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2015年の半導体設備投資は予想に反し、かなり増えるとの予想も出てきた!!

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「半導体設備投資をめぐる状勢が変化しているように思う。これまでの予想では2015年は14年の593億ドル(現在の為替レートで約7兆円)で収束すると思われる。2015年については536億ドル(同約6兆3000億円)に減ってくると見込まれていた。しかし意外と減らないと見る向きも多い。もしかしたら増えるとの強気の観測もされているのだ」。

こう語るのは、日本を代表する半導体アナリストのベテラン、南川明氏(IHSグローバルの日本調査部ディレクター)である。南川氏をはじめとするIHSグローバルのアナリストたちが2015年を少しネガティブに見るのは理由がある。その最大のものは中国リスクであり、外資系工場の進出による設備投資が止まってきたことによる雇用不安、および一時期の米国のようなマネーゲームが横行していることなどを懸念してのことだ。中国政府も2015年は成長率7%の安定志向と言い出し始めたが、実体経済はそれほど成長しないのではないか、とみる人は数多い。習近平氏の指導体制の弱さも追い討ちをかけている。

 世界の成長を支えるBRICsの諸国も決して情勢は明るくない。ロシアについてはかなりのマイナス成長の予想も出てきた。シェールガス革命などの影響で石油と天然ガスをはじめとするエネルギーバブルが崩れつつある。ブラジルも成長が鈍化しており、インドもまた成長率は下がってきた。この10年間はBRICsが世界経済のけん引役であったが,ここにきて情勢は一変したのだ。G20は2018年までにGDP2.1%底上げを明記したが、はてさて達成できるかどうか危ぶむアナリストは多い。

 こうした情勢下で米国の株価は1万7000ドルを超え過去最高水準を維持している。なんだかんだといっても、シェールガス革命の恩恵は凄まじいものなのだ。エネルギー輸出国に転じ、製造業回帰が始まった米国経済は強い、と世界のエコノミストは見ている。消費税引き上げを1年半繰り延べた日本については、不安要因はあるものの株価は7000円台から1万7000円台に一気にアップしている上に、超円安の追い風で、このままで行けば2014年の上場企業各社のトータル利益は過去最高とまで言われているのだ。BRICsの成長が大きくトーンダウンしている現状にあって、世界経済を引っ張るのは何と久方ぶりに日米両国とまでいわれはじめた。

 こうしたことを反映し2015年の世界半導体市場は、2014年の伸び率9%に対し6%に下落するとIHSグローバルは予測している。この影響で半導体設備投資も少しの減額は仕方ないとの見方であった。ところが、である。台湾の雄、TSMCは2014年の設備投資100億ドル(約1兆2000億円)に対し30%も上げてくるとの強気姿勢を内部的に固め始めている。iPhone 6も好調に伸びており、一方で来年前半にも市場投入されるといわれるグーグルフォンのインパクトが大きい。いずれのスマートフォンもARMのCPUコアを採用しており、TSMCがほとんどそのファンドリを引き受けているために投資を増やさざるを得ない情勢なのだ。グーグルフォンは実に最低価格5000円という驚きのスマートフォンであり、これはどう見ても中国の安物スマホを叩き潰す戦略であると見てよいだろう。このスマホはしかし、機能を付加していくタイプであり、高いものでは1万円になるという。ちなみに、グーグルフォンのロジックICについては、東芝が全量の受注に成功しており、これを担当する大分工場は久方ぶりの活況にわいているようだ。

 サムスンもまた投資額を上げてくるだろう。なにしろ、京幾道の新工場にサプライズの1兆6000億円を投じるとアナウンスした。これはおそらく半導体の歴史上、世界最大の工場になるだろう。おそらくはM2M(machine to machine)やIoT (Internet of things) の社会が到来することで大量の半導体が出てくると予想し、メディカル、ロボットなどのチップの増産に早くから備えようという考えがあると見てよい。サムスン自体の業績はあまりよくないが、「苦しいときほど巨大投資」というサムスン戦法をまたしても使おうというのだ。サムスンの2014年半導体設備投資は約120億ドル(約1兆4000億円)との実績になると見られているが、これまた2015年は20〜30%増に引き上げると見られるのだ。インテルの2014年半導体設備投資は110億ドル(約1兆3000億円)であるが、パソコンが伸び悩むこともあって2015年はほぼ横ばいとみられる。ただし、マイクロソフトを使ったPCタブレットが出てくることで、インテルには追い風が吹くため、意外と投資を増やしてくる可能性もある。グローバルファンドリーズや東芝も決して2015年の投資には手を抜かないだろう。東芝は三重県四日市の新工場に5000億円を投じる計画を明らかにしている。

 「中国スマホも今や絶好調であり、シャオミなどは世界プレーヤーに育ってきた。スマホの最終戦争が2016年から開始されることを見込んで、半導体各社は積極姿勢に転じていくことが十分に考えられる。そして何よりも世界が注目するのは今や世界最大手のスマホメーカーであるサムスンの次世代機種「GALAXY S6」の仕様と価格がどうなるかであろう」(南川氏)。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉
(2014/12/10)

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