2011年半導体成長率は全く読めず〜「伸びず」から10%超と強気の予測まで
政府関係者の2011年度の経済成長の見通しは呆れかえるほどに甘い。どう考えても、GDPでマイナス1%クラスの急速な落ち込みが、4月から9月までは続くことは確実な情勢だ。OECD(経済協力開発機構)は、日本の2011年の実質経済成長率は東日本大震災の影響でマイナス0.9%に落ち込むと下方修正している。昨年11月の見通しでは1.7%増としていたところを、冷静に分析し、修正したのだ。
OECD加盟国全体の成長率は、2011年に2.3%増を見込んでいるだけに、またもニッポン一人負けの展開となってしまう。もっとも、冷静なOECDでさえ、2012年の日本の成長率は復興需要を背景にプラス2.2%に上昇すると見ていることが救いではあるのだ。
こうした状況下で、2011年の世界の半導体成長率を読み込むのは並大抵のことではない。多くの権威ある調査機関は、東日本大震災が発生する前は、5〜8%成長を予想していた。しかしながら、ルネサス被災による世界の自動車生産が思い通りにいかないことや、半導体を製造するために必要な多くの材料が不足、逼迫、さらには全面復旧に時間がかかることなどから、さすがに上昇率引き下げをアナウンスし始めた調査会社も出てきた。ちなみに、筆者の2011年の世界半導体成長率予想は、震災前はプラス7%であったが、ここに来て5ポイントを引き下げ、プラス2%とすることにした。
セットメーカー、EMSなどの前線をよく知っている半導体商社の幹部は、「プラス成長などとんでもない。今の動きを見ていたら、マイナス成長も考えられる」と青い顔をしてコメントしていた。一方、半導体製造装置の世界的な大手である東京エレクトロンの経営トップは、「いろいろありますが、それでも今年の半導体成長率は11%はいくでしょう」とアナウンスし、なんと強気な予想であることか、と業界関係者を驚かせている。
最大アプリのパソコンは、明らかに不調の様子を見せている。世界的にも需要が後退し、下手をすれば台数ベースで5%のマイナス成長とすら言われている。これに代わってIT端末の主役となりつつあるスマートフォンやタブレット端末は、確かにすごい勢いで伸びている。フラッシュメモリーも価格上昇を続けており、DRAMもここに来て5%程度値段が上がった。こうした複雑な展開の中では、半導体の成長率を予想しなければならない人は、迷いに迷うことになるだろう。