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シェールガス登場で新エネルギートーンダウン〜グリーン政策の新局面を読め

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政府は今さらというべきか、遅すぎるというべきか、太陽電池、風力発電などの再生可能新エネルギーの買い取り価格を決め、需要促進を喚起するなどと言っている。

太陽電池については、42円という高水準であり、しかも全量買い取りを断行、これ自体は決して悪いことではない。しかしながら一方で、新エネルギー推進の一大勢力であるEUにおいて何が起きているのかを政府は正確に認識しているのだろうか。ドイツの補助金は後退し、かつての太陽電池の世界チャンピオン、Qセルは経営破たんし、ついでにドイツ国内で4社が倒産したという。イタリア、スペインなどでも補助金は後退し、経済クライシスからの脱出にもがいている状態なのだ。また、太陽電池の全量買い取りはよいが、無理な買い取り価格により経営が悪化している電力会社も数多い。

風力発電もまた大きくトーンダウンしており、仕事にあぶれている会社も多い。この分野で世界最大手のヴェスタス(デンマーク)は、経営危機がささやかれているほどであり、三菱重工業が意欲的に設立した新会社(石橋製作所との合弁)もほとんど動いておらず、このプロジェクトは敗れ去ったといってよいだろう。

太陽電池の場合は、今や世界シェア40%以上を握る中国メーカーの投資過剰、安売りによる市場の乱れが大きい。風力の場合は大票田であるEUの経済低迷が直撃した形になっている。

しかし、こうした新エネルギーの苦戦状態に内在する真の原因は実は他にあるのだ、と筆者は思っている。それはずばり、天然ガスの一種であるシェールガスの取り出し方法が完全に見つかったことだ。しかも、埋蔵量は驚くなかれ400年分もあるというのだ。正直言って、これでグリーンニューディール革命の旗を掲げる人たちは一気にしらけた。石油は数十年の寿命しかなく、石炭もまた100年程度、しかもCO2は出しまくり、であるがゆえに原発に行くか新エネルギー一気に促進という流れであった。

ところが、シェールガスの登場は、多くの問題をほぼ解決してしまった形となっている。400年分もあるエネルギーであれば、新エネルギー開発は極端にいえば、400年後に間に合えばよいということになってしまう。おまけに、シェールガスは相対的にCO2を余り放出せず、コストも非常に安い。100年分の埋蔵量があるといわれるアメリカでは、オバマ大統領が看板であるグリーンニューディールの発言を抑えて、シェールガスでみんな解決するもんね、もう中近東に色目を使う必要はないもんね、などとはしゃいでいる。

このことは、次世代環境車にもインパクトを与えていくことになるだろう。ガソリンがなくなることを前提にハイブリッド車→プラグインハイブリッド車→EVというロードマップを考えていた自動車メーカーも、いわば「想定外」のシェールガスを使ったディーゼルエンジンなどの開発を加速する必要があり、エンジン車の延命も視野に入れた戦略も構築しなければならない。

新分野としては、シェールガスを使った超小型発電機、シェールガス供給基地、シェールガスのスポット供給機械、さらには病院、工場向けのシェールガス発電、さらには大型のシェールガス火力発電所など新技術開発のニーズ/シーズは山ほどあるのだ。当然のことながら、シェールガスカルチャーによるエネルギー革命に必要なマイコン、パワーデバイスなど新型半導体の登場もかなり近い日に来ることになるだろう。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

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