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北の半導体産業活発に〜ラピダスの北海道、TELの奥州新工場等投資ラッシュ

TSMC熊本の進出を契機に、九州シリコンアイランドの一大投資ラッシュがひたすら話題になっている。しかしここに来て東北エリアにも大きな動きが出始めてきたことに一大注目する必要がある。国内装置最大手であり、世界ランキングでもトップを狙うと言われる東京エレクトロンは、岩手県奥州市に新工場立地を決めた。さらにラピダスの5兆円投入とも言われる巨大工場建設に伴い、その装置や材料の受け皿として東北エリアに進出する気運も高まっているのだ。

東北における半導体工場立地を見渡してみれば、青森県にはパワー半導体大手の富士電機津軽セミコンダクタがあり、ここには一大投資計画が実行されている。松本工場や山梨工場の狭隘(きょうあい)化に伴い、富士電機は当面、津軽に徹底的に設備増強を図る考えなのである。秋田県には同じくパワー半導体の中堅である秋田新電元の工場が2カ所ある。岩手県では何と言ってもNANDフラッシュメモリー大手のキオクシアが立地しており、1兆円を投じると言われる第2期棟が本格着工の運びだ。車載向け半導体の分野においては、デンソー岩手が大型工場を構えており、こちらも増強計画を順次進めている。東芝系のジャパンセミコンダクターも岩手事業所の陣容をさらにバージョンアップしていく考えだ。

宮城県には、ソニー半導体の拠点の一つである白石蔵王テクノロジーセンターがあり、半導体レーザーやレーザーカプラーなどの化合物半導体を作っている。そしてまた、ローム系のラピスセミコンダクタ宮城工場もある。山形県下では、やはりソニーセミコンのCMOSイメージセンサおよびMRAMの量産拠点である山形テクノロジーセンターがある。酒田には東北エプソン、東根には東根新電元、山形サンケンがあり、米沢にはルネサスエレクトロニクス米沢工場が稼働している。そして福島県には、オン・セミコンダクター会津、福島サンケン、日立パワーデバイスなどが動いている。

こうした東北エリアの工場の貼り付けが進むことと、国家プロジェクトカンパニーとも言うべきラピダスが5兆円を投じて千歳の100万m2に最先端半導体工場を建設することに対応する意味もあって、製造装置関連の投資の動きも出始めている。その一つが、東京エレクトロンの岩手県奥州市への大型新工場立地である。220億円を投じて、装置の生産能力を稼働時で1.5倍、その後の生産効率化などで最大2倍まで引き上げる計画だ。新棟は2階建てで延べ5万7000m2、2階部分で半導体ウェーハ成膜装置を量産する。1階には物流センターを設けて、生産を効率化する。

奥州市での生産拠点は、これで7棟目となるが、2020年に同市内で稼働した6号棟は、まさにフル生産の状況にあるという。足元の半導体市場は調整局面にあるが、成膜装置については多層化で工程が増えたり、技術が高度化したりするなどして、24年度にはさらなる高い需要が見込めることがこの大型投資を呼び込んだのだ。

こうした動きに対応し、東北半導体・エレクトロニクスデザイン研究会は、先ごろ会合を開き、今後のロードマップを策定した。これは東北経済産業局を中心に、産学官で作る組織であり、半導体関連産業の人材育成・確保、さらにはサプライチェーンの強靭化などにも積極的に取り組むのである。

この研究会の中心的な役割を果たす東北大学の国際集積エレクトロニクス研究開発センターの遠藤哲郎センター長は、MRAM市場は一気に立ち上がりつつあり、28〜30年に車載用分野が主戦場になるとして、東北大学発ベンチャーのパワースピンをさらに拡大していく方向を決めた。フラッシュメモリーは85°Cあたりがリミットであるが、MRAMはなんと175°Cにも耐えられることから、今後、自動車向けに搭載が大きく見込まれる予想があるのだ。もちろん、東北大学の視線の向こうには、トヨタ自動車の一大量産拠点が宮城県黒川郡にあり、こちらの増強も今後、十分に期待されるからである。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉
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