TSMCの1Q売上YoYで41.6%増、1.4nm開発も順調〜Nvidiaから71兆円分を受注〜
いまや事実上の半導体生産の世界チャンピオンとなった台湾TSMCの勢いが止まらない。2025年1〜3月期売上は前年同期比41.6%増の3兆6800億円となった。純利益は60.3%増であり、売上利益ともに同期としては過去最高だ。
AI向け先端半導体が絶好調であり、3nm〜5nmプロセスの量産品が一気に増えている。米国アリゾナ工場は順調に立ち上げているが、熊本第二工場の本格着工は延期されている。これは、トランプ大統領によるTSMCのアメリカへの投資を優先せよ!とのメッセージがTSMCに出されているからである。
TSMCの最新の1.4nmプロセス「A14」は先ごろ、北米の技術シンポジウムにおいて発表され、歩留まり向上は予定を上回るペースであると説明された。28年にも量産開始予定をアナウンスしている。また、2nmプロセスの「N2」の量産開始を25年後半に予定しているが、「A14」はこの「N2」と比べて、同一電力で最大15%の高速化、同一性能で最大30%の消費電力削減、ロジック密度は20%以上も向上しているのである。さらに、AIのロジックと広帯域メモリ(HBM)のニーズに対応するため、9.5レチクルサイズの「CoWoS」を27年に量産予定であり、これにより12スタック以上のHBMをパッケージに統合できるとしている。
一方、AIチップの世界チャンピオンであるNvidiaは今後4年間でなんと71兆6400億円のAIインフラを米国内で生産すると決定した。同社はTSMCに多くのチップの製造を委託している。最先端AIチップ「ブラックウェル」の生産はTSMCがアリゾナ州に新設した工場で始まっている。こうしたことにより、TSMCのAIチップ向けファンドリはますます活況となるわけであり、同社の大型設備投資はますます拡大するばかりだ。
さらに、新たな動きも出てきている。パソコン向けCPUにおいてAMDに猛追され、サーバ向けCPUで苦戦の続くインテルは失楽園に向かっていると言われるが、これをTSMCが救うという動きがある。
また、クレイジーともいうべき米国トランプ大統領の中国報復関税を受け、中国の半導体産業協会は製造国を輸入元とする基準を適用するとの緊急通知を発行した。これにより、TI株は10.6%、インテル株は8.6%、GF株は4.7%それぞれ一時下落した。しかしながら、米国内の製造を進めるNvidiaの株価は一時3%高、TSMCは一時4.5%高と上昇した。きまぐれなトランプ氏の動きに対してもTSMCは柔軟に対応しているのだといえよう。