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中国の太陽電池、世界制覇の勢いキープ〜不況下でも政府の救済投資急ピッチ

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「太陽電池不況が2013年も続く見通しだ。いまや世界シェア50%を握る中国の太陽電池メーカーは危ない、との声が高まっているようだ。しかし、これはとんでもない間違いだ。中国はこれからも太陽電池では驀進を続けて世界制覇に向かっていく。中国政府の強大なバックアップがモノをいうのだ」。机をたたいてかくも強調するのは、半導体産業新聞上海支局の黒政典善支局長である。

半導体産業新聞は中国における日系企業の健全な発展を狙いに、年数回にわたり上海の現地で最新取材に基づくセミナーを開催している。その席上で黒政支局長が明かした中国政府の太陽電池に関する追加施策は、まさに驚きなのだ。

「つい先ごろのことであるが、中国政府は足元の太陽電池不況が長引くと判断し、32の省および市に対してなにがなんでも太陽電池を導入せよとの指令を出した。具体的には各省平均で500MWのソーラーシステムを、公的資金を使って設置せよとの指令なのだ。こういうことができるのは、世界広しといえども中国政府しかないだろう」(黒政支局長)。

実のところは、いまや世界シェアの50%を握るといわれる中国の太陽電池メーカーも2011年から始まった世界的不況にあえいでいる。この不況は2012年いっぱいでも終わらず、2013年も続く見通しなのだ。なにしろ工場の稼働率は世界トップを行くサンテックが35%、JAソーラーが60%といった具合で全く振るわない。加えて、中国製の太陽電池セルに対して米国に続いて欧州も反ダンピング提訴する構えなのだ。米国の太陽電池市場は世界の9%しかないが、EUは驚くなかれ、世界の60%も占有しているわけだから、EUに提訴されたら中国勢もたまらない。

こうした厳しい情勢を打開すべく中国政府は、国内市場拡大を狙いに32省市に太陽電池の導入企画案をすぐにも出せ、と命令を発したのだ。各省500MW平均としても、これだけで15GWの導入がなされることになる。この追加施策をベースに、中国政府は2015年の太陽光発電の導入累計を21GWまで持っていくというのだ。ちなみに、2011年における世界の太陽電池の実需要が高めに計算しても35GW程度であったことから考えれば、この中国政府の追加施策が恐るべき数字であることがよくわかる。

 もっとも、さしもの不況の影響で中国における2012〜2013年の設備投資は、インゴット、ウェーハ、セルともに1〜2GW程度に縮小している。大型投資を2013年に断行するのは、中広核という企業だけであるといわれており、こちらは200MWの新ラインを建設する。それにしても、いざとなれば政府の大型の補助金が突っ込まれ、救済してしまうという中国のビジネスモデルに対抗する手段は、各国ともになかなかないだろう。米国やEUがどのような反ダンピング提訴を行おうとも、圧倒的な世界シェアを中国勢が取ってしまえば全ては解決してしまう、と考える中華思想こそが本当に恐ろしいものかもしれない。

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

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