「対中輸出はどうなる?」、今を知りたい声に応えSPIフォーラム開催
「オクトーバーセブンの措置は半導体や製造装置メーカーにとって大変だ」。このような声が米国や日本の製造装置業界から聞こえてくる。オクトーバーセブンとは、2022年10月7日に米商務省の産業安全保障局が出した、軍事転用される可能性のある先端半導体チップと、それを製造する装置の中国への輸出が制限される声明のことだ。
中国市場は、多くの半導体メーカーや製造装置メーカーにとって今や一大市場となっている。これらの半導体および製造装置メーカーは売上額の20〜30%を中国から得ているが、中国への輸出が厳格に行われれば、ビジネスは非常に厳しくなる。少なくともゲームや民生機器などは規制が弱いだろうが、産業向けは兵器への転用が可能な製品が多い。民生用でさえ、パソコン用のCPUやスマートフォン用のAPU(アプリケーションプロセッサ)などは何にでも使える汎用プロセッサであるため、軍事にも十分使える。
今や軍事技術と民生技術の区別がつかなくなりつつある。このため厳しく網をかけようとすれば、どのような半導体製品も軍事転用できるとみなされる。しかし、これでは半導体メーカーのビジネスが小さくなってしまう。製造装置メーカーも同様だ。今や先端技術=軍事技術という図式ではなくなっているからだ。DARPAの最新プロジェクトでは微細な半導体チップでなくても、チップレットやチップを搭載する先端パッケージングを進めている。
企業のビジネスを阻害すれば、経済発展はできない。かといって開放するだけなら国の安全が脅かされる恐れが高まる。どこに線引きするか、が問われる。国の行政機関が頭を悩ませる問題だ。
半導体製品ではIntelやNvidiaの製品が中国に大量に輸出されてきた。また、Applied Materialsや東京エレクトロン、ASMLなどの半導体製造装置も中国に輸出されている。これらをどのような基準で規制を加えるのかが今問われている。
1970〜1980年代に半導体技術は、米国の国防総省(DoD)が敵ミサイルの追尾や迎撃の精度を高めるために特に最先端技術が使われていた。その時のVHSIC(Very High Speed IC)計画は先端半導体の開発のために生まれた。LSI設計言語のVHDLはこのプロジェクトの成果物である。1989年にベルリンの壁が崩され冷戦時代が終了し、VHSIC計画が終わり、国防予算も削られてきた。そして2001年の9.11で再び国防予算が重要だという認識に変わり、米国はDoDに加え、国土安全保障省(DHS)を創設するようになった。さらに中国の台頭によって今回、対中貿易不均衡の解消だけではなく、軍事転用を阻止するために中国への輸出規制を見直すことになった。
そこで現状はどうなっているのか。それを知るために今回、SPIフォーラム「米中貿易の行方と半導体産業への影響」を6月2日に開催する。このセミナーでは米国が今どうなっているのか、そして中国は、そして日本の製造装置業界は、それぞれどうなっているのか、について語ってもらう。米国事情は、外国法事務弁護士事務所ホワイト&ケースのWilliam Moran氏に、中国事情は日経で長年中国と台湾を取材してきた山田周平氏に、そして日本の製造装置業界の事情に詳しいアナリストの和田木哲哉氏。
セミコンポータル会員だけではなく、非会員の一般の方も参加できる。申し込みはこちらから。