半導体パッケージの重要性が一気に高まる〜TEL、キヤノン、レゾナックに注目
「半導体の後工程に対する関心がいやがうえにも高まっている。材料関連においても、この動きは急速であり、住友化学、三菱ケミカル、旭化成などの動きに注目する必要がある。もちろん、後工程材料にめっぽう強いレゾナックについてはきっちりとウォッチした方が良いのだ。」
力強い口調でこう語るのは、半導体アナリストとしていまや著名な存在である和田木哲哉氏(モルガン・スタンレーMUFG証券)である。和田木氏によれば、前工程の微細化がかなり限界値に近づきつつあるとの思いが各デバイスメーカーの間に拡がっており、チップレットさらにはパッケージングなどでこれをカバーしていくという傾向が強まっているともいうのだ。
こうした状況の中で、多くの半導体メーカーは2.5次元さらには3次元実装などの先端パッケージングで研究開発拠点を設立することを決めた。台湾TSMC、韓国Samsung、米国Intelはいずれも半導体のパッケージングの研究開発拠点を日本に設けている。このことで、日本の材料・装置メーカーとの連携を強化しているのだ。日本勢では、国家半導体戦略カンパニーともいうべきラピダスがセイコーエプソンの工場を借りて、先端パッケージングの研究開発を加速しているのだ。
装置メーカーにもかなりの動きがある。大手の一角である東京エレクトロン(TEL)は顧客からの先端パッケージングの要望が増加していることから、ウェーハ同士を貼り合わせるウェーハボンディング装置、ウェーハ端面をトリミングするウェーハエッジトリミング装置を市場に投入した。とりわけ、3DNANDフラッシュメモリ、HBM(High Bandwidth Memory)、先端ロジックなどにおいて引き合いが非常に多いというのだ。
一方、キヤノンは後工程で使うi線露光装置の開発と量産に注力している。パッケージサイズが大型化しているためにキヤノンの露光装置は4回の露光をつなげることで100mm×100mmの大型パッケージに対応できる。また、チップごとに位置合わせを行い、位置合わせの精度を高めるシリコンブリッジにも対応できるのだ。そしてまた、チップ同士を直接接続するハイブリッドボンディングにも需要が見込まれるのである。
日立ハイテクは直接的にはアドバンストパッケージング向けの装置があるわけではないが、ハイブリッドボンディングでの展開をエッチング装置で狙っている。
材料メーカーにおいても、後工程強化の方向性がはっきりと出てきているのだ。後工程材料の最大手であるレゾナックは、後工程の開発や評価に取り組む日米10社の企業連合を設立した。シリコンバレーに開発・評価の拠点を置くことになり、日本からは東京応化やTOWAなど6社、米国からはKLAなど4社が参画している。
世界はいまや半導体設備投資の一大ブームに沸き返っているが前工程だけではなく、後工程投資の拡大にも大きく注意を払う必要が出てきたのである。