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3省共同オールジャパン医療機器開発が離陸!!〜半導体はヘルスケア端末に期待

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「国内の医療機器市場は現状で約2.7兆円となっているが、金額ベースでは治療機器(カテーテル、ペースメーカーなど)が53%、診断機器(内視鏡、CT、MRIなど)が26%を占めている。一般的に治療機器の成長率が高く、市場規模も大きい。医療機器の種類は非常に多く、約30万種が存在すると言われている。この医療機器分野に大きく期待できるとして成長戦略の柱の1つに据えた」(経済産業省幹部)。

現在、医療機器の世界市場は約40兆円で、2018年には約55兆円に引き上がり、今後10年以上にわたって約8%の成長率を維持していくと予測されている。世界市場シェアは米国が約40%を占めており、日本は人口が多くはないものの、米国に次ぐポジションを占めている。なぜならCTスキャナーの世界出荷台数の約半分と、MRIの約1/3がこの日本にあるからだ。世界最先端の診断を行う環境が、ハード面で見ても突出していることがよく分かる。

ところが、主要医療機器メーカーの売り上げ順位を見れば、13年度時点で1位が米ジョンソン&ジョンソン、2位が独シーメンス、3位が米GE、4位が米メドトロニック、5位が米バクスターとなっている。それどころか、1位〜20位までをすべて欧米勢が独占している。日本勢はわずかにテルモ(21位)、オリンパス(23位)、東芝(25位)がランク入りするのみだ。

「こうした状況を打開するとともに、企業間連携などを通じて、開発・事業化を加速していくことが重要だ。このためには官民挙げての成長戦略とその実行が必要であり、医療分野の研究開発の司令塔機能として、4月に創設される日本医療研究開発機構の役割は実に大きいものになると考えている。そしてまた、医薬品・医療機器開発、再生医療研究を加速させる制度設計が重要だ。経産省においても、医工連携による医療機器開発の予算案は昨年度より上乗せの31.9億円、世界最先端の医療機器開発には、大幅上乗せの41.5億円を計上している。さらにロボット介護機器開発・導入促進には25.5億円を投入する方向だ」(経済産業省幹部)。

オールジャパンの医療機器開発には、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省連携の体制が取られている。そのため15年度では、文科省は医療分野研究成果展開事業に21.7億円の予算を配分する。厚生労働省は、医療機器開発推進研究事業に11.7億円、医療機器の審査の迅速化・質の向上と安全対策の強化に12.1億円、国産医療機器創出促進基盤整備に0.7億円を予算案に計上している。

政府はオールジャパンの総力戦体制を掲げたことで、日本の医療機器市場を20年までに3.2兆円に引き上げる目標を立てた。医療機器の輸出額についても、現状の5000億円を倍増し1兆円とする計画だ。また、何としても5種類以上の革新的医療機器を実用化させていく考えだ。

こうした様々な積極策により、20年ごろまでに日本の医療機器の事業規模は4兆円を超えてくるだろう。医療サービスや医療機器の国際展開支援事業も本格化し、まさにナショナルプロジェクトとして最先端医療の国内外への展開が加速していくのである。

しかし電子デバイス産業の視点で見ると、医療機器市場が40兆円であっても、そこに使われる半導体はせいぜい1兆円どまりと試算されている。つまり大型医療機器の半導体搭載比率は2.5%のコストしか占めないのだ。

ただ一方で、スマートフォンやタブレット端末を使った医療サービスの世界的な広がりや、ヘルスケア機能を搭載したウエアラブル端末の普及など、ITと医療のクロスオーバーが始まっている。また、生分解可能な材料で作られた治療用の電子回路が開発されるなど、既存の医療機器以外の分野で使われる半導体デバイスの成長が期待できるだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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