セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

地熱発電でニッポンはブレイク〜世界シェア7割強の力を今こそ見せつけろ

|

遭難や事故、さらには長い旅路から帰還したときに、日本人ならほとんどの人が、こう言うだろう。「温泉にでも入ってゆっくりしたい。日本酒とすしで悦楽のときをすごしたい」。

日本人の温泉好きは大変なものである。なにしろ日本列島は火山列島であり、地震列島でもあるが、その持っている地熱エネルギーにいまこそ注目しなければならないときを迎えた。国内では世論に押されるかたちで、原子力発電が次々と休止し再開のメドがなかなかたたない。

こうなれば再生可能新エネルギーに期待するしかないが、風があまり吹かない国であり、風力発電はえらく盛んになるとは思えない。プラントメーカーも強いとはいえず、国内トップの三菱重工業ですら世界ランクでは10位以下。太陽光発電はかつて世界でもトップクラスであったが、シェアは後退し中国(シェアはなんと50%近い)の後塵を拝している。

ところが、である。地熱発電のプラントについては日本の強さが際立っている。世界トップは三菱重工業であり2位は東芝、3位は富士電機とメダル独占状態で、日本勢全体の世界シェアは多分7割強に達するだろう。地熱に組み合わせるヒートポンプも、これまた日本勢はぶっちぎりの強さをもつのだ。日本の持つ地熱資源は2347万キロワット(23.47GW)、と推定され原発20基分に相当する(編集室注)。世界すべての地熱保有量は原発80基分ともいわれている。日本は地熱資源国としては、米国、インドネシアに次ぐ世界第3位の国なのだ。

政府もようやく重い腰をあげ、規制緩和に動いている。すなわち地熱の多く存在する国立・国定公園内の堀削を、条件付きではあるが認めることになった。これを受けて、出光興産、三菱マテリアルなどが福島県内で国内最大の地熱発電(27万キロワット:270MW)を建設する方針を固めた。けだし、朗報というべきだろう。地熱発電プラスヒートポンプの組み合わせは、パワー半導体、マイコンをはじめとする半導体産業にも多くの正のインパクトを与えるのだ。日本が得意とするIGBTなどのチップをいっぱい活用してもらいたい。加えて、地熱発電はコストの点でも安く石炭火力とほぼ同じ10円(1キロワット時)であり、コスト高の太陽光よりはるかに有利なのだ。

それにしても、政府のエネルギー戦略はあまりに総花的でどこに集中しているのかがわからない。とにかく、何にでも手を出してみよう、との考え方なのか。おじさん記者は、これから近所の銭湯にでもいってよく考えてみることにしよう。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉


編集室注)ちなみに、ソーラー発電は国内ですでに設置されている規模は2012年に6GW、原発6基分に達する見通しである。地熱発電の潜在規模はこの4倍あることになる。

月別アーカイブ