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IBMのニューロコンピュータの研究が現実的で面白い

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IBMが最近発表した半導体開発計画の一つは、人間の脳の機能を模したニューロコンピュータ(注)である。これによって人工知能の研究がいっそう飛躍することが期待できる。

このコンピューティングの基本エンジンとしてTrueNorthチップがまず作られた。このチップが脳のニューロンとシナプス結合に相当する機能を実現する。一つのTueNorthには64×64個のコアが実装されている。この4096個のコアにニューロンとシナプスが格納されている。各コア内には重み等を記録するメモリーがあり、他のコアへの結合も記憶されている。

さらにTrueNorhは高いエネルギー効率を実現している。システム動作クロックは1kHzと低い。各コアは非同期的に通信を行い、処理を行わないコアはアイドル状態となる。この仕組みでTrueNorthの消費電力密度は1平方センチあたり20mWしかない。これは既存のプロセッサが1平方センチ当たり50Wであるので、飛躍的な省電力を実現している。

これを複数個並べればニューロコンピューティングの第1層ができる。これを多層化すれば、現在機械学習の本命とみられているDeep Learningが直接実装できる訳である。すでにIBMにはCOMPASSというニューラル再現ソフトウエアパッケージがあるので、これを使えば問題をダイレクトに実装できる。

今までのシミュレーションや専用スーパーコンピュータを使用した方法より直接的であり、しかも低消費電力で学習する。これまでのDeep Learningアルゴリズムは簡単に検証できる。高度の学習を獲得するには強力なマシンとなる。

IBMではフォン・ノイマンコンピュータによる人工知能Deep BlueやWatsonで培った技術が生きている。今度は非フォン・ノイマンコンピュータによる人間の脳の機能に挑戦している。

Apple、Google、Microsoftに比較して凄味のある研究だと思う。これまでにIBMが培った研究と人材の差だと思う。28nmプロセスのチップを製造したのはSamsungである。

Agile Tech技術本部長 河田 勉
(2014/08/15)

注)生物の脳の神経細胞(ニューロン)や神経回路網(ニューラルネットワーク)の情報処理様式に学んで,脳の高度な情報処理機能の人工的実現を目指す新しいタイプの情報処理手法の総称。ニューロコンピューティングとも呼ぶ。

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