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どっこい、日立半導体は大躍進の予感〜環境/新エネルギーをキーワードに

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NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの統合はうまくいかない、と言う人が多い。どだいNECマイコンとルネサスのSHマイコンの設計思想は、あまりにも違いすぎる。また、各半導体工場の製造プロセスもかなりの違いがあり、これを合わせ込むのも大変なことになるのだ。「どうせ今回の合併劇は事業所封鎖、大量の人員リストラをやりたいための方便でしかない」。こう考えるジャーナリストやアナリストも多い。

さて、半導体といえばルネサスばかりが話題となり、日立製作所の半導体はマスコミの端に上ることもない。「日立の半導体なんてあるんですか。みんなルネサスに統合されちゃったのではないですか?」。実のところ、そう思い込んでいる人はかなり多い。

どっこい、日立半導体は生きている。日立製作所の大甕工場、日立工場の一角に現在もパワーディスクリートを作る生産部隊が残されており、こちらが前工程を担当している。後工程は、福島県の日立原町電子工業が担当している。2007年のピーク時には、230億円の売り上げがあり、2008年は世界経済危機の影響を受け180億円まで落ち込んだ。しかしながら、同社の作るパワーデバイスは今後台風の目となっていく。

三菱自動車工業が世界に先駆けて、市場に投入した電気自動車i-MiEVが話題を集めている。予想以上の出荷が果たせそうな勢いだ。この心臓部分となる半導体であるIGBTは、当然のことながら、グループの三菱電機が提供すると思っていたが、これは間違いであった。なんと、ここには日立のIGBTが採用されたのだ。また、GMはシボレーを電気自動車に置き換える方向にあり、また、ボルトなどをハイブリッド車に変貌させ、遅ればせながら環境車のマーケットに打って出ようとしている。驚くなかれ、GMが採用するIGBTもまた日立製作所が担当している。つまりは、日立の品質の高さが認められた結果が次々と出てきている。

日立製作所の半導体は、84%がダイオード、IGBTなどのパワーディスクリートだ。オルタネータについては、月産1500万個で世界シェアの3割を握っている。高圧ダイオードも月産4500万個、一般整流ダイオードも月産1000万個の能力を備えている。日立のパワーデバイスは、民生用で培われたのではなく、鉄道車両、発電所、重化学工業などのドデカイものに見合う最高品質を身につけてきた。このノウハウは、実に40年以上にも渡って蓄積されてきたわけであり、そう簡単に他社に真似できることではない。当然のことながら、今後の製品戦略として、前記の環境車、風力発電、太陽電池などの環境/新エネルギーに焦点を定めている。世界のグリーンニューディール革命が推進される勢いに乗ってゆこうというのだ。風力発電は、W当たりのコストが安くできることから、特にヨーロッパや米国で加速度的に普及が進んでいる。風力発電1基には、実に50個のIGBTモジュールが使われる。

一方で同社は、パワーデバイスラインを活用して、MEMSファンドリーサービスも開始している。深堀エッチングのできる高額ドライエッチャーを多く備えている。将来的には、SiCという次世代プロセスにも展開していく考え方だ。

パワーデバイスという分野では、先を行く三菱電機をキャッチアップすることが同社の目標となる。環境/新エネルギー革命が進む中で、同社の売り上げが近い将来に500億円、1000億円に上昇していくことは、決して不可能ではない。まさに伝統ある日立半導体は死なず、といえるだろう。


産業タイムズ社 専務取締役 編集局長 泉谷渉

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