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「トランプは笑うとかわいい」〜強い米国の復活は日本輸出企業に追い風

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トランプ政権の誕生で「世界の株価が大暴落し、日本は超円高で苦しむ」というシナリオを書いたジャーナリスト、評論家、アナリストは一体どうやってその責任をとるのだろう。メディアの予想を全く裏切り、トランプが次期大統領に決定した途端にアメリカの株価を一気に押し上げる原動力となった。日本の株価もこれに追随し、約1年ぶりの高値をつけ、1万8000円を軽々と突破していった(2016年11月22日現在)。円安も加速し、1ドル110円台という信じがたい水準となった。

何しろトランプは前代未聞の100兆円の公共投資を断行すると言っており、これが実現すれば建設機械のコマツ、日立建機はあまりの嬉しさに万歳三唱することだろう。またスマートホームやスマートオフィスが一気に促進されることから、建材関連のメーカーやパナソニックなどもまた歓喜の声をあげるだろう。これから計画される新幹線も日本方式の採用は有力視されており、日立、三菱電機、東芝も一気に儲けを増やしていくだろう。

そしてまた二律背反ともいうべき政策も出しており、35%の法人税を15%に下げ、個人向け税金も下げるという大減税を行うことにより、アメリカ企業及びアメリカ国民の懐はあったかくなる。これによりプレミアム家電、超高級レベルの日本の食品などの輸出が伸びるだろう。

そしてまた米国経済が微動なき逞しさを見せ、現在の2%成長を4%に持っていくという信じがたいトランプの政策が実現していけば、ドルは圧倒的に強くなるわけであり、円高にふれるということはほとんど考えられない。これが輸出型産業には大きな福音をもたらすことは間違いなく、ソニー、キヤノン、エプソンなどはすでに株価が上昇し始めている。

トランプショックはマイナスのものではなく、プラスのものに動いている。日本国内の設備投資にも影響してくることは確実であり、これまで投資をためらっていた各社は年明けから再び大型投資案件をきっちりと検討していくことになるだろう。

日本の半導体や一般電子部品の企業にもトランプによる追い風は必ず吹くと信じている。どういうわけかシリコンバレーでは反トランプのデモンストレーションが続いているが、これは間違いだろう。5兆円という巨額の半導体業界史上最大の買収劇となったクアルコムのNXPセミコン取得、インテルのアルテラ取得など期待すべきIoT時代に向けて、米国企業は着々と準備を進めている。

日本勢においてもルネサスのインターシル買収、東芝四日市の1.5兆円を投じるフラッシュメモリー新工場投資など、これまたIoT時代を迎えての作戦展開が始まっている。トランプ旋風により米国経済が復活すれば、スマホも各種IoT端末もコネクテッドカーも増えてくるわけだから日本のデバイスメーカーにとっても悪いことは一つもない。

我が国にとって最大の輸出国は中国ではない。今も昔も米国が輸出国のトップであり、GDP世界第1位の国と世界第3位の国が軍事同盟を結んでいる意味をよく考えてみる必要がある。何しろ、世界のGDPの3分の1は日米が握っているのだ。トランプ次期大統領の今後の発言にはよくよく注意する必要がある。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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