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新BMWの時代へ変身を図る半導体メーカー

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BMWといえば誰でもドイツの高級車ブランドを思い浮かべるであろうが、面白い言葉の略でもある。もちろん、ドイツのバイエルン州ミュンヘンに本社のあるBMW本来のBayerische Motoren Werke Aktiengesellschaftではない。Broadband, Mobile, Wirelessだ。これを今新BMWと定義してみる。

言葉の遊びと言われればそれまでだが、実はBとMとWが今、融合の時代へ向かおうとしていることが新しい。バルセロナで開かれたMobile World Congress2008では、ブロードバンドとモバイルとワイヤレスが融合、すなわちコンバージェンスしてくる時代が間もなく到来することを確信した。

これまでは、ブロードバンドは光ファイバやADSL、VDSLなど有線の高速データレートを意味していた。モバイルは移動体、動くもの、を意味していた。携帯機器はかつてポータブルとも言った。ポータブル機器と携帯機器をどう定義するか、昔悩んだ時期もある。かつてのPDAやゲーム機はただ持ち運べるだけであり、無線機能はなかった。ワイヤレスは無線であり、電波を飛ばす技術を表す。かつてはB、M、Wそれぞれ連携はなかった。

通信技術では、有線を使ったブロードバンド化が続いてきた。モバイルはスタンドアローンのPDAやゲームボーイから携帯電話へとシフトしてきた。無線技術では、バックボーンとなる主な電話回線にしか使われていなかったOFDMなどのデジタル変調技術が民生のワイヤレス製品にまで降りてきた。

こういった通信技術の流れが最近急速に融合してきつつある。携帯電話をはじめとする携帯機器を使ったデータ通信はワイヤレスで行うようになり、それが高速データレートへと移行している。デジタル携帯電話は2Gから3Gへ移行してデータレートが少し上がったが、それがMbpsクラスの高速化へとシフトしている。3.5GのHSDAや3.9GのLTE、さらには4Gへの移行はまさにデータレートの高速化、すなわちブロードバンド化へ行っているのである。これがBMWのコンバージェンスである。

とはいえ、通信業者(キャリア)だけが高速無線データ通信のうまみを吸わせるわけにはいかない。インテルはこう考えたのではないか。WiMAXのネットワークやデバイス作りに力を入れ始めている。54MbpsなどのIEEE802.11a/b/g/nなどWiFiといわれる無線技術はもともとデータレートが高速だが、数10m程度の範囲でしか通信できない。これを10kmあるいは50kmで通信させようというのがWiMAXである。だからWiFiの延長といわれる。しかし、数十Mbpsで10kmというようなセルラー(細胞を意味するcellが互いに寄せ合う形からそう呼ばれている)のネットワークに近づくわけだから、WiMAXは当然、4Gなどと競合する。

バルセロナでのMobile World Congress2008では、4GあるいはLTE対WiMAXというメディアのとらえ方に対して、ネットワーク機器メーカーは確かにどちらにしようかと悩むが、半導体メーカーは悩んでいない。チップの上にLTEでもWiMAXでもどっちでもいい、両方のデータ処理回路を載せよう、あるいは一つのコンピューティング回路でソフトウエアだけで切り替えよう、というようなしたたかな戦略がはっきりと見えていた。フリースケール、TI、あるいは英国のベンチャー、Icera社やXMOS、PicoChipなど、どっちへ転んでも即座に対応できるチップの開発に余念がない。

プロセッサメーカーも新BMW時代では戦略がはっきりと変えてきている。インテルはWiMAXへとシフトしてくるわけだからそれに使うコンピュータは、新BMW時代にふさわしいUMPC(ウルトラモバイルパソコン)やMID(モバイルインターネットデバイス)という低消費電力が必須のモバイルコンピュータへのプロセッサを目指している。一方のAMDは、カナダのハイエンドグラフィックスチップメーカーのATIを買収し、自身のチップはクレイのスーパーコンピュータに使われるなど超ハイエンドの方向へ向かっている。「トランスフォーマー」などCGを駆使する映画にはATIの技術がよく使われている。もはやインテルとAMDは競合しない領域へと乗り出している。

では日本のメーカーはこの新BMW時代にどう対応するか。英国の革新技術を持つメーカーとのコラボレーションを推進するとか、あるいは買収してしまい、自社に強い半導体を持つというようなオプションはあろう。実は、日本メーカーが英国ベンチャー詣でをこっそりしているという話も聞こえてくる。BMW新時代の動きは目まぐるしい。経営ディシジョンの素早さで、新しい勝ち組、負け組が出来てくるのは間違いないだろう。

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