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2010年新春に思う 〜求められるモノを創る〜

2010年新春にあたり、今年の電子機器産業を展望してみる。米国のサブプライムローンに端を発し、2008年9月のリーマンショックによる金融危機で日本経済も大きく後退した。お金は経済の潤滑油として不可欠ではあるが、本源的な価値の創造は金融商品によるお金のやり取りではなく実業部分において作られる。その意味でもわが国の電子機器産業が元気になり価値創造を行うことが求められている。幸いにして今年のわが国の電子機器産業を取り巻く状況は近年になく非常に明るい。

劇場用の立体(以下、3D)映画では米国が先行し興行的にも成功している。今年は3Dテレビが登場する。パナソニックは3月に世界初の3D対応PDPテレビ(4機種)の発売を予定し、一体型二眼式3Dカメラレコーダーの発売も予定している。ソニーは夏に3D対応の液晶テレビ(9機種)を発売する予定で、3D映像コンテンツにも参入を表明している。事業として効果の出るのはまだ先のことであるが新しい市場の誕生である。

鮮やかな映像と省エネを実現できるLEDバックライトの液晶テレビも引き続き好調である。先頭を走る韓国サムスンに対抗してシャープは従来の赤、緑、青の3原色に黄色を加えた4色カラーフィルタを採用した液晶テレビ(3機種)を3月から米国を皮切りに発売予定で、現行機種に比べ肉眼での認識色彩領域は100倍になるという。

そのシャープが2008年4月に「電化システム事業本部」を「健康・環境システム事業本部」と改称し、健康と環境を軸とした事業展開を加速すると発表。以前に筆者は『デジタル技術の衝撃』(注1)という本の中で「環境と健康――シャープ」と題した一文を上梓し、新事業分野に挑戦するシャープを紹介した。この拙文が参考になったかどうは定かでないが、これからの電子機器産業では「環境」と「健康」に「省エネ」を加えた三つのキーワードが重要になる。

次に注目すべきは国内メーカーが世界生産量の半分弱を占めるLiイオン2次電池である。ハイブリッド車や電気自動車の普及によってその需要が今年から急拡大し、2011年には自動車関連の需要が従来の携帯電話機やノートパソコン向け需要を追い抜くと予測されている。生産能力の大幅な増強のため国内の大手三社(パナソニック、三洋電機、ソニー)は全体で3000億円もの設備投資を予定し、全世界での設備投資総額は1兆円だという。(注2)

ハイブリッド車や電気自動車の関連ではパワー半導体も不可欠であり、その世界市場は2兆円規模で、国内メーカーがそのシェアの約半分を占めている。パワー半導体の国内大手メーカーである三菱電機、富士電機、東芝では生産能力を増強するための設備投資計画が目白押しである。パワー半導体は電動自動車だけではなく環境問題で見直されている鉄道にも必要となる。近年は長距離高速鉄道網や市街地の路面電車の需要も多く、日本の優秀な鉄道技術が世界中に出てゆくタイミングであると同時に日本のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)をはじめとするパワー半導体の活躍が期待できる。

WSTS(世界半導体統計)では、2010年の半導体市場は前年比12.2%増の2470億ドルと2008年とほぼ同水準まで戻ると予測しているが、筆者は2007年実績の2560億ドルをも越えて過去最高を記録すると推測する。とはいえ国内半導体メーカーの全てが好調になるというわけではなく、現有の製造装置と自社が有する技術だけを使って従来と同じような製品を作る企業は取り残されていく。ここで「市場が求めるモノを創る能力」が問われており、これを実現できた企業だけが生き残れる。

分かり易いイメージを描くためにDRAMを例に説明する。1980年代までは日本メーカーは大容量化、高品質化、高速化を目指して大進撃を続けることができた。そこに米マイクロンテクノロジーやサムスンが大型コンピュータからパソコンへの応用の変化に対応した低価格化を軸にして日本メーカーの牙城を崩し始めた。日本メーカーがDRAMで再び市場の覇者となるには自ら次の新しい軸を構築する必要がある。例えば、低消費電力化の軸を考えてみる。単なる従来技術の延長線上ではなく、消費電力が従来品の半分であるような画期的な目標を設定し実現を目指すのである。「求められるモノを創る」の志を持って、2010年が日本再出発の年になることを願っている。

光和技術研究所 代表取締役社長 禿 節史(かむろ せつふみ)

注1 内藤耕、赤城三男、溝渕裕三、禿節史『デジタル技術の衝撃』工業調査会、2006年3月.

注2 「Liイオン電池 新時代へ」、日経エレクトロニクス2010年1月11日号、pp.31-55、2010.

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