セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

2024年のキーワードはAI半導体!〜ニッポンの星、PFNに政府は200億円支援

|

2024年を迎えて、希望に満ちたキーワードは何かと考えてみる。それはやはり、何といってもAIのもたらす未来社会の本格的開幕しかない!と思えてならないのである。

泉谷渉の視点

Microsoft、Google、Amazon、Appleなどは、AI専用半導体の独自開発に入っている。GPU、CPU、FPGAなどを搭載したAIサーバーの出荷台数は、2023年に前年比40%増となり、120万台を超えてきている。2024年も同じく40%増となる見込みであり、全サーバーに占めるAIサーバーは12%まで拡大すると予想されているのだ。

生成AIで使用されるGPUは、これまでNvidiaがほとんど独占、という状況ではあった。しかしながら、最近ではAMDが新型AI向け半導体の開発に成功し(編集注1)、いずれ一大バトルの様相になっていくのは間違いないだろう。

そして、ついにというか、いよいよというか「ニッポンの星」ともいわれるプリファード・ネットワークス(PFN)が、AI専用半導体の開発を加速しはじめている。PFNは、日本最大のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)と言われており、総資産は200億円を超えてきている。

同社はビッグデータをネットワークのエッジで分散協調的に処理する「エッジヘビーコンピューティング」の提唱で、その名を知られている。オープンソースの深層学習フレームワーク「Chainer」の開発を通じて、様々な企業、組織と協業してきた。NTTから2億円、ファナックから9億円、トヨタ自動車から9億円の出資を受け、事業拡大に成功した。

2017年にはトヨタ自動車から105億円の資金調達を受け、自動車分野におけるAI技術の共同開発を急ピッチで進めている。その他でも東京エレクトロン、パナソニック、日立製作所、ENEOSなどの有力企業から出資を受けているのだ。

PFNは2016年にAI半導体「MN-CORE」の開発に成功、同社のオリジナルスパコンには、この半導体が搭載されている。第2世代品の開発も完了しており、これは台湾TSMCに生産を委託。低消費電力で演算能力を3倍に向上させている。

PFNの生成AIの基盤開発については、国内最大の計算規模を持つ産総研のデータセンター「ABCI」の計算能力の2割を優先的に利用できるよう、日本政府が後押ししている。さらに政府は200億円の大型支援を断行する、とさえ言っているのだ。

西村経産相の後を継いだ斎藤経産相もまた、半導体産業支援については継続するだけでなく、拡大するとしており、PFNを徹底サポートするばかりでなく、国家戦略カンパニー、ラピダスの2nm〜1nmプロセスの立ち上げにも大型の資金投入を用意しているようだ。ラピダスはAI向け専用半導体の生産に注力する姿勢であり(編集注2)、ニッポンベンチャーの期待を担うプリファードからの生産委託も十分にありうると見てよいだろう。

一方、東芝/ロームのパワー半導体の事業提携も始まっており、アナログ、ディスクリートというローエンド、ミッドレンジのニッポン半導体の大型事業再編についても、2024年に大きな動きがあるかもしれない。

京セラ、ルネサス、ニデックなどによる大型M&Aも出てくる可能性がある。そして、ソニーのCMOSイメージセンサーに対する異次元の巨大投資も予想される。とまれ、こうまれ、新しい年がニッポン半導体にとって希望の年となることを、切に祈りたいと思う。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉


編集注
1. Intelも2.5D/3D-ICやチップレットを駆使した先端パッケージによるGPU「Ponte Vecchio」を1年以上前に出荷しており、すでに米Argonne国立研究所のスーパーコンピュータ「Aurora」に使われている。
2. ラピダスがAI専用チップに注力するかどうかはともかく、RISC-Vプロセッサコアを推進するカナダのTenstorrent社と業務提携を結んだことはAI半導体を製造する用意があるといえる。Tenstorrent社のデータフローコンピューティングはニューラルネットワークのアルゴリズムに沿ったアーキテクチャだからである。

月別アーカイブ