化学の力で半導体の未来を切り拓く〜設立70周年を迎えた合成樹脂工業協会
電子材料という世界は、実に奥が深いわけであり、今日にあっても半導体、自動車、メタバースを支える底力となっている。そうした状況下で、筆者は、31冊目の本となる「『化学』の力で世界を変えてみせる!」を先ごろ書き上げ、上市した(共著:津村明宏)。これは世界を動かす半導体産業の驚異的成長の時代、電子デバイスを支える材料産業の重要性と先端技術への取り組みなどを描きながら、設立70周年を迎えた合成樹脂工業協会の現在・過去・未来を描いたものである。
筆者は、多くの会員企業にインタビューを続けてきたが、そこに見えてくるキーワードは、やはり「『化学』の力で世界を変えてみせる!」という気概であり、それに向かっていく気迫であり、それを実現するための熱情であると切に思っている。
時あたかも、半導体産業はいまや世界経済の屋台骨を担う存在になってきており、国家安全保障の要も半導体にあるとさえ言われるのだ。その半導体をはじめとする電子部品、プリント基板、各種電池、各種ディスプレイなどの電子デバイス産業を化学という技術のパワーで下支えしているのが、日本のケミカルカンパニーなのである。電子材料という分野に関しては、間違いなく日本企業は世界の頂点を極めている。これを維持し、発展させていくことが最重要な課題なのであろう。
合成樹脂工業協会の看板事業の一つであるネットワークポリマー講演討論会を見ても、実に16の団体がこれに協賛している。それは、日本化学会、日本複合材料学界、プラスチック成形加工学会、日本プラスチック工業連盟、エポキシ樹脂技術協会、高分子学会などが協賛している。また、協催としては日本接着学会が関わっている。
日本の持つ最先端かつ高機能、高付加価値の電子材料を化学の力で支えていくという姿が、はっきりと読み取れるのである。世界を変えてしまう技術的ブレークスルーは数多くあるが、100年に1回と言われるものはそれほど多くはない。トーマスエジソンによる電気の発明、ショックレー、ブラッテイン、バーディーンによるトランジスタの発明などは、まさに私たちの社会を根底から変えてしまうほどの迫力であった。そしてまた、1907年にベークランド博士によって完成したプラスチックは、これまた世界を変えてしまうほどの発明であった。
116年前に誕生したプラスチック(フェノール樹脂)の世界は、今後推進されるメタバース革命、SDGs革命、さらには量子コンピュータ、人工知能(AI)とロボットの社会という未来に向けて、さらなる進化・発展を遂げていくだろう。合成樹脂工業協会もその持てる力をフル稼働させて組織を拡大し、来るべき未来社会へ貢献する技術の追求にひた走るに違いないのである。
そしてまた、半導体の前工程プロセスの微細化が限界に近づいている現在にあって、チップレット、パッケージなど後工程に対する設備投資が従来の3倍に膨れ上がるという情勢があり、合成樹脂工業会のメンバーは、ここにも最大注力している。SDGsの時代にあって、重要なポイントになってきたEVなどのエコカーに必要なパワー半導体の分野も10兆円という大台が視野に入ってきているわけであり、この新規材料開発についてもそれこそ体を張っての開発を続けているのである。