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貿易摩擦の最中にスパコン開発競争で火花散らす米中、次は半導体?

米国と中国の半導体やハイテク分野の貿易摩擦がますます激化している。米商務省は、2018年4月16日、米国企業による中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)との取引を、今後7年間禁止する決定を下した。このため、ZTEはIntelやQualcommからスマートフォン製造に必須の半導体チップを使用できなくなった上に、米国市場を失い、同社のスマートフォン事業は存続が危ぶまれる事態に陥った。

ところが、6月7日には、一転してトランプ大統領が巨額の罰金支払いを条件に制裁解除を発表した。これに対して、米議会上院は18日、トランプ米大統領による制裁措置の緩和を認めない条項を盛り込んだ法案を賛成多数で可決した。

事態の変化は目まぐるしく、今後の進展は予測しがたい。中国が、東芝メモリを米国投資ファンドが主導する企業コンソーシアムへの売却を突然許可したのは、米国政府のZTEへの制裁解除と引き換えだったとの説も一部でささやかれているが、深層は闇の中である。中国だけではなく、世界中がトランプ大統領の予測しがたい過激な発言や「America First施策」に翻弄され続けている。

米国が意地悪したら、中国は国産スパコンを出してきたが・・・・・

米商務省が米国製半導体チップの中国への輸出を禁止したのは、今に始まったことではなく、同省は2015年にIntel製のスパコン用ハイエンドCPUの中国への輸出を禁止した事例は記憶に新しい。Intel製CPUチップを搭載した中国製の世界最高速のスーパーコンピュータが中国内で核開発に使われていることを米国がつかんだという理由である。それを受けて、中国政府は、10年以上にわたり国家プロジェクトとしてひそかに自主開発してきた独自のCPUチップ(260コアを搭載した「Sunway SW26010」)を採用した国産スパコン「神威・太湖之光」を公表し、いままで世界最高速だったIntelチップ採用の中国製「天河2号」の3倍の演算性能を実現した。

ちなみに、この中国産CPUは、2003年に設立されたShanghai High Performance IC Design Center(国家高性能IC上海設計中心)が National Science and Technology Major Project(NMP:国家科技重大専項)の支援を受けて密かに設計してきたものである。周辺チップも中国製だという。なお、同設計センターは、国家安全保安上の理由で、コンピュータCPUチップ国産化を目指して2003年に設立されたが、その存在はほとんど知られていなかった。

今回の米国政府による米国製半導体のZTEへの輸出禁止措置のニュースを聞いて、まっ先に思い出したのはこの話である。今回は、このスパコンの場合のようにはスマホや通信機器用主要半導体チップを準備しておいて、「それなら中国製チップを使うから米国製は用がない」と開き直ることはできなかった。しかし、習近平国家主席は、このところ、中国各地でハイテク技術の早期自主開発を強調して、スパコンのように米国の技術に頼らない体制を敷こうとしている。

中国政府は、半導体の自給自足を前倒しするため、巨額補助金支給はじめ半導体産業振興策を次々打ち出している。しかし、これらの中国政府の施策がトランプ大統領の怒りを増長させている。スパコンの前例同様、近い将来、中国は米国にとって半導体はじめハイテク分野で恐るべき存在になるだろう。米国政府にしてみれば、何とか今のうちに中国勢の成長の芽を摘んでしまいたいから、あるとあらゆる難癖を中国に突きつけるだろう。

中国は米国勢にスパコントップの座を奪われたが・・・・

ところで、ドイツのフランクフルトで開催中の「International Supercomputing Conference 2018(ISC 2018:国際スーパーコンピュータ会議)」で6月25日、スーパーコンピュータ(スパコン)の処理性能ランキングである「TOP500」の2018年上半期版が発表された(参考資料1)。

いままで中国製スパコンが1位と2位を独占してきたが、今回のTOP500では、米国オークリッジ国立研究所(ORNL)で2018年6月から稼動を開始したばかりの米IBM製AIスーパーコンピュータ「Summit」が1位を獲得した。米国のシステムが世界一を獲得するのは、2012年11月以来、約5年半ぶりとなる。2013年以来、中国勢にトップの座を奪われていた。2016年上半期から首位を守ってきた中国の神威・太湖之光が今回は2位に後退した。4位にも中国の天河2号(前回2位)が入った。米中貿易摩擦がますます激化する中、米中は今後スパコン開発競争でもデッドヒートを演じることになりそうで、貿易摩擦の火に油を注ぐ状況だ。

米中スパコン開発競争の陰で存在感の薄い日本に関して特筆すべきは、今回5位に日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」がはいったことだろう。一方で、2011年に世界トップに躍り出て話題をさらった理研の「京」は16位に後退した。

TOP500に入ったスパコンの国別統計で、中国206システムに対し、米国124システム(前回は中国202システム、米国145システム)と、さらに、中国は米国に差を広げた。ちなみに日本は36システムだった。21世紀初めに、中国にはスパコンが一台もなかったが、10年余りでトップの座を射止め、米中でトップ争いをするまでに成長しただけではなく、いまやダントツのスパコン最大保有国になっている。かつてスパコンには無縁だった中国が、急速にこんなスパコン大国になるとはだれも想像しなかっただろう。スパコンに続いて半導体製造だけではなく、半導体設計でも同じことが起きようとしている(参考資料2)。

参考資料
1. 本稿はスパコン速度比較に関する技術的内容を解説することを目的にしていないので、この点に興味のある方はTOP500公式ホームページに掲載されている詳細な情報をご覧ください。
2. 服部毅:「2017年の国別ファブレス半導体メーカーシェア1位は米国 、中国が猛追」 マイナビニュース (2018/3/27)

Hattori Consulting International代表 服部毅

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