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地熱発電も再生可能エネルギー〜国内企業に大きなチャンス

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日本人の宇宙飛行士や山での遭難者が帰還したときに、今何をしたいですかと問われ、必ずといっていいほどに答えることが「とにかくゆっくりと風呂に入りたい」なのだ。長い緊張感から解き放たれた人が望む幸福論のほとんどが「温泉に浸かってゆっくりと療養したい」ということであり、温泉立国ニッポンをまさに象徴している。

日本国内の全国都道府県で最も温泉の多いところはどこでしょう? という質問に対し、あなたは何と答えるであろうか。温泉地の数で言えば北海道がトップであり249ヵ所。次いで長野県248ヵ所、新潟県154ヵ所となっている。源泉総数で言えば順位はがらりと変わってしまう。大分県がダントツで5053ヵ所。次いで鹿児島県2819ヵ所、静岡県2277ヵ所となっている。

ところで、世界における地熱発電の容量は約9GWに達しており、米国が最大で2.5GW。国内では火山や温泉がある地域を軸に17ヵ所で発電所が建設されている。海外ではインドネシアが25年までに9.5GWの計画を立てており、米国もまた50年後に100GWの地熱発電を達成するとしている。

地熱発電の歴史は古く、100年以上に遡る。1904年のこと、イタリアにおいて世界で初めて地熱発電の実験が成功し、その後イタリアを端緒として米国、フィリピン、メキシコ、インドネシア、ニュージーランド、アイスランドなど20を超える国々で地熱発電所が建設された。日本においては、1966年に運転を開始した岩手県の松川発電所が第一号。この発電所はフェライト用の材料メーカーとして知られている日本重化学工業が合金鉄製造用の電気炉を動かす安価な電力を得るために建設したものだ。

さて国内における地熱発電への参入企業は、発電事業者としては東北電力、九州電力、東京電力といった電力会社があり、三菱マテリアルや三菱瓦斯化学などの素材メーカーも積極的に加わっている。地熱プラント供給業者としては三菱重工業が世界の地熱全発電量の3割を供給した(McCoy Power Reports.2008)としてトップサプライヤを自負している。また、心臓部分である地熱用タービンでは、富士電機システムズが国内約40%のトップシェアを有している。同社は最近住友商事と共同で、インドネシアの国営電力会社であるペルセロから総出力10MWのウルブル地熱発電所1号機、2号機の一括請負工事を受注した。

蒸気生産設備では、JFEエンジニアリングが強みを見せる。日本国内で稼働している地熱発電所はほぼ半分の9ヵ所、海外ではインドネシアやケニアの地熱発電所向けに納入実績を持つ。

地熱資源調査、掘削・ボーリング、などについては地熱エンジニアリング(日本重化学工業の子会社)、西日本技術開発(九州電力の子会社)などが活躍している。

「地熱発電については、ついにあの巨大企業が動き出す。インターネット検索最大手のグーグルは、次世代型地熱発電システムの研究開発に投資することを決めた。なにしろ地球という星は熱の固まりであり、これを利用しない手はない。太陽光や風力が注目を浴びるが、地熱発電もまた再生可能エネルギーのもう一つの解なのだ」(アイサプライジャパン 南川副社長)。

産業タイムズ 取締役社長 泉谷 渉

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