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電子部品業界の巨大設備投資!!〜半導体並み、キーワードはカーエレ

一般電子部品業界の設備投資が巨大化の様相を見せ始めた。日本企業が世界シェアの約4割を握るこの業界にあって、今や1000億円を超える水準の投資が続出しており、半導体業界並みの設備投資リード役になろうとしている。村田製作所、TDK、日本電産はいずれも売り上げ1兆円企業となっているが、2015年度は過去最高水準の投資となっており、いずれもキーワードは次世代のインテリジェント自動車のデバイスに向けたものなのだ。

TDKは2018年3月期に売上高1.3兆円、営業利益1300億円をめざしており、設備投資はこの3年間で3500億〜4000億円を充当する。これはどこかの半導体メーカーの投資計画ではないのか、というほどの水準にあり、「サプライズ」と叫んでしまいたくなる。こうした積極投資でクルマ向けの売り上げ比率を現状の17%から30%へ拡大するという。

村田製作所も2015年度の設備投資額は過去最高の1500億円を投入するとアナウンス。エネルギーやメディカル・ヘルスケアなども強化する。もちろん、得意とするスマートフォン、自動車向けの設備もしっかりと増強していく。絶好調のSAW(表面弾性波)フィルタについても、引き続き増産投資に注力していくのだ。

マイクロモーターの世界チャンピオン、日本電産の2015年度設備投資もアクティブであり、前年度比24%増の720億円を計画する。メキシコ、タイ、北米、フィリピンの子会社において、自動車用や精密小型モーターなどの生産増強を行う。同社は、2020年度に車載事業だけで売上高7000億〜1兆円(14年度実績は1970億円)を目指すとしており、モーター単体供給から脱却しモジュール化を推進していく構え。M&Aも行使する考えであり、約5000億円の売り上げ創出も考えている。

その他、太陽誘電も2015年度設備投資は前年度の2倍以上となる400億円を投入、既存拠点でMLCC(積層セラミックコンデンサ:Multi-layered ceramic capacitor)の生産能力を約10%引き上げるほか、新潟太陽誘電では新棟建設を計画している。同社は今後3年間に1000億円の設備投資を断行する姿勢を固めており、スーパーハイエンド品と位置づける高付加価値品を中心に生産増強を進めてゆくのだ。アルプス電気も15年度設備投資は前年度比53%増の340億円、スマホカメラ向けのアクチュエータ、車載用電子部品の増産に振り当てていく。

純正に半導体産業界に身を置く人たちは、こうした一般電子部品業界の積極投資をうらやましい、と思いながら直接自分たちには関係がないと考えている人が多いようだ。しかし、これは大きな間違いなのだ。最近の傾向はチップ単体のビジネスからモジュールでの売り込みに変化している。モジュールで勝負する一般電子部品メーカーは今後、多くの半導体チップを購入していく、つまりは良きお客様となっていくのだ。そしてまた、IoT、M2Mのブームが到来し、ビッグデータ、さらには膨大な量のセンサーが重要になってくる状況の中では、半導体、ディスプレイ、回路基板、電子部品という区分けは限りなくなくなってくることだろう。まさに「電子デバイスによる総力戦」の時代がやって来たのだ。

(株)産業タイムズ社代表取締役社長 泉谷渉
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