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システム的な考えを持ち、変革の時代に対応できるSoC力をつけようではないか

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先週、ターボリナックスが主催するプライベートセミナーに出席した。テーマはコンピュータの仮想化である。仮想化技術とは、1台のコンピュータなのに異なるOSや異なるプロセッサで動くように見え、まるでコンピュータが複数台あるかのように見せかけるバーチャルな技術である。

いろいろなサーバーを何台も持ち、それぞれ単機能(メールサーバーならメールのみ)しかやらせないようなサーバールームはリソースの無駄になる。仮想化技術はハードウエアの節約や、複雑に入り組んだ配線のお化けになっているコンピュータルームをすっきりさせるための技術であり、コスト節約技術でもある。

仮想化技術なんて僕には関係ない、と考える半導体技術者がいるとすれば、それは大きな間違いである。仮想化のアイデアがヘテロなマルチコアプロセッサを動かすソフトウエア作りに深く関係する。マルチコアプロセッサの将来性あるアプリケーションになる可能性があるのだ。半導体エンジニアはシステムの勉強をしなければ自分たちの未来を切り拓けない。

半導体ビジネスは今や単機能なチップを作る産業ではない。もう10年近く前からSoC(システムオンチップ)を叫びながらシステム的な考えを勉強しないのであれば半導体企業は発展しない。

SiPパッケージも同じだ。システムインパッケージという以上、システムを取り入れない複数のチップは単なるMCP(マルチチップパッケージ)にすぎない。SiPにはSoCあるいはやや高度なマイクロプロセサあるいはマイコンなどのチップが入っていることがマストである。逆にSoCやプロセッサが入っていないパッケージはSiPとは言うべきではない。

ASICとSoCとの違いは何か。ASICは基本的にハードウエアだけで構成されたチップであり、SoCはハードウエアとソフトウエアで構成されたチップである。これが私なりの定義だ。

ではシステム的な考えとは何か。顧客の求めるシステムをまず俯瞰し、何をハードウエアで実現し、何をソフトウエアで実現するかを考える。そしてシステムを実現する場合には何をIC化し、何を標準ロジックやASICでまとめるか、ICはコテコテの回路で組んでしまうのか、あるいはソフトウエアも考慮したDSPやFPGAなどのプログラマブルなIPで構成するのかを決める。ハードとソフトの違いを見ると、ハードは融通がきかないものの処理速度は速い。ソフトは処理速度が遅いもののフレキシビリティに富む。標準規格がしょっちゅう変わる場合にはソフトウエア処理が望ましく、規格や回路がすっかり決まり当分変更がないのならハードウエアで処理する方がチップ面積は小さく処理速度も速い。

大局的な観点から顧客の求めるシステムをハード・ソフトの両面から考え設計するのが本来のシステムオンチップであり、システムインパッケージである。顧客の求める回路が決まっていて後は回路を組むだけ、というならASICである。


Custom Logic Design Starts


何度か講演でお話ししているが、ASICやASSPのデザインインの件数は確実に減っている。変革の時代である現代はいつ何時(なんどき)規格が変わるかわからない。このような変更に対処するためにシステム的な考えが必要なのである。変わりそうなところをソフトウエアで処理すると判断できる半導体メーカーこそが真のSoCメーカーであり、世界の強豪と対等に勝負できる企業ではないかと思う。しつこいようだが、チャールズ・ダーウィンの言葉「生き残るものは強者ではない。賢いものでもない。変化に対応できる力を持つ者だ」を思い出そう。

もう一つしつこいようだが、フォークソング歌手ボブ・ディランの「時代は変わる」(The Times They Are A-Changin')で述べている歌詞にあるように、今トップでもいつかはビリになる、今弱くてもいつかは強くなる、大企業がいつまでも強いと思うべきではない。気が付くと抜かれているケースはもう始まっている。TSMCしかり、サムスンしかり、はたまたQualcommしかり、である。日本の半導体メーカーはこういった企業に抜かれてしまった。いつなんどき彗星のごとくメジャーになる企業がやってくるかわからない。今はまさに変革の時代なのである。

バラク・オバマ氏が大統領選挙の時にchange(変革)を叫んでいたが、その時のテーマソングこそ、ボブ・ディラン作詞作曲の「時代は変わる」であった。YouTubeでその歌を今でも聴くことができる。

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