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高効率ヒートポンプが新エネルギー分野で太陽電池、風力発電を押さえ主役に浮上

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東京電力は、「エコキュート」は本当にエコなのよ、という宣伝を繰り返し流している。しかしながら一般ユーザーは、どうせ値段の高い給湯器だから家には必要ない、というほどの関心しか持っていない。

ところが、「エコキュート」こそ、高効率ヒートポンプの応用例なのだ。一般のヒートポンプよりもCOP(成績係数:投入エネルギーに対する得られたエネルギーの割合)が2倍程度高い、高効率ヒートポンプは日本が生み出した技術であり、2025年までの再生可能新エネルギーのトップと位置づけられている。世間がワァワァ騒いでいる太陽電池や風力発電をはるかに上回る市場規模が想定されている。ヒートポンプは簡単にいえば、低温の熱をくみ上げて、低いエネルギーで高温の熱に変換する機器の総称だ。日本は高効率ヒートポンプの技術および量産において、世界をぶっちぎっている。

重要なことは、2008年12月にEU議会で高効率ヒートポンプを再生可能エネルギーに認定するという指令が出されたことだ。これで一躍、時代の主役となることが確定された。例えば、横浜八景島シーパラダイス、沖縄県立北部病院、信越半導体白河工場、日野自動車羽村工場などではすでに高効率ヒートポンプを導入し、多くの省エネ成果をあげている。また、牛丼の吉野家は徹底的な省エネルギーにひた走っており、看板の照明を白色LEDに切り替えつつある。同社は、新エネルギー対策としては、太陽電池の導入を考えたが最終的にはやはり効率も良くコストも安い高効率ヒートポンプ導入に行く公算が強いとしている。なにしろ、一戸建ての住宅で言えば、太陽電池導入は200万円のコストがかかるが、高効率ヒートポンプであれば、数十万円ですむ。ただし、エネルギーとはいえヒートポンプだから、発電はできないため、冷暖房と給湯に限る。

さて、高効率ヒートポンプという技術は、実のところ1980年代にも存在していた。いわゆる政府のムーンライト計画(1973-1992)の一環としてスーパーヒートポンプ・エネルギー集積システム(略称SHP)の研究開発プロジェクトが、1984年から1992年まで実施された。ところが、NEDOが開発したスーパーヒートポンプ(高効率ヒートポンプ)はコスト高、大型であったため実用化には至らなかった。1990年代後半から10年間にわたる「死の谷」を経験したのだ。

しかしながら、電力中央研究所がこの国プロをきっかけとして、東京電力やデンソーなどと協力、実用化に向けて努力を続け、2000年になってエコキュートを開発した。このときの冷媒はCO2だが、その他の企業はフロン代替冷媒を使い、高効率ヒートポンプを開発している。これで大騒ぎになった。

この普及に向けて努力する東京電力、大林組、久米設計、竹中工務店、中央大学、三菱化学などの取り組みが注目される。さらに、ヒートポンプを製造する三菱電機、ダイキン工業、神戸製鋼、デンソーなどのメーカーの生産・投資動向も詳細に調べる必要があるだろう。次いで、高効率ヒートポンプの最も重要な部材となるモーター、パワー半導体、マイクロバブル洗浄、各種センサーなどのメーカーの動向も一気に注目を集めることになるだろう。

高効率ヒートポンプフィーバーは、これから本格的にやってくるのだ。家庭、ビル、工場、商店、病院などの冷暖房・給湯に必要なエネルギーを高性能ヒートポンプシステムに置き換える動きは、全世界で急加速することは間違いない。

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