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5番手企業SK Hynixの4次元NANDフラッシュメモリ猛攻戦略

7月1日に、経済産業省が韓国に対する3種類の半導体材料の輸出規制を発表した。同省は、単なる「輸出管理の運用の見直し」と言うが、世耕大臣は、「徴用工問題で信頼が損なわれたことも理由のひとつ」とSNSで述べている。一方で、韓国側は事実上の輸出禁止ととらえ、国家非常事態だとしている。

韓国の2大半導体メモリメーカーは、製造をストップさせないように、フッ化水素を日本以外から調達しようと奔走している。実際、7月4日より今日に至るまで日本製フッ化水素の韓国への輸出はストップしている。一方、レジストは、EUVリソグラフィ用とナノインプリント用に限定されており、フッ化ポリイミドは半導体製造には使われていないので、メモリ製造には影響するのはフッ化水素だけのようだ。

米Wall Street Journal紙は、7月2日付け紙面で、「安倍首相はライバル国の中核産業を経済的に罰するトランプ大統領を手本にした」と指摘し、そのうえで、「日本は自ら墓穴を掘っている。日本企業は韓国での仕事を失うからだ」との分析を紹介した。韓国での反日活動はますます過激となっている。8月2日には、日本政府は韓国をホワイト国から外す閣議決定を行った。SEMI米国本部は、グローバルなサプライチェーンに影響が出ないように日韓両政府に対して懸念を表明している。今後の日韓関係の行方や日本の材料装置メーカーへの影響が心配される(参考資料1)。そんな騒ぎの中にSK Hynixからの画期的なニュースがうずもれてしまった。  

SK Hynixが128層 4D NANDを量産開始、176層製品も開発中

SK Hynixは、DRAM業界で、トップのSamsungに次いで市場シェア約3割で2位に位置している。この韓国勢2社だけで世界市場でシェア75%近くを確保している。一方、NANDフラッシュメモリ業界では、SK Hynixは、Samsung、東芝メモリ、Western Digital, Micronに次いで、5位に甘んじており、世界市場のシェアは10%弱に過ぎない。そんなSK HynixがNANDでも攻勢に出た。

同社は、今年6月末に業界初となる128層1テラビット TLC (Triple-Level Cell) 「4D NAND フラッシュメモリ」を開発し、すでに量産を始めたと発表した(参考資料2)。今年後半の発売を予定しているという。同社は、8カ月前に96層4D NANDフラッシュメモリを発表したばかりであり、現在、176層 製品も開発中であることも明らかにしている。


図1 128層1Tb TLC 4D NANDフラッシュメモリチップ 出典:SK Hynix

図1 128層1Tb TLC 4D NANDフラッシュメモリチップ 出典:SK Hynix


聞きなれない4次元NANDとは?

SK Hynixがいう「4D(4次元)NAND」とは同社独自の呼称で、周辺(ペリフェラル)回路の直上にセルアレイを積層することでシリコンダイ面積を削減したNAND構造を指す。この技術を同社は「PUC (Periphery Under Cell、メモリセルアレイの下の周辺回路)」と呼び、周辺回路とセルアレイの積層によって「次元 (Dimension)」が1つ増えたと見なし、「3D NAND」から「4D NAND」へ呼称変更していた(図2)(参考資料3)。人目を引くことを狙ったSK Hynix独自の呼び方である。同社は、PuC構造については2015年に、4D NANDについては2018年にそれぞれ学会発表していた。


図2 Periphery under Cell構造(左)を採用したSK Hynixの4D NAND(中央)。周辺回路の上にセルアレイを形成している。セルアレイの上に周辺回路を張り合わせる中国YMTCの構造(右)と対比される。 出典:YMTC (参考資料1)<br />

図2 Periphery under Cell構造(左)を採用したSK Hynixの4D NAND(中央)。周辺回路の上にセルアレイを形成している。セルアレイの上に周辺回路を張り合わせる中国YMTCの構造(右)と対比される。 出典:YMTC (参考資料1)


128層1Tb NANDチップは、業界で最高の垂直積層数であり、チップ内に3600億個のNAND セルを搭載し、各セルは3ビットの情報を保持できる。これを実現するため、同社は「超均質垂直エッチング技術」「高信頼性多層薄膜セル形成技術」「超高速低消費電力回路設計技術」などの革新的な技術を適用したことを明らかにしている。

SK Hynix は、3D CTF (Charge Trap Flash) アーキテクチャとPUC (Periphery Under Cell) 技術をあわせて採用した4D NAND技術の最大の特徴である微小セルサイズによって、他社に先駆けて超集積NANDフラッシュメモリを実現できたという。

モバイル向け製品とエンタープライズSSDを提供へ

この製品は、1.2Vで1,400Mbps(メガビット/秒)のデータ転送速度を達成し、高性能で低電力のモバイル向け製品とエンタープライズSSDを提供することにしているという。SK Hynixは、来年上半期には、自社製コントローラとソフトウェアを搭載した2TBクライアントSSDの量産も開始する予定で、クラウドデータセンター向け16TBおよび32TBのNVMeインタフェースSSDも来年リリースするとしている。

SK Hynixは、すでに次世代の176層4D NANDフラッシュの開発を進めており、技術的優位性を通じてNANDビジネスの競争力をさらに強化していくとしている。同社は、近くNAND市場参入するとうわさされている中国YMTCの参入障壁を高めようとしているようにも見える。YMTCは、昨年末に東京で開催された半導体製造に関する国際会議ISSMで、図2に示すように、SK HynixのPuC, 4D NANDを紹介したうえで、自社独自のXtacking構造を紹介しており、YMTCも相当SK Hynixを意識していることが窺える。韓国と中国のメモリ戦争はすでに始まっている。

参考資料
1. Huaweiへの禁輸解除や追加関税先送りの陰に半導体業界の圧力 (2019/07/02)
2. SK Hynix Starts Mass-Producing World’s First 128-Layer 4D NAND SK Hynix 公式発表 (2019/06/26)
3. YMTCの3D NAND市場攻略に向けた奇策「Xtacking」 マイナビニュース(2019/01/31)
4. 韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情(3)−巨額投資計画明らかに (2019/05/15)

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