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SK Hynixの強さは半端ではない!〜会長崔泰源は韓経済界トップ、11兆円投入

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韓国SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長は先ごろ、就任23周年を迎えた。同会長は1998年、父親である第2代会長の逝去を受けて、なんと38歳という若さで同グループのトップとなったのだ。崔会長は、就任後、半導体を徹底的に強化し、成長の柱とする一大戦略を打ち出した(編集室注)。これが超当たったのである。

2020年の半導体メーカー売上高トップ10(Gartner調べ)を見れば、SK HynixはIntel、Samsungに次ぐ世界ランキング第3位に位置している。そして、Intelの2020年における伸び率が前年比3.7%増、サムスンの同7.7%増に対し、SK Hynixは同13.3%増という高い成長率を達成したことに注目する必要がある。

もっともSK Hynixは、2018年に4兆円近い売り上げを上げているわけであり、これに比べてはまだ低い水準なのである。しかしDRAMで圧倒的に強く、そしてまたキオクシアへの投資にも踏み切り、現在はIntelのNANDフラッシュメモリ事業の買収手続きを進めている。関係各位の承認を得て、買収が完了すれば、NANDフラッシュメモリ市場で約19%のシェアを占めることになり、トップのサムスン電子に次ぐ売り上げ第2位に躍り出る見通しだ。

また、ここに来ては、非メモリ半導体事業の推進を打ち出しており、シリコンファンドリの育成と、イメージセンサ向けの素材分野の強化も積極的に取り組んでいる。半導体素材の垂直系列下という点にも注目する必要がある。2015年には、半導体用特殊ガスを製造するOCI Materials(現SK Materials)を買収、加えて2017年には半導体用ウェーハメーカーのLG Siltronを買収し、SK Siltronを立ち上げた。

この崔会長の多角的な事業展開には、目を見張るばかりだ。同会長は、赤字続きでどうにもならなかったHynixを2011年に買収し、苦闘の末にグループの中核をなす系列会社として、半導体世界市場を率いる企業へ育て上げたのであるから、その敏腕ぶりはつとに有名なのである。

韓国政府とSK Hynixは、ソウルから車で1時間の距離の京畿道に超大規模な半導体工場の建設を進めている。これは、半導体クラスターと呼ばれており、28年までの10年間で11兆円を投資する計画であり、まさにサプライズなのだ。直近の設備投資としては、中国無錫工場におけるDRAMの強化を進めている。これには約1兆円を投入する考えだ。また、利川工場のM16に対する装置の導入も進めており、これまた大きな投資になっていくだろう。

2021年5月末時点のSKグループの総資産額は20兆円を超えてきており、1998年当時に比べ7倍の成長を果たしている。すでに現代自動車グループを上回り、Samsungに次ぐ時価総額を達成している。しかも、崔会長は韓国の経済団体のトップとも言うべき大韓商工会議所の会長に就任しており、経済の拡大とともに社会・文化など全般的な企業の役割を広げる運動に取り組んでいる。社会に貢献することが一番大切と考えており、これまでにも社会的価値として、約1兆円を生み出したことも明らかにしている。

日本びいきであることも間違いはない。キオクシアに出資するだけではなく、かねてより東芝とのパートナーシップも築いてきた。今後は、日本の大学関連の開発にも深く関与していく考えである。Samsungと比べての知名度が日本においていま一つであることがボトルネックであり、最近ではひたすら日本企業とのコミュニケーション、新たな事業提携を強く望んでいるという。

産業タイムズ社 会長 泉谷 渉

編集室注
当初、SKグループで代表的な企業は通信業者であるSK Telecomであった。半導体に進出したのは、現代電子と金星半導体(現LG: Lucky-Goldstarグループ)との合弁で設立したHynixが傾き、思い切って投資・買収した2012年である。

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