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センサ技術がデジタルトランスフォーメーション成否のカギに

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デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれて久しいが、成功例があまり多く出ていない。成功事例を積極的に話す企業が少ないということがあるだろうが、DXを作るために重要なセンサを外から買ってくればよい、という態度でDXを見ている企業が多いことも災いしている。DXで最も重要なセンサをおろそかにしていては、欲しい情報を集めることができない。

2021年5月26日開催 SPIフォーラム「デジタルトランスフォーメーションのカギとなるセンサ技術」

2021年5月26日開催 SPIフォーラム「デジタルトランスフォーメーションのカギとなるセンサ技術」


DXは、経済産業省が2018年12月に定義したガイドラインによると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのも のや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とある。

では、具体的にこれを実現しようとすると、各社の製品やサービスなどの問題点を何で検出するのか、がカギとなる。これがセンサである。センサで問題を検出・抽出しなければ、それをどう改善すべきが方策を立てられない。センサがDXのソリューションを見つける上での第一歩となる。

例えば、日立製作所は、幸せの度合いを可視化するアプリを提供する事業会社「ハピネスプラネット」を立ち上げた(参考資料1)。幸せ度を測定するため最初は、加速度センサで行動している様子を表現し、赤外線センサで人と会っていることを知る、といったところから始め、さまざまなデータを四六時中取り続けた。約10年間に渡るデータを取り続けることで、実験に参加した被験者の状況とセンサデータとの関連を掴むことができた。

人間の活動を知る一つの手段として歩数計があり、ここにも加速度センサが使われているが、それだけではデータとして不十分。GPSやGNSSで衛星からの信号で走行距離も測定できると歩数と距離が求められ、その速度も計算できる。さらに圧力センサを加えると、気圧を検出できることから高度がわかり、2階にいるのか1階にいるのかの区別が付けられる。人間が工場やオフィスの中を何度も行き来する様子が各種のセンサからのデータと実験から読み取ることができるようになる。しかもセンサからのデータには時間軸も関係する。どのような時間でどのような行動をするのか、データが増えれば増えるほど確度は上がる。

しかもセンサのようなデバイスは日本が得意な分野である。しっかりとセンサ技術を獲得し、そしてセンサデータの意味を理解すれば、デジタルトランスフォーメーションによる成果は生まれてくる。大きな市場になりうる。

日本でDXがうまくいかなかった理由はセンサの意味を捉えることなく、薄っぺらなデータを眺めるだけだからだろう。センサデータの意味を捉えて顧客の求める情報や要望につなげられるのは、やはりセンサを持つハードウエアメーカーが強いはずである。

セミコンポータルは、DXに欠かせないセンサ技術を鳥瞰し、その製造装置の詳細だけではなく、DXへの応用事例を紹介するウェビナーSPIフォーラム「デジタルトランスフォーメーションのカギとなるセンサ技術」を5月26日13:30からオンライン開催する。加速度センサの感度を上げることによって、パーキンソン病の早期発見につなげた事例の紹介もある。これらの講演からDXを成功させることができるように期待したい。

5月26日SPIフォーラム講師陣
13:35 MEMSによるセンサ技術 (株)メムス・コア CTO 江刺 正喜氏
14:25 時代を変える微細加工技術〜MEMS進化の原動力 SPPテクノロジーズ(株) エグゼキュティブシニアアドバイザー 神永 晉氏
15:25 MEMSセンサの超高感度化でパーキンソン病の早期診断を目指す 東京工業大学 学長 益 一哉氏

参考資料
1. 日立製作所、幸せの可視化アプリ提供の新会社を設立する (2020/07/08)

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