旨。グラフ表示、下記参照。
http://www.edn.com/articles/images/ENEWS/20100319/chart_6723511.jpg

家計の収入は減少しようと、安ければもちろんよいが目新しくて使い勝手が素晴らしいものは大きく伸びていることを示していると思う。高機能のsmartphoneは、アジア需要が引っ張るという記事も見られる。

◇Asia to take 39% of smartphone market in 2015, says IMS(3月17日付け EE Times)
→IMS Research Ltd.(Wellingborough, England)発。アジアのsmartphone年間出荷が2015年までに4倍になって、アジアが2015年には39%を占めると見る旨。

GPS付き携帯も伸びの予測に驚かされる。

◇GPS-enabled GSM/WCMDA handset shipments jumped 92% in 2009(3月19日付け EE Times)
→Berg Insight AB(Gothenburg, Sweden)発。2009年のGPS-enabled GSM/WCDMA handsets出荷が92%増の150M台に、続けて38.7%のcompound annual growth rate(CAGR)で伸びて、2014年には770M台に達すると見る旨。

このような電子機器に占める半導体の量はどうなるか?これまでと同じ感覚の積極的な以下の読みである。

◇McClean: Semi Content Heading Up to 27%-Speaking at an IMAPS meeting, IC Insights President Bill McClean said the industry is at nearly full capacity utilization. The system semiconductor content also is headed up, compared with previous decades, McClean said. IC Insights expects a 50% increase in capex spending this year.(3月15日付け Semiconductor International)
→International Microelectronics and Packaging Society(IMAPS)のGlobal Business Council meeting(Fort McDowell, Arizona)にて、IC Insights(Scottsdale, Ariz.)のPresident、Bill McClean氏。
electronicシステムの半導体使用内訳が、1990年代の〜18%、2000-2010年の〜21%に対し、2010-2014年では〜27%に増大、smart phonesがフラッシュメモリの4倍の量を使用、高性能シリコンを擁するモバイルシステムに向かい流れの一環となる旨。図面データ、下記参照。
・向こう4年にわたって半導体使用量が急激に増大へ(Source:IC Insights)
http://www.semiconductor.net/photo/258/258368-IC_Insights_predicts_semiconductor_content_will_increase_sharply_over_the_next_four_years_Source_IC_Insights_.jpg

停滞感が目立つ日本市場で、今後どう取り組んでいけばよいのか、最近どこでも話題になってくる。市場の報いをよく味わって判断するに如かずと思うが、必然の流れということか、先端技術を取り込んだ機器の新興国を含めた積極的な仕向けというものを次の動きから感じている。

◇パナソニック、新興国でも3Dテレビ、6月から30カ国以上。(3月20日付け 産経)
→パナソニックが年内に3D(3次元)対応テレビをブラジル、ロシアなど新興国30カ国以上で発売することが19日、分かった旨。今年は日米欧など先進国を中心に販売する計画だったが、3D映画「アバター」のヒットなどで3Dへの関心が予想以上に高まったことを受け、新興国を含め世界の主要各国で一気に販売に乗り出すことを決めた旨。
発売する国は、BRICsを中心に、中東やアフリカなど、6月から順次発売、年内に30カ国以上で展開、画面サイズは、先進国と同様に50〜60型台の大画面プラズマテレビを予定している旨。
3Dのテレビ放送の予定がない国が大半のため、3Dに対応したブルーレイ・ディスク(BD)プレーヤーを同時発売、BDで3Dを楽しめるようにする旨。

市場の報いに敏感に反応して、その国・地域ごとに仕向けたマーケティング活動を普段から強く感じることが多い韓国・三星電子であるが、株主総会の以下の記事からはそれを裏付ける雰囲気、意気込みというものを一層感じさせられている。

◇サムスン電子、2ケタ成長狙う、10年連結。(3月20日付け NIKKEI NET)
→韓国のサムスン電子が19日、ソウル市内で定時株主総会を開催、経営報告で2010年の連結業績に関して「2けたの成長を目標にする」とし、136兆2900億ウォン(約11兆円)だった2009年の売上高から10%以上の上積みを目指す考えを示した旨。
営業利益は、10兆9200億ウォンだった昨年と「同水準以上を達成する」と表明、18兆4000億ウォン程度とみられる設備投資と研究開発投資の合計額については「弾力的に対応する」とし、5兆5000億ウォンとする半導体メモリの投資計画を積み増す可能性も出てきた旨。


≪市場実態PickUp≫

足元の今年、そして今後の半導体市場をどう見るか。強気の一方で、待てよのジレンマ含みの見方は、今年の後半は伸びが鈍化すると見る下記のMorris Chang氏にも共通するようである。

【半導体業界今後の見方】

◇Chip industry to grow 7% in 2011, predicts TSMC chairman(3月19日付け DIGITIMES)
→Global Semiconductor Alliance(GSA) meeting(台北)TSMCのchairman、Morris Chang氏の講演。グローバル半導体業界は2011年に7%伸長、2011-2014年の間のCAGR(compound annual growth rate)は4.2%、半導体業界全体は2011年には2008年レベルに戻ると見る旨。

◇10 reasons to be bullish and worried (3月18日付け EE Times)
→EE TimesのMark LaPedus氏。2010年の半導体分野について強気に見る理由となり、そして心配もある10項目:
1. 経済情勢
2. IC需要
3. 消費者の熱気
4. 設備投資活力
5. メモリの道筋
6. Baseband Chips
7. Disk drivers
8. はっきりしないSolar
9. fabツール市場状況
10. ファウンドリー

非常に深い底を味わった昨年からの垂直這い上がりを目指す半導体製造装置業界について、これを支える予測の見方が続いている。

【半導体製造装置業界BB比】

◇Top capex spenders for 2010, 2011 (3月16日付け EE Times)
→FBR発。IC capital spendingが向こう2年、次の通り増加と見る旨。
 2009年   2010年   2011年
        $40.6B    $49.5B
 45%減    58%増    22%増
トップ25社ランキングデータ、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/seminews/2010/table2_031510.gif

◇IC Insights' capex rankings for 2010 (3月17日付け EE Times)
→IC Insights社が、2010年IC capital spending予測を、前回45%増から今回57%増の$40.7Bに上方修正の旨。
 2009年   2010年  2011年
 30%減   57%増   20%増
        $40.7B  $48.6B
半導体業界capital spendingトップ10・ランキング:
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100317_icInsights_capex_spenders.jpg

ただ業界BB比が頭打ちと懸念する論調もある。
  
◇Fab tool biz cools, B:B ratios flat (3月18日付け EE Times)
→半導体製造装置業界BB比:   1月   2月
 北米半導体装置メーカー     1.23   1.22
 日本半導体装置メーカー     1.36   1.34

落ち込んだ昨年の半導体業界、ベンダーランキングが次の様相となっている。 

【2009年半導体ランキング】

◇Winners, losers in 2009 chip rankings (3月17日付け EE Times)
→iSuppli社発。2009年半導体ランキングの勝負模様:
 ランク上昇…AMD, Elpida, Hynix, IBM, MediaTek, MicronおよびQualcomm
 ランク下降…Freescale, Infineon, Marvell, NEC, NXP, Panasonic, Renesas, Rohm, SharpおよびSony
 2009年トップ25・ランキング:
http://i.cmpnet.com/pldesignline/2010/03/100317_isuppli_top25.jpg

さて、一層奮起が求められる現状であるが、足並み揃った戻しが難しいということか、供給不足の事態が見られている。

【コンポーネント不足】

◇Price hikes, shortages hit chip market (3月15日付け EE Times)
→戻し基調の渦中の今、supply chainではコンポーネント不足の報が広がっており、半導体メーカーの多くがいくつかの製品価格を値上げ、1つとしてTexas Instruments社があるものについて40%まで上げている旨。

◇Supply of commodity parts remains tight (3月19日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。2009年末以降いくつかはavailabilityが改善してきているが、ほとんどのcommodity電子コンポーネントの供給は依然タイトである旨。

車載用半導体サプライヤとしてのBoschに、同社最大規模のfabオープンということで、今後にも注目である。

【Boschの8インチfab】

◇Bosch opens eight-inch fab-The automotive semiconductor supplier opened its new fab in Reutlingen, Germany today.(3月18日付け Electronics Design, Strategy, News)
→総計600Mユーロをかけた新facilityは、半導体およびMEMSコンポーネントを製造、Bosch Group史上最大の単独投資の旨。


≪グローバル雑学王−89≫

米国内の各地の事情、状況は、この10年をとってみても大きく様変わりしているようである。そこらあたりを

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213)…2009年12月 1版1刷

で埋め合わせたく思う。小生も米国にはご無沙汰気味の最近であり、新たな発見、知見が多々の下記内容となっている。


[VII] 地域から見た米国

1 パワーの源は地方に
(1)人も企業も分散
・米国に関する記事のほとんどはワシントンやニューヨーク発、と思いがちに 
→日本における東京のイメージとは違う
 ⇒先入観を捨てること
・米国では経済力から人材の所在、ものごとの発信力まで、力が広く地方に分散している印象
・日本人にありがちな「都落ち」といった感覚は薄く、縁のないところへ引っ越しをすることもあまり躊躇しない
(2)民主主義の原点
・政治的にも州政府が大きな力 …税制をはじめ政策手段も豊富
→知事の影響力も大きく、優秀な政治家の多くは知事を目指す
→中央政府からの補助金や交付金に依存、箸の上げ下ろしまで口出しされる日本とは状況が大きく異なる
・共同体意識が薄れ、タウンホール・ミーティングも形骸化、という嘆きの声は米国でもよく
→ただ、地域のことには自分たちも声を上げるのが当然という意識はまだ根強く残る
(3)自立迫られる州
・州政府の予算は、決められた連邦政府のプログラム向けの補助金を除くと、連邦政府の支援に頼らずに賄わなければならない
 …日本と比べると全く異なる状況
・地方が自立していくために最も重要なことは、経済の活性化
(4)奮闘する州知事
・雇用の拡大を一番真剣に考え、なおかつそれに責任を負っているのは州政府
→米国を取材して実感
・米国の州知事とは、売上げを伸ばそうとする企業のセールスマンそのもの
・州政府など地方の試みは民主主義の実験場として中央の先駆けとなる役割

※1980年代によく訪れたテキサス州では、国旗よりも州の旗が目立っていて、ここはテキサス国という表現を聞いた覚えがある。州の強い独立心を感じたものだが、なんらか上記に通じるところと思う。今や我が国でも都道府県知事はセールスマンに近くなっているという感じを受けるが、それぞれの地方ならではの伝統、財産の活かし方の競い合いということと思う。

2 人の移動は西へ南へ
(1)「山岳州」の人口急増
・「南へ、西へ」というのが米国で目立つ人口移動
・人口が激増しているのは、西部のうち「山岳州」と呼ばれる内陸地帯
 …ネバダ州、コロラド州など
・都市別の人口のランキング変化
           1990年   2007年
 ニューヨーク     1位    1位
 ロサンゼルス     2位    2位
 シカゴ        3位    3位
 フェニックス     10位    5位
 フィラデルフィア   5位    6位
 サンアントニオ    9位    7位
 デトロイト      7位    11位
(2)低コストと「生活の質」求める
・なぜ南部、西部の「山岳州」の人口が増加?
→生活コストが安い
→自然環境に溢れ、職住接近のゆったりとした暮らしを楽しめる
→税金も含めてビジネスコストが安いため、企業が南部や西部への立地を推進 …雇用機会の増加
→メキシコと接する南部や西部はヒスパニックを中心とした移民が多い
・住宅バブルの崩壊の影響を大きく受けているのもこの地域
(3)政治地図にも影響
・州ごとの選挙人数
        1980年の大統領選挙   2004、2008年の大統領選挙
 テキサス州   26             34
 ミシガン州   21             17
  (4)伸びる「マイクロポリス」
・一般的に大都市圏から中堅都市やその周辺部への人の移動も
・「マイクロポリス」…人口が1万人から5万人程度の町とその周辺部で構成される地域
→米国勢調査局が名付け
・大都会でも犯罪率の低下や再開発の進展で人が戻り始めているところも
→首都ワシントンがその典型

※まさに米国の最新事情を認識するとともに、我が国で進む地方過疎化、首都圏への人の集中との対照を考えさせられている。

3 地域の特性と人口増加
(1)レッドvsブルー
・内陸部     …「レッド・ステーツ」:共和党支持が多い
 東西両沿岸部  …「ブルー・ステーツ」:民主党支持が多い
・武器保有は冒すべきでない当然の権利という考え方
→保守的な思想が根強い南部や西部(カリフォルニア州などを除く)で特に目立つ
(2)対立の誇張は禁物
・南部と西部では微妙な違いも
 南部: 熱心な福音派のキリスト教徒が多く、中絶や同性婚に強い拒否反応
 西部: 「政府に束縛されない」という自由をより尊重する保守派の系譜
・あくまで色分けは相対的なもの、強調し過ぎるのは誤り
・米国の各州には自ら名乗ったニックネーム →自動車のステッカー
 フロリダ州    「サンシャイン・ステート」
 カリフォルニア州 「ゴールデン・ステート」
 ワイオミング州  「平等の州」
 ニューメキシコ州 「魅惑の土地」
(3)ヒスパニック系が三分の一の州
・カリフォルニア州では、2007年でヒスパニック系の人口が36%、2020年には白人の人口を抜くとの予測
・二番目はテキサス州、やはり全人口の36%
(4)アジア系も急増
・カリフォルニア州では、人口の14%が中国、韓国などを中心としたアジア系
・次いでニュージャージー州、ワシントン州、それぞれ8%がアジア系
・最近は全米に郊外型とも言えるチャイナタウンが広がる
(5)総人口は毎年1%増
・米国の人口全体 …2000年から2007年までの人口増加2000万人のうち4割が移民の流入による影響
・人種別の人口比率:2007年
 ヒスパニック系  全体の15%
 黒人           13%
 アジア系         5%
・2006年→2007年の人口増加率
 白人        0.3%
 ヒスパニック系   3.3%
 アジア系      2.9%

※先進国のなかでも着実に人口が増え続けるとともに、その中身が大きく変わってきている、という最新事情と受け止めている。米国はじめ先進国で揉まれて鍛えられて祖国に大きく貢献するというサイクルが、健全なグローバル化のエネルギー基盤に引き続きなっていくものと思う。

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