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2008年がFPDの大分岐点となる−その1:有機ELテレビの登場−

2007年の秋から年末にかけてFPD(注1)を取り巻く状況が急速に動き始め、大きな潮流が見え始めた。この機会に筆者なりの見方を2回に分けてまとめてみる。

昨年10月の「CEATEC Japan 2007」(於幕張メッセ)と「FDP International 2007」(於パシフィコ横浜)の両展示会では三洋電機とキヤノンのブースを見ることはなかった。三洋電機は経営再建中で、キヤノンは1年前の同じ展示会でフルHD対応の55型SED(注2)パネルを初めて公開し2007年春に商品化の予定であったが、米Nano-Proprietary社との訴訟問題でSED テレビの発売が見送られたことに関係すると推測される。

「CEATEC Japan 2007」での話題の中心は何といってもソニーの11型有機EL(注3)テレビであった。2007年12月1日発売を宣言していたが、前倒しで11月22日に販売を開始した。ソニーの有機ELテレビは低分子型アクティブ・マトリックス方式で、価格は20万円、生産台数は月産2000台。最も薄い部分の厚さは3mm。自社製FPDを持たないソニーとしては何が何でも手にしたいディスプレイ技術である。

CEATEC Japanで展示されたソニーの11型有機ELテレビ
CEATEC Japanで展示されたソニーの11型有機ELテレビ


三洋電機と米イーストマン・コダック社が共同で低分子型アクティブ・マトリックス方式の2.16型有機ELパネル(521×216画素、輝度120cd/m2、寿命3千時間)を開発し、コダックのデジタルカメラ「LS633」に世界で初めて搭載したのが2003年4月であった。

ソニーもその1年半後の2004年9月に低分子型アクティブ・マトリックス方式の3.8型有機ELパネルを開発し、自社のPDA「CLIE(クリエ)、PEG-VZ90」に搭載して発売した。画素数480×320画素、輝度150cd/m2、寿命はLCDと同等とのことであったが、ソニーがPDAビジネスから撤退したために2005年7月に製造が中止された。

有機ELは1987年に米コダック社のタンら(C.W.Tang, S.A.Van Slyke, C.H.Chen)が発明し、10年後の1997年に日本のパイオニアが有機ELパネルの商品化に世界で初めて成功した。このときは単純マトリックスによる低分子型パッシブ・マトリックス方式の緑色モノクロ表示で、車載用FM多重レシーバー「GD-F1」のディスプレイとして採用された。現在、低分子型パッシブ・マトリックス方式の単色有機ELパネルは携帯電話機のサブディスプレイや携帯音楽プレーヤーの表示部に多く利用されている。

NECもかつて有機EL開発に力を入れていて、2001年1月に韓国サムスンSDI社と共同で有機ELパネルの開発、製造、販売を行うサムスンNECモバイルディスプレイ社を韓国に設立した。しかし、2004年3月にNECが持っていた49%の全株式と有機EL関連特許をサムスンSDI社にわずか85億円で譲渡し、NECは有機EL事業から完全に撤退した。そのサムスンSDI社は2.4型〜2.8型のアクティブ・マトリックス方式有機ELパネルを携帯電話機メイン・ディスプレイ用として2007年9月から量産を始めた。2009年に14〜15型や21型テレビ用有機ELパネルを2010年に40〜42型のフルHDテレビ用の有機ELパネルを実現する計画(注4)を発表し、有機ELのリーディングカンパニーを目指す。

SEDの先行きが不透明なキヤノンは2007年末に有機EL製造装置メーカーのトッキを買収、さらに日立ディスプレイズを傘下に収める方向で動き松下電器産業や日立製作所とともに有機ELの事業化を目指している。デジタルカメラなど自社製品向け中小型ディスプレイとしてLCDと有機ELを確保したいキヤノンの意気込みが感じられる。

東芝はキヤノンと組んでSEDテレビの商品化を目指していたが矛先を有機ELテレビに変更し、2009年度中に32型有機ELテレビを発売すると一度は発表したが、有機ELの大型テレビの発売は延期するという。その一方でシャープとの提携を2007年末に急遽発表、大型テレビ用パネルはLCDと判断して大型LCDパネルの確保に動き出した。

セイコーエプソンは自社のインクジェットプリンタ技術を活用した高分子型アクティブ・マトリックス方式の有機ELパネルの研究開発を積極的に続けてきたが、「FDP International 2007」では高分子型から一転して低分子型アクティブ・マトリックス方式の8型有機ELパネル(画素数800×480画素、輝度200cd/m2、寿命5万時間以上、コントラスト10万対1以上)を展示し、低分子型有機ELの早期量産化に意欲を示した。

有機ELパネルは大型化、輝度、寿命、湿度、表示ムラなどに解決すべき課題を抱えているものの、商品化が本格化すれば研究開発もより加速されどんどん良くなるであろう。ユーザーの立場からすると有機ELは自発光素子で少しギラギラした感じがあり、テレビやパソコンのように長時間の使用に適するのかどうか疑問もあるが、これもフィルターなどの開発によって早晩解決されると思われる。さらに将来的には白熱電球や蛍光灯に代わる面発光用光源としても大きな期待が寄せられる。

以上述べてきたように、まだまだ紆余曲折はあるものの2008年は有機ELパネルがFPD分野において存在感を急速に増す新たな時代の幕開けとなることは間違いない。


注1 FPD(Flat Panel Display):薄型平面ディスプレイの総称

注2 SED(Surface-conduction Electron-emitter Display):表面電界ディスプレイ

注3 有機EL(electroluminescence):有機材料に電流を流しそれ自体が発光する現象

注4 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20071026/141352/


光和技術研究所
代表取締役社長

禿 節史(かむろ せつふみ)

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