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改めて知る危機インパクト/市場実態PickUp/グローバル雑学王−88

半導体製造装置業界の販売高実績、今年に入ってからの各社業績が発表されてきて、それぞれ昨年の落ち込み、前年同期比増加率から、2008年後半からの経済危機がもたらした爪痕というものを改めて感じている。他地域に比べた日本市場の縮小幅と回復の遅れが、半導体販売高と同様に目立っているところが見られる。我が国ならではの新しい魅力ある製品・サービスによる市場開拓・拡大が、本当に待たれる現時点であると思う。

≪改めて知る危機インパクト≫

半導体業界の現状の率直な受け取りは、以下の通りと思う。

◇IC business is looking up (3月9日付け EE Times)
→そう前のことではなく、IC分野は不況によりひどい状況であったが、今やいくつかの関連分野での発表をサンプルベースで見ると、IC業界は上向いてきている旨。

どんなにひどかったか、まずは半導体製造装置トップ10ベンダーのデータがストレートに表している。

◇Applied again top gear vendor amid 2009 turmoil(3月10日付け EE Times)
→VLSI Research社(Santa Clara, Calif.)発。半導体装置トップ10ベンダー販売高が、2008年26%減、2009年38.2%減と、ここ2年で50%以上の縮小、この中Applied Materials社が18年連続首位の座の旨。
トップ10ランキングデータ:
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100310_vlsi_top10.jpg
11-15位のデータ:
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100310_vlsi_next5.jpg

半導体製造装置全体で見ると、さらに厳しい状況が伝わってくる。

◇半導体製造装置、世界販売額46%減、昨年、日本は下落率最大。(3月12日付け 日経産業)
→SEMI発。2009年の世界の半導体製造装置の総販売額は、前年比約46%減の約159億2千万ドル、世界的な半導体メーカーによる設備投資抑制を受けて、日米欧や中国など、すべての地域で2ケタ減、最も減少率が大きかったのは日本で約68%の旨。

日本の落ち込みが際立つ感じがあるが、北米は約40%、韓国は約47%の減少であり、台湾は13%減と減少幅が最も小さくなっている。

このような後を受けて、2010年以降の半導体製造装置業界はどうなっていくか、Gartner社およびSEMIより急峻な回復に向かう予測が発表されている。

◇Semi equipment spending to grow 76% over 2009, Gartner says-Spending by the memory and foundry markets, along with the advancement to new technology nodes will drive the semiconductor equipment segment in the first half of this year with quarterly growth slowing slightly in the second half before capacity additions start ramping up the equipment industry again going into 2011, the market research company said.(3月8日付け Electronics Design, Strategy, News)
→ここ3四半期にわたる半導体業界の劇的な回復により、Gartner社(Stamford, Conn.)が、2010年の半導体capital equipment投資を、2009年の$16.7Bから76.1%増の$29.4Bを上回ると見込む旨。

◇SEMI Revises Upward 2010 Fab Spending Forecast(3月10日付け Taiwan Economic News)
→SEMIのWorld Fab Forecast最新版発。2010年のグローバルfab spendingは88%増の$30B超、台湾の半導体メーカーによるspendingが全体で100%増加、今年のfab tools最大市場になると見る旨。
*グローバルFab Spending予測*      (金額:USB$)
                     2009   2010   2011
Spending on front end facilities   1.9  3.67    4.6
 Construction projects
 Change (%)              -54.9  85.2    25.1
Fab equipment spending      14    27     37
 Change (%)              -45  88.6    38.5
Total front-end fab spending    16.4   30.9    42.3
 Change (%)              -46.4   88.2  36.9
 [Source: SEMI]

半導体各社の業績からは、昨年の1月から2月が底という大方の観測を反映して、販売高の前年同月比が非常に大幅な伸び率を示している。TSMC、UMCの2月販売高が、それを端的に表している。

◇TSMC, UMC see flat sales (3月10日付け EE Times)
→TSMCの2月連結販売高$943.6M、ほぼ前月並み、前年同月比147.5%増。
1-2月累計は$1.89B、前年同期比138.2%増。
UMCの2月販売高$270.3M、前月比0.4%増、前年同月比174.66%増。

このような大幅な伸びは、中国の貿易額にも対応して表われており、1つとして次の通りである。

◇中国・ASEAN貿易額が80%増加、1月。(3月9日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→今年1月の貿易状況をみると、中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)自由貿易圏が両地域の経済貿易関係を大きく牽引したことがうかがえる。同月の双方の貿易額は214億8千万ドルに達し、前年同月比80%増加した。うち中国の対ASEAN輸出額は105億5千万ドル(同52.8%増)、対ASEAN輸入額は109億3千万ドル(同117.3%増)で、各項目とも増加幅が同月の中国対外貿易の全体的な水準を上回った。

世界経済のこのたびの回復の最大の牽引役、中国であるが、自らの半導体業界についてはまだまだこれからの課題という以下の内容である。

◇China IC Industry Development Targets Renewed and Repurposed Fabs(3月8日付け Semiconductor International)
→SEMI発。中国の政策立案筋が、"半導体ギャップ"(市場需要と生産能力)を埋めていく国家目標における大きな要素として、新しいおよび改修したプロセス装置を活用する再利用および更新fabを目指す旨。 


≪市場実態PickUp≫

今後の微細化に向けて、次のように枝分かれが生じている。半導体の原点まで遡ると、SiかGeか、NMOSかCMOSか、・・・、このような選択肢を掻い潜って今日まできている我々ということと思う。

【Gate First, or Gate Last ?】

◇Source: Samsung explores gate-last high-k (3月9日付け EE Times)
→sources発。Samsung Electronics Co. Ltd.がhigh-k dielectricsの代替を探索、gate-last技術に目を向けている旨。最初は、Samsungは対抗するgate-first, high-k技術を展開する計画の旨。

◇Gate First, or Gate Last: Technologists Debate High-k-Technology managers have strong opinions on the merits of the gate-first and gate-last methods of depositing high-k dielectrics and metal gate electrodes. Controlling the PMOS Vt appears challenging with the gate-first method, while the gate-last approach requires layout engineers to adhere to new restrictive design rules to accommodate planarization requirements.(3月10日付け Semiconductor International)
→high-kが、モバイルおよび高性能アプリの両方に展開、業界が今や次の通り分割模様に直面の旨。
*Intel、TSMC 
 →replacement metal gate(RMG) or gate-lastアプローチ
*AMD、GlobalFoundries、IBMおよび他のFishkill Allianceメンバー(Chartered, Infineon, Samsung, STMicroなど)
 →少なくとも28-nmノードについてはgate-firstアプローチ
*UMC
 →困難なPMOS Trについてはgate-last法を用いるhybridアプローチ

◇GlobalFoundries' Dresden fab to run 22-nm CMOS(3月11日付け EE Times)
→GlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)に属するFab 1(Dresden, Germany)が、22-nm CMOSプロセス開発および量産化に向けた作業を開始、該22-nmが現在の32-nmおよび28-nmでのgate-first high-K metal gate(HKMG) CMOSプロセスから逸脱するのかどうかは明確でない旨。

このアブダビが後ろ盾となっているGlobalFoundries社、素早く立て続け、前向きな取り組みが続いている。

【積極的なGlobalFoundries】

◇Abu Dhabi boosts stake in GlobalFoundries (3月8日付け EE Times)
→Reuters発。Abu DhabiのAdvanced Technology Investment Co.(ATIC)が、GlobalFoundries社における同社stakeを約68%から70%に高める計画、長い間にわたってATICはAMDからGlobalFoundriesでのstake全体をとっていく旨。

◇GlobalFoundries' plans for 2010 capex of $2.5 billion(3月12日付け EE Times)
→Abu Dhabiが支援するファウンドリー、GlobalFoundries社(Sunnyvale, Calif.)が、300-mmウェーハ製造capacityを50%上げるよう、2010年に$2.5B投資する計画の旨。

積極的な半導体市場の見方が、これまた続いている。

【半導体市場予測】

◇IC Insights boosts 2010 chip growth forecast to 27%(3月8日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)が月曜8日、2010年半導体売上げ伸長予測を上方修正の旨。
 2007年        2010年  2011年
            $253B   $290B
<今までの単年最高>  27%増   15%増
             (前回15%増)
2010年/2009年の各四半期伸び率予測図、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100309_icinsights_trend_line.jpg

パソコン市場も台数ベースで見ると、以下のように驚きに映るが、やはり金額ベースで物を言いたくなるのが人情ではある。ここでも経済危機の余波を受けて、回復基調とともに消費の波が世界的に大きく高まっているところはあると思われる。

【驚きのPC市場】

◇PC shipments actually grew in '09, says iSuppli(3月9日付け EE Times)
→iSuppli社(El Segundo, Calif.)発。市場は縮小するという大方の観測をものともせず、第四四半期の予想以上の好調が奏功、2009年のPC出荷は302.3M台に達し、2008年の299.2M台から1%増えた旨。
もう1つの驚き、台湾のAcer社が2009年世界No. 2 PCメーカーを巡る争いでほんの僅かDell社に取って代われなかった旨。
2009年ランキングデータ、下記参照。
http://i.cmpnet.com/eetimes/eedesign/2010/100309_iSuppli_09PCs_1.jpg


≪グローバル雑学王−88≫

なかなか一概に表すことは難しいと思うが、米国人、米国社会の考え方というものを、

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213)…2009年12月 1版1刷

より辿ってみる。島国で大方は単一民族という我が国と比べ、まさに民族のるつぼと表わされる米国。最近まで長らく駐在した筆者の目を通して、改めて確認である。


[VI] 米国人の考え方と社会

1 楽観主義者の国
(1)偏る米国イメージ
・米国ほど貧富の格差が大きい先進国はない、というのは一面の真実
・ただ、一概に冷たい社会とレッテルを張るのは行き過ぎ
(2)自主性重視の教育
・日米の考え方の違い →典型的なのが学校など教育の場
・一人ひとりが自分で考えて、好きなこと、良いと思ったことをする。それを周りも励ます。
 …米国人の特性をマーケティング担当者の目で描いた本『アメリカ人は何からつくられているか』での観察
(3)やりたいことに挑戦
・国民性からくる教育環境
 −人と違うことをする
 −決められたことをやるよりもやりたいことにチャレンジする
・生真面目で心配性のところがある日本人
 ⇔米国には、問題が起きればそれに応じて修正していけばいいという気風
・ただし、事細かさという点で日米が逆になるのが契約の面
 →ビジネス慣行の違い
(4)失敗には寛容
・米国人の特質 by 上記『アメリカ人は何からつくられているか』
 1.選択肢を主張する           …押し付けを嫌う
 2.不可能な夢を追求する         …アメリカンドリーム
 3.「大きい」「よりたくさん」に執心する
 4.せっかち
 5.間違いを受け入れる
 6.即興でやることへの衝動
 7.何が新しいかに固執
・特にシリコンバレーでは能力や実力があれば再起は可能という話
 …人も企業もやり直しが比較的しやすい風土
 →物事に対して楽観的な考え方をするという点も
・災害やテロなどの悲劇 →ヒーロー(ヒロイン)を探し出して大きく報じ、熱狂すること

※レストランで注文するとき、事細かに聞かれて辟易としたのが、米国出張の始めの頃の強い印象。はっきりものを言うことの大切さ、重みは、出張を重ねてだんだんと分かってきたし、訓練を受けたという感じ方もある。
グローバルな風土に生きる第一歩ということかと思う。

2 自立と愛国心
(1)政府の干渉を嫌う
・「政府の関与を嫌い、自立を志向する」一方、「愛国心が強く」「宗教心も篤い」
 この3つの傾向が特に顕著  →保守派
 この3つにこだわりが少ない →リベラル派
・個人の武器保有が認められている点
 →政府への本能的な不信感や政府の関与を嫌う考え方が基礎
(2)「自由の国」に誇り
・米国は、自由と民主主義という理念を掲げて誕生した世界最初の国
・大統領選挙に勝つための最低条件として、強い愛国心を持っていること
(3)身近な宗教の存在
・多くの米国人にとって教会は身近な存在
 →教会などに定期的に礼拝に通う米国人の比率は5割超: 英国人 21%
                            ロシア 7%
・人工中絶や同性結婚の是非がしばしば政治の論点に
 …中絶や同性愛の広がりに眉をひそめる保守的なクリスチャンが多く、一定の政治的な影響力を持つ
  (4)微妙な宗教と政治の関係
・宗教に関心がない政治家は人格的に信用できないというレッテルを張られかねないところも

※1980年代の出張時、仕事の合間に立ち寄る機会があったディズニー・ワールド。世界各地を映し出すディスプレイ・プレゼンの締めが米国の風景とバックに米国国歌。終わった後のしばらく止まなかった歓声と拍手には、なぜか熱くなった興奮を覚えている。その後、日本のディズニーランドで同じプレゼンを見たが、全く異なる感じ方である。上記の内容に通じるものを受け止めている。

3 「冷たい社会」は本当か
(1)薄い政府の弱者支援網
・確かに米国での貧富の格差は激しく、1990年代以降は格差が拡大傾向
 →問題は貧富格差に加え、政府によるセーフティネットの提供が不十分なこと
・伝統的に自立や自由を重視する社会、政府は安易に弱者保護政策をとるべきでないと考える人が多いのも確か
(2)草の根が担う「公」
・米国に住んで驚かされるのは、ボランティア団体の多さ、教会を通じた慈善活動も盛ん
・企業とNPO(非営利組織)との人の垣根は低くなっている
(3)寄付大国
・個人が行う寄付は、国内総生産(GDP)に対する比率が毎年1%超に
・政府に頼ることなく、地域の人々が団体をつくり、目的を達成するというのは歴史的な伝統
(4)人種差別の虚実
・現在の米国社会では人種差別的な発言や態度は決して容認されない
 →レイシスト(racist:人種差別主義者)は最大の侮辱言葉
・過去の過ちを正し、それを次世代に伝える必要があるという点では社会全体が一致

※個人の寄付の規模には驚かされる。高額所得者の収入が何ケタ違いということと思うが、我が国にもだんだんと上記の社会の流れが押し寄せているのではないか。草の根で支え合っていくことはじめ、グローバル化の必然ということかもしれない。

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