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日立製作所、幸せの可視化アプリ提供の新会社を設立する

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日立製作所は、20年ほど前から中央研究所で人間の幸福度を測る研究を重ねてきたが、7月20日に、その事業会社として、株式会社ハピネスプラネットを設立する。幸せの可視化で新たな産業創出を目指すとしている。その第1弾として、企業の社員の幸福度を見える化したアプリを提供する。

図1 ウェビナー会見する新会社ハピネスプラネットの代表取締役CEOの矢野和男氏

図1 ウェビナー会見する新会社ハピネスプラネットの代表取締役CEOの矢野和男氏


これまで中央研究所では、矢野和男フェロー(図1)が中心になり、自身も含め社員にIRセンサと加速度センサを入れたIDカードと一緒に持たせ、活動記録を付け大量のデータを収集し分析してきた。その結果、幸せな人・組織は、生産性や創造性が高く、心身が健康で離職しにくく、株価も高い、ことがわかった。これは幸せだから生産性が高いのであって、逆ではないという。加えて、幸せの重要な要因(個人/関係性/組織)が特定され、訓練や施策で高めることができるようになることが明らかになった。この結論を出せるようになったのは、幸福度を計測できるテクノロジーが開発されたからだ(図2)。


図2 身体に付けた加速度センサやIRセンサで活動を知る 出典:日立製作所

図2 身体に付けた加速度センサやIRセンサで活動を知る 出典:日立製作所


加速度センサは、歩いている時と静止している時とでは時間に対する波形が全く異なる。図2でわかるように、X、Y、Z軸の3軸のパターンは、規則的に歩いていると3軸とも似たようなパターンを描くが、机に向かって電子メールを打っている時など、内容を見て反応を示すわけだから、3軸のパターンが異なる。IRセンサは人と会って会話したことを示す。

矢野氏らは、活動の仕方を1日24時間、365日間データとして表すことを試みた(図3)。自分の活動を含め4名が1年間データ取得に協力した。図3の横軸は午前0時から24時までの活動記録を色で示したもの。縦軸は1月1日から12月31日まで365日間を表している。青色が静かな状態で赤が活動している状態を示している。


身体運動の計測「ライフタペストリ」

図3 個人の活動を24時間・365日間記録した 出典:日立製作所


この図3では、大体が夜11時すぎから朝の6時ごろまで活動の少ない青色の睡眠状態を示している。人によって規則正しい生活を送っている人とそうではない人がわかるだけではなく、短期の海外出張などで昼夜逆転している人もいることが図3からわかる。また、週末は睡眠時間の長い人が多いこともわかる。行動計測の延べ日数は1000万日にも上ったという。

ただし、図3は長期に渡るデータであるが、短期的なデータも取得しており、1日単位の短い間ではミリ秒の時系列の中も分析しているという。人間の行動パターンは極めて複雑なため、機械学習で特徴を抽出するのは複雑すぎてここではやっていない。ある程度モデルを立てて分析しているという。

また、7社、10組織、468人、5000人日の膨大な計測データと幸せに関する質問紙尺度を解析したところ、周りを活性化する/幸せを生む行動をすることが多い集団は図4に示すように、企業にとってプラスに働くことがわかった。


幸せな集団には、特徴がある

図4 幸せな集団は会話が多く、発言権やつながりが平等である 出典:日立製作所


新会社では、法人向けにアプリを提供する。アプリは、図5のような企業活動をする上で、幸せの度合いを時刻ごとに示したり、各職場チーム間での幸せ度合いを可視化したりすることで業務改善に活かす。アプリによって、個人の活動と組織のミッションや目標に対する関係性(共感、信頼、感謝、利他など)を計測、可視化することで、社員の前向きな挑戦を支援するツールにしたいと狙っている。体の活動を測定するセンサはスマートフォンに内蔵している加速度センサの情報を利用し、特にセンサを手配する必要はないという。


スマートフォンアプリ Happiness Planet

図5 スマホのアプリ提供から出発する 出典:日立製作所

ビジネスモデルは、当初、アプリの提供から始め、コンサルティングはありうるが、さまざまなパートナーと一緒に考えていきたいという。保険会社をはじめハピネスをビジネスとする企業とのパートナーを増やしていく。

(2020/07/08)

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