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有機EL急拡大〜滋賀のベンチャー、エイソンテクノロジーが量産開始へ

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琵琶湖の研究を続ける学者が「もったいない」を連呼し、滋賀県の知事になった時に、やはりそれほどの関心はなかった。仕事を通じてかなりの知り合いとなり、聡明な考え方に共鳴することが多くなった。その女性知事がここにきてにわかに脚光を浴びている。日本未来の党を率いる嘉田由紀子こそその人である。豪腕の小沢一郎氏がひれ伏し、ひねくれ者の亀井静香氏が崇め奉るのだから、嘉田知事はもしかしたら女王卑弥呼の生まれ変わりかもしれない。

それはさておき、滋賀県大津では水面下で大きな出来事が巻き起ころうとしている。すなわち画期的な有機ELを開発したベンチャー企業のエイソンテクノロジー(本社横浜市)の第一ラインが来春をめどに設備投資を実行中だ。エイソン型の有機ELはこれまでのものと異なり、拡散反射素子構造であるために角度依存性が少ない。加えて、多段スタックでも効率を維持できる。演色性が高く、高い色温度でも平均演色評価数Raは90以上ある。何よりもシンプルな生産装置で量産可能というところが、最大にメリットだ。まずは照明用途から入るという戦略であり、その後ディスプレイに展開していく構想だ。同社を率いる中川幸和社長は、今後の戦略について次のようにコメントする。

「大津での量産立ち上げは、国内のある半導体メーカーのクリーンルームを利用する。まずは放送スタジオ、自動車、建設分野、化粧台などの照明分野で市場を切り拓く。なにしろ材料使用効率が90%と、圧倒的に高く、製造スピードが50~100倍は違う。これで世界に勝負できると思っている。」

国内で一定のマーケットを確立した上で、中国での量産出荷も想定されている。これをコアに韓国、東南アジアなどにも展開していく方向だ。

有機ELと言えば過剰な期待感はあるものの、現状ではサムスンのみが量産で先行しており、GALAXYに搭載したことで話題を集めた。しかしながら、画期的なデバイス構造のエイソン型はいまだ世に出ておらず、これが本格登場すればサムスンやLGもあっと驚くだろう。

滋賀県から遠く離れた九州の地においては、液体有機EL材料という離れ業を研究する九州大学の安達千波矢教授がいる。エイソンの中川社長はこの新材料にも関心を寄せている。ニッポンの有機ELの夜明けが着々と迫ってきたと言ってよいだろう。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷 渉

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