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メタバースが通信トラフィックを一気に押し上げ、データセンター投資50%増

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「世界で定着してきたWeb会議システムが激変しようとしている。Teamsがメタバースに置き換わると約3倍近い画像データ転送になると見られている。こうしたこともあってGAFAMは22年のデータセンター投資を前年比50%増に引き上げる考えだ」。例によってある種の優しさと、そしてまたある種の厳しさを込めた視線でこう話しかけるのは、今や我が国ニッポンを代表する半導体アナリスト、南川明氏である。日本電子デバイス産業協会(NEDIA)が、1月24日に開催した新春セミナーにおける興味深い談話である。

「メタバース」とは、meta(超〜)とuniverse(宇宙)を組み合わせた造語であり、仮想空間において現実世界のような活動ができる技術やサービスのことをいう。言い換えれば、3次元の仮想空間にもう一つの現実世界が構築されるのだ。

端末として重要なものは、何と言っても現在のメガネにほぼ近い軽量小型のスマートグラスであり、22年中にはアップルの画期的なタイプがいよいよ上市されるという。そしてまた、スマートウォッチは日常的なヘルスケア端末として重要視され、かつメタバースの世界を構築する上でも大切な機器になる。つまりは、現状において世界の多くの人たちにとって必需品となったスマホのように、誰もがスマートグラス、スマートウォッチを身に着けていくという社会が来ると言っても良いだろう。

メタバースの仮想空間は、音声チャット、音声認識、そして即時の音声翻訳を可能とするわけであるから、もはや通訳の不必要な時代になってくる。国際会議に出かけても、他国との重要商談に出かけても、はたまたどんな外国旅行の現場においてもメタバースは大活躍し、「言語の違いの壁」を越えてくるというのだから、もはやこれはただ事ではない。もちろん、イベント、コンサート、ツアー、ショッピングもメタバースの仮想空間でリアルな体験ができる。教育や医療の現場においても空間と時間を越えていくのだ。

「メタバース時代になれば、コンピューティング能力は現在の1000倍が必要になるとインテル幹部は説明している。また、GAFAMでのデータセンター投資は今後3年間にわたって年率50%程度の増額が見込まれる。これは半導体業界にとってすさまじいインパクトになる。GAFAMのフリーキャッシュは潤沢であり、10兆円の自社株を買ってもなお25兆円の投入資金がある。楽勝でメタバースに対応できるのだ」(南川氏)。

マイクロソフトが8兆円(編集室注:正確には687億ドル)を投じ大型M&AでビデオゲームメーカーのActivision Blizzardを手に入れたのも、メタバース時代を考えてのことであろう。アマゾンも当然のことながら、コンピュータインフラ事業やEコマースプラットフォームを構築することで、次のビジネスの柱をひたすらメタバースと考えているのだ。グーグルは世界最大のデータベースをマネタイズする構えであり、インターネットよりもはるかに巨大なデータ量が発生するメタバースのデータ収集に余念がない。

「SDGsの革命により世界の半導体生産は今後年間あたり5兆円の底上げを続けていくだろう。そして、この底上げ分はこれまでのメモリやCPU、GPUよりもパワーデバイス、アナログ、センサに比重が割かれるのは間違いない。ここに日本勢の出番がある。しかしメタバース革命に対応する半導体技術に磨きをかけなければ、ニッポン半導体はまたしても世界の流れに取り残されてしまうのだ」(南川氏)。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

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