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ICパッケージの供給網は日本勢強し〜イビデン、新光が大型投資

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半導体パッケージ基板への関心が、否が応でも高まっている。ナノプロセスの微細化に限界が見えてきており、三次元パッケージによりこれをブレイクしようという動きも多く出てきた。

パッケージ基板市場は、今後年率10%前後の二桁成長を果たし、2026年前後には現在の市場規模から倍増し、150億ドル(約2兆円)というとんでもないところまで拡大するとの見通しが出てきているのだ。実のところ、半導体パッケージ基板の供給網を見れば、日系勢は圧倒的なシェアを持っている。

難易度の高いインテル向けパッケージ基板でトップサプライヤのイビデンは、2021年5月に1800億円の新工場建設計画を公表した。既存の岐阜県大垣市の河間工場をスクラップアンドビルドし、23年度中にも新棟を稼働させるというのだ。さらに同社は、新たな拠点工場を岐阜県大野町内(用地15万m2)に新設するというのであるからして、アクティブな姿勢は強まるばかりだ。
 
新光電気工業も長野県千曲市で22年度から新棟着工に踏み切り、24年度に稼働させる。22〜25年度で総額1400億円を投資するというのであるから、ただ事ではない。とりわけFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)基板の生産能力は現在に比べて50%程度も引き上がる見通しなのである。
 
凸版印刷は、新潟工場を中心にGPU/通信用SoC向けのパッケージ基板を強化しており、112億円の追加投資を実行している。京セラは、京都の綾部第3工場にラインを導入し、鹿児島県川内でもFCBGA基板を拡大強化している。
 
こうしたパッケージ基板を製造するために必要な装置・部材のサプライチェーンについても、現状は国内勢有利の状況が続いている。パッケージ基板では、基板そのものが反らないように内装コア機材が必要であり、その供給メーカーは事実上、昭和電工マテリアルズがデファクトを握っている。また、ガラスクロスなどの素材面では日東紡の特殊な低熱膨張ガラスがないと作れない状況なのである。
 
この分野で活躍している日本メーカーをラインアップすれば、ラミネートのところで藤森工業、味の素、ニッコー・マテリアルズの存在感が強い。CO2レーザーでは三菱電機が圧倒的シェアを持っており、UVレーザー穴開けではビアメカニクスが健闘している。無電解銅めっきとなれば上村工業、JCU、さらにパターン形成・レジストのところでは旭化成、ウシオ電機、オーク製作所などが活躍している。
 
もちろん、外国勢のキャッチアップの動きも出てきている。とりわけサムスン電機がFCBGA向けのパッケージ基板に本格参入を決めており、ベトナム工場内に大型工場を建設することを決定した。LGイノテックもFCBGA参入を検討している。また、オーストリアのAT&Sは、マレーシアに高性能半導体パッケージ基板の新工場建設を決めている。
 
中国基板業界においては、アヴァリー(Avary)がFCCSP対応のパッケージ基板の量産に乗り出しており、さらにFCBGAの新ラインも強化している。深南電路は広州に新たなパッケージ基板の拠点を考えており、FCBGA基板に本格参入する。
 
台湾TSMCがつくばの産総研の中に建設している研究開発センターの柱は、パッケージ分野である。これを契機に、様々な動きがさらに出てくるであろう。特に注目されるのは、パッケージファンドリを手がける日本企業が出てきたことであり、福岡のピーエムティーは本格的な事業展開を計画している。同社は、「超精密ナノステージ」を武器としており、100GHz高周波デバイスパッケージ、SiCパワーデバイス両面電極パッケージなどの試作開発に成功しており、2層再配線構造の技術を持つなど高付加価値分野で活躍すると見られ、今後、目が離せなくなりそうだ。

産業タイムズ社代表取締役会長 泉谷渉

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