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ファブレスのソシオネクストに内外から注目!〜2nmでArmと共同開発契約

ソシオネクストという異色の半導体ファブレスメーカーが国内外の注目を集めている。同社は、日本国内ではレアともいうべきファブレスカンパニーであり、2019年度あたりでは1000億円程度の売り上げであったが2023年度は2000億円を超えてくる見込みであり、国内半導体メーカーランキングではついに第11位にランクされたのだ。

泉谷渉の視点

ソシオネクストの設立は2014年。富士通とパナソニックのロジック半導体部門が統合する形で発足し、自社工場は持たない。台湾のTSMCなど数社に委託している。国内の半導体企業は40nm世代までしか対応できないことに対し、同社は5〜7nmという先端品を設計できる唯一の国内メーカーなのである。

同社の戦略はなんといってもユーザーのカスタマイズに素早くこたえられることであり、最近になってはさらに踏み込んだ最先端微細プロセスでの半導体開発に着手している。

同社としては、はじめての3nmを使った最先端の次世代自動車向けの半導体チップ開発にも取り組んでいる。自動運転システムさらには、ADASなどに向けたチップを設計および開発しており、TSMCに製造を委託し、26年から量産をはじめるのだ。

加えて、ついに現状での最も高いレベルの2nmの半導体の設計開発にも取り組むことを決め、なんと英国のArm社と協業する契約を結んだ。注目されるのはこのサンプル品には機能が異なる半導体をブロックのように組み合わせるチップレットを採用することだ。面積あたりのデータの処理能力などを高める手段として注目される技術であるが、主な用途はデータセンターなどである。

この先端CPUチップレットの製造計画で株価はここにきてなんと12%高を記録しているのであるからして、サプライズ以外の何ものでもない。もっとも、7月5日には「ソシオショック」という現象が生まれており、大株主の日本政策投資銀行などが保有株式を売却するというだけで翌6日の株価は22%を超えるストップ安となった。この急落で上昇を続けていた半導体、銘柄全体に売りが広がった。

これが「ソシオショック」であり、日本のファブレス半導体メーカーが株式市況を左右することにも多くの投資家が驚かされたのである。それにしても、富士通とパナソニックの半導体スピリッツはいまだに生き続けていることにも感慨の深いものがあるのだ。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉


編集室注
ソシオネクストは、まだ続く半導体不況の中で、2023年度第2四半期(7〜9月期)での売上額が前年同期比30%増の555億円に達し(図1)、今年度の上期売上額は1170億円となった。同社は、設立当初は富士通向けパナソニック向けの製品しかなかったが、この2年で大きく変わり海外売上比率が上半期に62%を占めるようになった。その内デザインインに入った案件(量産していない設計)の売上額(NRE売上額)では海外売上比率は83%にも達した。今や海外の顧客を大量にとって稼ぐようになったといえる。

四半期別の売上高及び営業利益の推移 / SOCIONEXT

図1 ソシオネクストの23年7〜9月売上額は前年同期比30%増 出典:ソシオネクスト

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