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シリコンアイランドの大復活へ!!〜九大20億円、福岡・熊本も大規模用地準備

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いまや事実上、世界最大の半導体生産企業となったTSMCのことが毎日のように報道されている。筆者は先ごろ、くまもと半導体産業推進ビジョン有識者懇話会の取材に出かけたが、そこでもひたすらにTSMCの熊本新工場進出が一大転機となり、九州シリコンアイランド大復活が多くの人たちの話題になっていた。

熊本県には、TSMC進出による経済効果が4兆円もあると言われており、熊本県庁は2032年度までに半導体関連産業生産額を現状の8290億円から倍増以上の1兆9315億円に伸ばすことを打ち出した。一方、熊本県は、人材育成はひたすらに重要と考えて、半導体人材が集う拠点づくりに全力を挙げることを宣言した。国の交付金として獲得したのが「地方大学・地域産業創生交付金」であり、令和5年度は石川県と熊本県が選ばれた。当然のことながら、熊本大学を中心に半導体の人材を徹底的に育成するというものである。同大学には新たなクリーンルームが作られることが決まっている。

また先ごろ、九州大学の副学長の任にある白谷正治氏にお目にかかったが、実にすばらしいことを言っておられた。白谷氏は、半導体製造におけるプラズマプロセスの研究で有名な方であり、最先端プロセスにおけるコンタミとの戦いに全力を挙げておられる。

「九州大学は思い切った人材作戦を展開していく。特定分野を指定した上で、毎年普通の枠とは別枠で、5人ずつ秀逸な准教授を採用していく。5年間で25人を育成し、特別な研究にひたすら没頭するという体制を整える。この研究者育成と、研究環境整備に総額20億円という巨額を投入する。そこまでやらなければ、本当の人材は育たない」(白谷氏)。

そしてまた、白谷教授は、九州シリコンアイランドの活性化と、今後の方向性についてこうも語っておられた。「TSMCばかりでなく、さらなる外資系企業の誘致も必要であろう。そしてソニー、ルネサス、ロームなどの日本企業の今後の工場新増設も急ピッチで進むだろう。ただ重要なことは、日本および九州だけにクローズするという考え方はとらない方がいい。台湾と一緒になって、世界ナンバー1を目指すべきだ。言い換えれば、最先端プロセス・装置・材料は世界の中で台湾と九州に多く集中しているという時代が来ることを願っている」。

前記の熊本県は、TSMCの誘致成功に乗じて新たな産業団地の造成に入ることを決定した。合志と菊池に各25万m2の工業団地造成を県レベルで実行するのだ。これに加えて、八代市が工業団地造成に乗り出すことを表明した。さらに、西原、益城など数カ所が団地造成に着手する予定があり、トータル80万m2の企業誘致のための団地造成実行というとんでもないことになっている。

そしてまた、半導体関連企業400社を集積する福岡県も動き出している。福岡県半導体・デジタル産業振興会議を設立し、とりわけパワー半導体を中心とするグリーンデバイスの振興を図ることを打ち出している。服部知事は、明確に以下のように言い切っておられる;
「半導体関連企業の誘致については、全力を挙げて取り組む。今後5年間で100万m2の工業団地を作る予定であり、臨海部では新松山、そして内陸では用地買収2カ所の調査活動に入っている」。

九州シリコンアイランドの大復活は、はっきりと目に見えてきた。重要なことは、九州エリアは日本のお家芸である自動車産業も集積しているわけであり、これと半導体産業のクロスオーバーが十分に期待できるところなのだ。また、人材の豊かさという点でも福岡県における理工系の人材は、東京に次ぐ2番手の存在となっている。半導体市況は一時的なトーンダウン現象に入っているが、九州があげる雄たけびはますます強く、たくましくなるばかりなのである。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

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