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白色LED革命が始まった!!〜トーマス・エジソン以来130年ぶりの革新〜

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1879年にトーマス・エジソンが発明した白熱電球は、今日までその基本技術を変えることなく、130年間にわたって人類に貢献してきた。もちろん、この間に蛍光灯や各種の省エネ型電球が登場したが、基本原理は変わることがなかった。この照明という分野が、またも新たな半導体によって革新されようとしている。この革命の核弾頭ともいうべき存在が、白色LEDだ。

よく知られているように、LED(発光ダイオード)は自ら光る半導体であり、赤色、緑色はかなり早い時期に実用化され、それなりのマーケットを作ってきた。しかし、残念なことに青色がなかったのだ。いまはカリフォルニア大学に在籍する中村修二氏が日亜化学工業時代に発明した青色LEDの登場で、照明の世界は大きな革新のステージに立つことになった。つまりRGBの3原色がそろったことで、はじめて白色LEDの量産にめどがついたのだ。

日本国内では、カラオケ最大手のシダックスが全店舗の電球をすべて白色LEDに切り替えるとアナウンスした。筆者は驚き呆れて、すぐさまシダックスに取材を入れた。

「LEDは電球に比べて15倍以上の価格であり、大変なコストアップになる。ほとんど理解できない。」こういう質問を発した筆者に対し、シダックス幹部は、「あなたこそ本当に半導体記者ですか?」と反論した。「わかっていないのね。」と軽い嘲り笑いをしながら、その幹部はこう明確にコメントした。

「確かに価格はかなり高いです。しかし寿命は白熱電球の40倍もあるんですよ。普通に使って10年以上は取り換えなくてもよいのです。しかも、消費電力は2分の1から3分の1に減ります。白色LED採用は、ほんの数年のうちにとんでもないコストダウンにつながるのですよ。」

このシダックスの発表は、他のサービス業や流通業に一大インパクトを与えた。イトーヨーカドーやイオンなどの大手スーパー、すかいらーくやマクドナルドなどの外食店舗、さらにはコンビニエンスストアーやホテル業界の人たちも白色LEDとは何かを徹底的に研究し始めた。

世界最大手の照明メーカーであるフィリップスは、数週間前にこの日本に白色LED事業部を新設し、「日本国内でのLED照明普及に全力をあげる」とコメントした。その数カ月前には、韓国のLGグループが日本にLED照明の戦略的子会社を設けることを決めた。こちらは3年後に日本国内だけで150万本の出荷を果たし、300億円の販売を計画している。彼らの狙いは明確だ。日本を白色LED照明のテストマーケットと見ているのだ。世界一うるさいユーザーが多いこの日本で成功すれば、そのビジネスモデルをヨーロッパ、さらにはアジアへと拡大していく考えなのだ。もちろん、白色LEDの生産サプライヤーは日本に集中しており、デバイスを調達しやすいという事情もあるだろう。

国産勢も黙ってはいない。シャープも先ごろLED照明事業に本格参入することを発表した。工場、オフィス、商業施設向けの業務用照明器具として販売するのだ。同社は、LEDを液晶、太陽電池に次ぐ第3の主力事業に育成する方針だ。LEDチップそのものは、四国の日亜化学工業がマーケットシェアの6割以上を押さえ、世界最大の生産力を誇っている。同社のLEDと半導体レーザーの売り上げは約1500億円で、その7割が白色LED。2番手は豊田合成であり、最近では三菱化学、日立電線、同和鉱業なども新規参入を表明した。もちろん近い将来には、国内半導体大手の東芝やNECなども参入するのは確実で、すでに新工場建設のプランを練っているという。日本の照明最大手のパナソニック電工もまた白色LEDの量産を考えている。新照明革命の担い手としては、白色LEDのほかに光源有機ELがあるが、こちらはまだ技術的、コスト的な問題からブレイクするにはいたっていない。当面は、白色LEDが突っ走るだろう。

白色LEDチップ参入を表明し、この基本材料であるガリウムナイトライドの大量産を計画している三菱化学の執行役員・山本巌(いわお)氏は、今後の白色LEDの将来性についてこうコメントする。

「私たち一般家庭の照明が、白色LEDに変わる日もそう遠くありません。これが実現すれば、少なくとも3〜4兆円の巨大市場が立ち上がります。それにしても世界同時不況で、暗い世相が続きます。こんな時代には、白色LEDのやわらかな灯りで安らぎを得たいものです。今日の足元は暗いが、ほのかな明かりが見えていると信じたいです。世界中の人たちにとって、いまが忍耐のときでしょう。夜明け前が一番暗いもの。しかし必ず夜明けはやって来ます」。


産業タイムズ社 専務取締役 編集局長 泉谷渉

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