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半導体産業の変革期における国家プロジェクトのあり方とは何か

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ASETのマスクD2I成果報告会に出席した。マスク技術は、微細化に必要なリソグラフィ加工技術の中の重要な技術の一つである。これまで、光の波長193nmというArFレーザーを光源にし、液浸や高NAレンズ、高解像技術などを駆使して露光波長よりもずっと短い45nmの加工を実現してきた。マスク上にICパターンを描く場合も、波長の短さを考慮してOPC補正を行いながら、パターンを描いてきた。

しかし、45nmの先の32nm、22nm、16nmなどへとさらに微細化が進むにつれ、これまでの技術の延長で実現できるのか、まだ誰にもわからない。そのためにEUVといった軟X線(波長2nm程度)を利用するリソグラフィ技術や、繰り返しパターンを利用して2回露光でパターンのピッチを実質的に半分にするダブルパターニング技術などが候補として挙がっている。

技術成果報告会では、マスクの設計・描画法と検査方法についての発表であった。このプロジェクトでは国家(NEDO)からも予算がついているものの、微細化まっしぐらのこのテーマに関しては最新疑問の声を産業界からよく聞く。彼らは表立って大きな声で言わないが、相変わらず国のプロジェクトはハード志向だね、いつまでも微細化の時代じゃないのにこのようなテーマを選ぶんだね、マスク技術の開発は国家プロジェクトでやるテーマなのかしらね、などなどと本音を漏らす。

3月13日にセミコンポータル主催の半導体エグゼクティブフォーラムを開催した(http://www.semiconportal.com/archive/editorial/industry/spi1.htmlないし、http://www.semiconportal.com/archive/editorial/industry/spi4.html)ときに、今は半導体産業は変革期に来ており微細化しなくても十分にビジネスができる例を紹介してきた。もちろん、今まで通り微細化必須のビジネスもある。しかし、半導体技術を捉えなおす変革期に来ており、聞きに来られた会場の方々のアンケートにもその声が反映されている。

国家が半導体産業にどう係るか、これまでの補助金政策で良いのか、競争力をつけるために必要なことを国家がどう反映させるべきか、国家プロジェクトにも考え方をこれまでとは同じではいけない変革期に来たのではないだろうか。最近、英国の半導体産業を取材してきて政府のあり方などを特集で紹介してきたが、それは一つの解であり、競争力をつけて英国の半導体産業がこれから急成長するための方策である。

もちろん、日本のやり方は英国を真似すればよいというわけではない。ではこの先どうやって日本独自の戦略を立てればよいのだろうか。産業界には、日本は戦略を立てられないとか、戦略を立てるのが日本は下手だとか、言う人がいる。しかし、私はそうは思わない。日本人は決して知恵の劣った民族ではない。賢い民族だ。ただ、戦略の立て方を知らないだけだと思う。戦略を立て、きっちりと実行できる仕組みを作ることを練習していけばよい。

半導体産業の変革期に国家がどう係り、何をすべきか、をしっかりと議論して日本独自の国家戦略と10年後の絵を描けばよい。戦略を立てて実行するというゴールを実現するためには民間の知恵が欠かせない。これをどう活用するかがカギとなる。そのためには、日本の半導体産業を強くするために一肌脱ぐ、というボランティア精神を日本の官僚が持たなければできない。このボランティア精神(日本語では滅私奉公)は極めて重要な意識である。自分たちの天下り先を見つけるためにコンソシアムや組織を作るのではないかという国民の疑念を自ら払しょくさせることができるからだ。国家官僚の知恵に期待したい。

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