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ソニー、株主の半導体部門分離要求を拒否!!〜19年度、初の国内首位へ

「これは何ということだ。あり得ない。この十数年間、日本半導体の盟主としてトップを走ってきた東芝がソニーに抜かれてしまうのか(編集注)。時代は変わったと言うしかない。」これは、電子デバイス産業新聞の記事を見て、ひたすら唸り続けたベテラン証券アナリストの言である。

電子デバイス産業新聞の集計によれば、国内半導体メーカー15社の2019年度売り上げは、18年度比3%減の約5兆1000億円となる見通しである。ちなみに世界の半導体メーカー上位15社の2019年の売り上げ見通しが18年比18%減であるのに対し、日本メーカーの傷の方が小さいとも分析される。しかし、一大部門のメモリ部門で東芝ただ1社しか戦うメーカーがいない、ということがたまたま傷の浅さにつながったわけであり、決して評価はできない。

さて、これまで首位を走っていた東芝メモリの2018年度売り上げ実績は1兆2639億円であったが、2019年度はメモリ不況を反映し、今のところマイナス23.3%の9700億円に留まる見込みである。もしかしたらこれを下回ることも十分に考えられるという記者の声も多い。これに対してソニーの2018年度半導体売り上げ実績は8793億円であったが、2019年度は二桁成長を遂げ、12.6%増の9900億円が見込まれている。ここに来て、ソニーの主力製品であるCMOSイメージセンサがスマホのカメラに2個搭載から3個搭載になりつつあり、これが大きく業績を押し上げている。場合によってはソニーの売り上げはさらに増額修正し、1兆円を超えてくるという見方もあるのだ。

こうした状況下でソニーの「モノ言う投資家」は、半導体部門を分離しての上場を要求してきた。仮に分離上場すれば、ソニーの企業価値は、25年度に予想される営業利益3040億円に13倍をかけた、3兆〜4兆円になる見立てだという。

これに対して、ソニーの取締役会は全会一致でこのモノ言う株主の提案を拒否した。理由はいかにもソニーらしい。それは、現在のCMOSイメージセンサは、ゲーム機のプレイステーションのシステムLSIで培った先端MOSLSI技術を応用したからこそ実現できたというものである。つまり、社内に素晴らしいセット製品があって初めて半導体が伸びるというソニーの考え方は、それこそトランジスタラジオの時代から変わっていないのだ。つまり、分社化してもソニーの他の事業との相乗効果が少なくなってしまうことを気にしているのだ。

それにしても、ソニーのCMOSイメージセンサはとんでもない領域に入ってきた。何しろ、ファーウェイなどはいずれCMOSイメージセンサを1台のカメラに7個以上使うとさえ言っている。黙っていてもスマホ向けは圧倒的にソニーが勝っていくことになる。一方で、ソニーは自動走行運転に向けてセンサフュージョン技術を磨いているが、ここでもCMOSイメージセンサが大活躍する。一説によれば、レベル4以上の自動走行運転になれば、1台のクルマになんと30個のCMOSイメージセンサが搭載される可能性もあるというのだ。いまや30兆円企業に躍進した世界的な自動車メーカーであるトヨタは、車の予防安全性能評価プログラムで最高ランクを受賞しており、ここにはすべてソニーのCMOSイメージセンサが採用されている。

しかしよく考えてみれば、世界で通用するブランド、そして品質、そして開発力を備えた日本企業と言えば、誰でもトヨタとソニーを挙げるだろう。IoT時代における次世代自動車がソニーとトヨタのビッグマッチングで日本に大きな利益をもたらすことを信じて止まない。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注)東芝の売上額は、これまで東芝として括られていたが、東芝メモリと、メモリ以外の東芝デバイス&ストレージに分かれたことで、それぞれの企業に分割された。このため東芝メモリの売上額は東芝よりは落ちた。加えて、2017年、18年のメモリバブルがはじけて、19年はメモリ単価の下落による売上額低下が著しい。NANDフラッシュのビット需要は年率20%程度で伸びているようだが、単価の低下はそれ以上に激しく売上額の低下につながっている。

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