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電機産業の低迷下で電子部品の設備投資一気増大〜モバイル端末好調を背景に

アベノミクス効果が製造業にもたらしているものとしては、まず自動車業界の設備投資拡大があるだろう。トップを行くトヨタは、2013年度通期で9200億円を投入する構えであり、日産自動車も5700億円投入となっている。ホンダもまた2013年度は7000億円を投入する。

これに対して、パナソニックの2013年度の設備投資は前年度比34.1%減の2050億円にとどまっているのだ。自動車業界は全体としては、2013年度設備投資を前年度比20%増、研究開発投資を25%増に設定するなど積極姿勢を見せている。

ニッポン電機産業が全体として元気がない中にあって、一般電子部品各社の好調が目立ち始めた。なんといってもスマートフォン、タブレットなどモバイル端末の好調さの裏付けであり、積層セラミックコンデンサやコネクタやフィルムなど、いわゆるオンリーワン技術を磨き上げた成果が出てきているのだ。

京セラの2013年度の設備投資は前年比32.3%増の750億円投入を計画しているが、これは2012年度の566億円を大きく上回るもの。積層セラコンで世界トップシェアを持つ村田製作所は、12年度にひきつづきほぼ同水準の770億円を投入する構えであり、設備増強にまったく手を抜いていない。金沢工場に100億円、福井工場に90億円、岡山工場に70億円、島根工場に60億円と、ほぼ全工場に渡って、量産投資を充実させていく考えだ。TDKもまた、13年度は730億円を投入し、長野におけるウェーハ開発設備、HDD用の高密度次世代磁気ヘッド、リチウムポリマー電池の増産などを充実させていく。太陽誘電の13年度設備投資は、前年度の196億円を上回る220億円投入を実行する。モバイル向けのSAWフィルタなどの増強が目立ったところだ。

日本の一般電子部品は、現状においても世界トップシェアを保持し続けている。彼らのターゲットとするスマートフォンは、2012年で6億5000万台となり、13年度には9億台突破は間違いないだろう。2014年度は12億台以上。2015 年度には15億台以上は見込まれるわけであり、当面の先行きは明るい。しかし各社とも、スマホの次は厳しいと見ており、次のITにおける大型商品を模索する一方で、電池、再生可能新エネルギー、メディカル、次世代自動車などのアプリを真剣に検討している。

一方で、一般電子部品各社は、半導体部門への本格参入を企図している。村田製作所は、ルネサスから半導体設備を手に入れ、電子部品とモジュール化させるIC開発に注力する構えを見せている。TDKもまた、水面下で半導体部門に本格参入するプロジェクトを進めていると言われる。オムロンは、社長直轄事業として、マイクロデバイスを展開しており、MEMSに加えて、8インチウェーハのファンドリサービスに参入している。こうした一般電子部品各社の半導体参入の動きについては、今後ますます目が離せなくなりそうだ。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉
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