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一転、WD巻き込み売却はSK降ろしの茶番劇〜フラッシュあっての東芝

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「東芝とWD(Western Digital)の対決をあおる報道は、まったくもって茶番劇を伝えていたにすぎない。San Diskの時代からWDは東芝との間で17年にも渡る稀にみるパートナーシップの成功を実現している。また、東芝四日市工場にはWDの精鋭ともいうべきエンジニアが数百人はおり、次世代プロセス開発という点で切っても切れない関係にある」。

こう勢いづいて語るのは、筆者が親しくする半導体アナリストである。彼の言いたいことは、つまり東芝とWDはどうあっても連合する関係であり、WDを抜きにした東芝メモリ売却はほとんど考えられないということだ。筆者も東芝四日市工場の幹部や首都圏にいる東芝の技術陣にかなり突っ込んだ話を聞いたところ、新聞、雑誌を含めた一般報道は、全く素人の推測によるバカげた記事が多いとのコメントだ。

ところで筆者は、2017年8月25日付で電子デバイス産業新聞の電子版のコラムに「東芝再建はフラッシュメモリ売却なしに達成という衝撃シナリオ」という記事を書いたところ、多くの方々から賛否両論の反響をいただいた。このコラムの中で筆者が一番言いたかったことは、あれだけの一大損失を出しながらも東芝の17年4〜6月の連結業績は素晴らしい数字であったということだ。売上高は前年同期比8%増の1兆1436億円、そしてなんと営業利益は同約5倍の967億円を上げている。ひとえにフラッシュメモリ事業が急速に伸びていることが貢献している。

このままいけば2017年度の東芝の営業利益は5000億円近くに達するということも十分に考えられる。要するに「打ち出の小づち」とも言うべきフラッシュメモリを切り離して東芝の再建を果たすことは難しい、というのが筆者の判断なのだ。むしろ東芝の抱えるハードディスク4500億円、パワーデバイスを中心とする半導体部門2500億円を売却した方が得策であると思えてならない。

そんなことを考えていたら、いきなり出てきた報道が「東芝、メモリ売却をWD陣営に絞り込み」というサプライズな内容であった。

「ついちょっと前まで大喧嘩をしていたくせに、いきなり親密になるのは男女の情痴の芝居を見ているようでつらい」という意見を出す人も多い。しかし、前記のアナリストが指摘するように、東芝WD連合と競合する韓国SK Hynixを仲間に入れる買収劇は何としても潰さなければならないとの考えが日本政府筋および米国政府の首脳陣には確実にあったのだ。

それ故にWDは訴訟にまで持ち込んで、この話をぶっ壊しにかかった。その上で再び東芝に急接近し、事業売却をWD陣営に絞り込ませるという策に出てきた。

現状で予想されているのは、いわゆる日米連合による約2兆円の調達である。出資額でいえば産業革新機構が5000億円、KKRが3000億円、政策投資銀行が2500億円、WDが2000億円、東芝が1000億円、その他が郵貯銀行などと予想されている。これにSMBC、みずほ、三菱東京UFJなどのメーンバンク3行が6500億円を融資すればトータルで2兆円の金が確保できる。

それにしても、これだけコロコロと変わる東芝首脳部の判断はあまりにひどいと言えるだろう。しかし一方で、日米の政府筋が既にこの茶番劇のシナリオを頭から書いていたとしたら何とすばらしい作劇術とも言えるのだ。大体が東芝全体の営業利益の9割以上稼ぐフラッシュメモリを全面売却することはどうあってもあり得ない。それこそ東芝本体を非上場会社に落とし込んでも、東芝メモリのIPOを取得した方がはるかに将来性はある。

はっきり言えることは、Samsungの巨大投資が次々と実行される中にあって、東芝WDは再び団結し死に物狂いで戦わなければ、それこそ韓国勢に全てを握られてしまう、という本当のクライシスが来るということだ。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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