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2014年の半導体設備投資は前年比15%増?〜中国製スマホが投資をストップ

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2013年の世界の半導体設備投資は約5兆円で横ばい、と分析されている。ご存じのように半導体の世界市場は30兆円で微増状態であるが、かつてのような高成長はとても望めない状況になっている。それでも多くの調査会社やアナリストは、2014年の半導体設備投資が15%増と予想する向きが多い。基本的にはフラッシュメモリやDRAMなどの投資が増えてくると見通しているからだ。

ところがどうだろう。大きな声では言えないが、DRAMはともかく、フラッシュメモリの各社の製造現場は決して活況ではない。それどころか、受注する量が目に見えて減っている。このため予定していた設備投資を一部延期するような動きも出てきている。

この理由はいったいなんだろう。一つには中国製の安物スマートフォンが横行し始めていることで、サムスンのギャラクシー、アップルのiPhone が急速に止まってきたことが大きい。何しろ安物スマホであるから、それほど高度の半導体を使うわけもなく、メモリについても一世代前のもので十分なのだ。スマートフォン自体は2013年の世界出荷9億5000万台(なんと2012年に対し3億台も増加)となり(編集室注1)、2014年も12〜13億台は行くとも言われている。つまりは、IT全体が不調の中にあって、唯一の高成長製品なのだ。

ところが、中国製スマホの単価は、せいぜい1万5000円程度であり、これがいかに急増していったとしても、半導体需要を大きく膨らましてはくれない。加えて、日本だけの事情で言えば、4月からの消費税増税に伴う電子機器の買い控えがもう始まりつつある。

一方、1兆円という巨額を投資する台湾のTSMCは、さきごろ16nmからメタル線幅を変えない、との見解を打ち出したという内部情報を筆者は聞いている(編集室注2)。つまりは、現在のシリコンを使ったプロセスではもはや微細化の限界に来たというのだ。これに加えてインテルは、450mmウェーハ導入に積極的であったが、これを繰り延べするという方向性を打ち出した。大口径化と微細化の時代が終われば、装置メーカーや材料メーカーにとって、開発投資で儲けることができない。ましてや巨額の設備投資には結びついていかない。

「半導体産業は、ポストスマホのスマートウォッチ、スマートグラスなどのウエラブル端末、さらには医療と半導体のクロスオーバー、次世代自動車への搭載増加などのプラス要因があり、ここ10〜15年くらいの間には世界市場40兆円は見通せるだろう。しかしながら、間違いなく成長率は鈍化してきた。これからは年率3%程度で伸びれば良い方だろう、と考える方が安全かもしれない」。

国内で最も著名な半導体アナリストが語った言葉ではある。生産の伸び悩み、微細化の限界、大口径化の先送り、さらには期待のかかる成長商品スマホの成熟化および中国製などに見られる単価の下落、といった様々な要因を掛け合わせれば、2014年の半導体設備投資は、せいぜい5〜6%増にとどまると筆者は考える。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注
1. 調査会社によって台数の見積もりは異なるが、IDCは2013年に10億台を突破したと今年の1月27日に発表している。
2. Qualcommの技術担当責任者のGeoffrey Yeap氏は、16/14nmfinFETプロセスではトランジスタを小さくするが、BEOL(配線工程)のメタルの寸法は変えない、と語っている(「Qualcommの技術責任者、プロセス技術を大いに語る」を参照)。

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