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LED王国ニッポンの地位が揺らいでいる〜追い上げる米欧、韓台勢も上位を伺う

「130年ぶりの新照明革命の主役はやはり白色LEDだろう。かつては、日本がぶっちぎり圧勝のマーケットを築いていたが、米欧勢に追い上げられている。今は下位にいる韓国・台湾のメーカーも大型投資を構えている。LED王国ニッポンの地位がゆらいでいる。」こうため息をつくのは、ニッポン半導体の後退をその決断力のなさにあると分析するアナリスト南川明氏(アイサプライ・ジャパン副社長)である。

確かに白色LEDの世界は、ほんの2〜3年前まではニッポン勢圧勝の状況であった。日亜化学工業は世界シェアの60%以上を握り、豊田合成(http://www.toyoda-gosei.co.jp/)も20%のシェアを持ち、他のメーカーを含め日本全体で世界の90%以上のシェアを持っていた。ところが、である。ここに来て大きな異変が起きているのだ。トップの日亜化学はシェアを半分以下の20%近くに落とし、豊田合成は一気に10位前後まで急落した。ドイツのオスラム、アメリカのクリーは急上昇し、台湾勢も上位独占を狙っている。

韓国勢については、もっとずっと下位にいたサムスン電子LGエレクトロニクスが巨大投資を決めており、これが立ち上がれば一気にトップ争いに加わってくると予測されている。

白色LEDは2004年当時にせいぜい20億ドル程度のちっちゃい市場であったが、2012年にはこれが倍増の40億ドルに上昇し、2020年には90億ドルを超えてくるとアイサプライは見ている。一般家庭、オフィス、店舗などの照明に採用されていくのはもちろんのことであるが、液晶TVのバックライト、自動車電球などの置き換え需要が急加速してくる状勢だ。さらに電球のない世界にいるアフリカなどの10億人に普及が進めば、とんでもない巨大マーケットに変身してくことは間違いない。

白色LEDをつくるために必要な青色LED技術は中村修二氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)が開発し、勤めていた日亜化学との間で特許の対価を争う裁判は大きな話題を集めた。しかし、わずか数億円を日亜が中村氏に支払うことで決着した。日亜が持つその黄金の青色LED特許もまた期限切れ目前だ。こうなれば世界中のメーカーが一気に白色LED量産に動くことは間違いない。

なぜ、日本メーカーの地位がゆらいでいるのか。「チャンスの時に先行して大型投資に踏み切るという決断がない。慎重にやりたいと言うが、結果として決断力の早い外国メーカーにやられてしまう。また、IT機器、とりわけ家電における地位の後退で、半導体に回すお金がない。つまり投資できない」と南川明氏は述べる。

しかし、ここに来てあせり出した日本メーカーはついに投資を決断し始めた。トップの日亜化学は四国に新工場建設をアナウンスし、シャープは広島の2つの工場をIC生産からLED生産に切り替えることを決め、これまたそこそこの投資プランを発表した。東芝も300億円以上の投資を内定し、北九州などに新工場を建設する。化学メーカー大手の三菱化学もLED生産に乗り出す意思を鮮明にした。しかしながら、ある装置メーカーの関係者はこうした動きに対し、冷ややかにこうつぶやくのだ。

「今さら日本メーカーが投資を決めたところで、肝心の装置が手に入らないだろう。LED量産に絶対必要なMOCVD装置は、ドイツのアイクストロン、アメリカのビーコがほとんどのシェアを押さえており、日本の大陽日酸はまだ量産装置の数を作れない。台数も限られており、現状ではなかなか手に入らない。何しろ韓国サムスンが既に150台以上を買い占めてしまったということで、出物の中古しかないとさえ言われているのだ」。

産業タイムズ社 取締役社長 泉谷 渉
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