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NANDフラッシュは超高層ビルに〜東芝は驚異の200層開発をアナウンス

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「NANDフラッシュメモリーはIoT時代の本格到来にあって、今やサーバー用途が急拡大している。クラウドサービスの普及により、フラッシュメモリベースのSSD市場は、2019年には1兆円を上回ってくる見通しだ。東芝はこの3次元タイプにおいて、200層を積み込む技術開発をひたすら追求している」。

静かな口調ではあるが、眼光は炯々として鋭くこう語ったのは東芝の副社長であり、ストレージ&デバイスソリューション社社長の成毛康雄氏である。これは2016年12月22日に産業タイムズ社とセミコンダクタポータルの共同主催で開催された「生誕70周年を迎えるトランジスタの未来カンファレンス」の講壇における発言である。

実のところ筆者はこれを聞いて何とサプライズなことを言っておられるのか、という思いでいっぱいであった。NANDフラッシュメモリーの3Dタイプは、現時点で東芝とサムスンが発表している64層が最高レベルであり、この上をはるかに行く200層というのは考えられない数字であったからだ。

筆者はこのカンファレンス開催の2日前には東芝四日市工場を取材しており、工場長の松下智治氏からも3D NANDに賭ける並々ならぬ決意を伺っていた。周知のように東芝/ウエスタンデジタル連合は1.5兆円を投じてY 6棟を2月にも着工することとなり、サーバー向けの主戦場となる3D NANDを徹底強化する作戦に出てきたのだ。

3D NAND市場は、ギガバイトベースでいえば2015年から2020年まで何と年率40%で伸びていくと予想されている。とりわけIoT時代に対応しデータセンターの新増設ラッシュが続くことから、立体構造の三次元NANDは爆発的に成長するといわれている。

NANDの世界においては、現状で韓国のサムスン電子(世界シェア32.6%)と東芝/ウエスタンデジタル連合(世界シェア36.4%)がいわばガチンコ勝負の様相を呈している。東芝としては64層タイプのサンプル量産で市場を先行し、生産キャパ拡大を実行することでこの激烈な戦いに勝利していく考えだ。3D NANDの世界は今や高層ビル建築ともいってもよく、このカンファレンスが行われている最中に韓国のSKハイニックスが2017年後半から72層のNAND型フラッシュメモリーを量産すると発表した。

ところで筆者は成毛副社長からアナウンスされる前にすでに東芝は96層の開発にほぼ成功しており、128層開発にも踏み込んでいると聞いていた。ところが、である。成毛氏はあっさりと社内的なクリア目標として200層以上にチャレンジしていると述べたのだ。

2025年段階では、この3D NANDは価格面においてもハードディスクに追いつくといわれている。これを達成するためにはまずは、各社とも3D NANDの多層化戦争を勝ち抜く以外にないだろう。東芝の場合はナノインプリント技術(キヤノンと大日本印刷と共同開発)を持つため、微細化、コスト削減に有利といわれている。加えて今回着工のY6棟は生産システムにAI(人工知能)を積極導入し、ほぼパーフェクトのIoT生産システムを確立することになる。Y6の後の計画として注目されるY7棟についても四日市で建設することはほぼ間違いないと筆者はみている。巨大投資の苦しさに耐え抜いて、東芝が一躍フラッシュメモリ世界大戦争の真っただ中に突入し、勝ち名乗りを信じての雄たけびの声を上げ始めたのだ。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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