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IBM、NECもレノボに敗北〜スマートフォン/タブレットの登場でPC時代閉幕か

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「IBMがかつて世界NO.1の半導体メーカーであったことを知る人は、いまやさすがに少なくなった。そしてまた、PCはIBMが生み出したものだということを覚えている人もほとんどいないだろう。」深いため息をついてこう語るのは、いまや半導体アナリストとして国内最古参のキャリアを持つ南川明氏(アイサプライ・ジャパン副社長)である。

南川氏は、かつてモトローラの半導体部隊で働いていたことがあったが、IBMというカンパニーの強さには舌を巻いていた。メインフレームコンピュータで世界を席巻し、これをダウンサイジングしたパソコン(PC)という世界を切り開き、その中枢となる半導体の開発においてもIBMは超一流であった。筆者が半導体報道に携わることになった70年代後半において、事実上IBMは半導体世界一であった。しかし、その作る製品の全てを内作に使ってしまうために、いわゆる世界ランキングに名を連ねることはなかったのだ。80年代中盤に入っても、NECや日立、東芝などの日本メーカーが、世界ランキングの1〜3位を独占する状況下において、生産金額だけでいえば実質上IBMは世界トップの半導体メーカーとして君臨していた。

そのIBMが、パソコン事業をすべて切り離し、中国レノボグループに売却してしまった時には、実のところ腰が抜けるほど驚いた。PCの元祖IBMがあろうことか中国企業にPCハードの全てを売り渡してしまうなど、ありえないことだと思えてならなかった。そしてまた、2011年1月に至って、またも驚くべきことが持ち上がる。かつてPC98で日本のパソコン市場を席巻したNECが中国のレノボとの合弁を決めた。しかし日中連合とは言うものの、事実上はレノボのグループに加えられてしまったのだ。

レノボとNECの連合軍は、世界シェアで9.1%となり、世界3位入りを狙う位置に付けることにはなる。現状で、パソコンの台数ベースの世界トップはHP(シェア約20%)。これを追って、デル、エイサー(いずれもシェア12%強)がおり、レノボ・NEC連合軍は形の上ではこれを追い上げることになる。

しかしながら、各社がパソコンの世界で激烈なシェア争いをしている間に、とんでもないIT機器が登場し、PC市場を一気に浸食しようとしている。それはまずスマートフォン(高機能携帯電話)であり、この世界出荷台数は2011年にもパソコンの3億5000万台を追い抜いてしまうことは、ほぼ確実な情勢となっている。さらに、スマートフォンの拡大版ともいうべきタブレット端末が、すさまじい勢いで広がろうとしている。この代表格がアップルのiPadなのだ。極端なことを言えば、「スマートフォンとタブレットがあれば、パソコンなんていらないもんね」と言う若者たちが急増するだろう。いや、若者ばかりではない。このブームは中高年層にも広がろうとしている。パソコンという製品は過剰機能であり、目的を絞った端末が欲しいというユーザーの声は多い。電話ができて、メールがやれて、書籍が読めて、映像も楽しめるならば、もうパソコンはいらないという声も、あながち大げさではないのだ。

ところで、このスマートフォンとタブレット端末に代表されるIT機器の変化は、半導体メーカーに多くのインパクトを与え始めている。第一に、需要の70〜80%をパソコンが占めているDRAMが伸び悩んでいることだ。このため価格は1ドルを割り込み、DRAMメーカーは軒並み赤字に陥っている。サムスンやエルピーダに逆風が吹き始めた。第二には、パソコン向けCPU一本やりで半導体世界チャンピオンのベルトを20年近くも巻き続けているインテルに、危機感が迫ってきた。なにしろ、モバイル端末に搭載するMPUの分野では、インテルのシェアはたったの5%しかないからだ。“ウィンテル”の時代が崩壊しつつある。そしてまたIT機器の主役がパソコンという時代も幕を閉じようとしているのだろうか。

(株)産業タイムス 取締役社長 泉谷 渉

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